第32話
「走れぇぇぇ!」
「ワーーン!」
「待って〜!」
石造りの通路を三人で全力疾走する。
背後からは、
「ギギャァァァァ!!」
「ギャッ!ギャッ!」
三匹のゴブリンソルジャーが追い掛けて来ていた。
カツン!カツン!と石床を蹴る足音に混じって、剣や盾がぶつかり合う金属音が響いている。
「速い!結構速い!」
普通のゴブリンより明らかに速い。
全力で走れば僕の方が少し速いようだが、だからといって余裕があるわけではなく、プロテクターを着込んだ状態でリュックまで背負っているので結構しんどい。
「ご主人!オイラならもっと速く走れるワン!」
「知ってるよ!僕に合わせてくれてるんでしょ!」
「そうだワン!」
「ありがとう!」
こういう時は本当に頼もしい。
問題はるかにだった。
「シュウ君〜!」
「どうしたの!?」
「もう疲れた〜!」
「早いよ!」
後ろを見ると小さな足をもの凄い勢いで動かしながら一生懸命走っている。
そりゃそうだ。
僕や二郎丸とは歩幅が違い過ぎる。
「二郎丸!るかにをお願い!」
「任せるんだワン!」
二郎丸が急停止し、追い付いて来たるかにの前へ伏せる。
「乗るワン!」
「は〜い!」
るかにが二郎丸の背中へ飛び乗った。
「行くんだワーーン!」
そこからが速かった。
「速っ!」
僕を一瞬で追い抜いていく。
二郎丸の背中にしがみ付いたるかには、
「わ〜〜〜〜!」
と楽しそうに声を上げている。
「いや遊園地じゃないからね!」
僕も必死に後を追った。
そのまま少し走ると、以前通ったことのある少し広い空間へ出た。
直径十五メートルほどだろうか。
柱などは無く、床もほぼ平らで戦うには悪くない。
「二郎丸!止まって!」
「ワン!」
急停止した二郎丸の背中からるかにが降りる。
僕も少し遅れて追い付き、膝へ手をついて息を整えた。
「ハァ……ハァ……。」
体力12。
まだまだ普通の中年男性から毛が生えた程度らしい。
いや、プロテクターと荷物を背負ってこれだけ走れたなら十分なのかな。
そんなことを考えている場合ではない。
「ギギャァァァ!」
来た。
通路の向こうから三匹のゴブリンソルジャーが姿を現す。
一匹は剣と盾。
一匹は短い槍。
もう一匹は片手斧を持っていた。
「武器違うじゃん……。」
さっきは暗くて分からなかった。
全員剣持ちだと思っていたが、ちゃんと装備が違う。
「鑑定!」
まず剣と盾。
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【ゴブリンソルジャー】
Lv6
武器と簡易防具を装備したゴブリン。
通常種より筋力・耐久力が高く、複数での連携戦闘を得意とする。
装備:鉄剣・木盾
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槍。
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【ゴブリンソルジャー】
Lv6
装備:鉄槍
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斧。
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【ゴブリンソルジャー】
Lv7
装備:鉄斧・革鎧
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「最後の奴だけレベル7か。」
しかも革鎧まで着ている。
ゴブリンたちは僕たちを追い詰めたと思ったのか、すぐには襲って来なかった。
三匹で横に広がり、こちらを見ながらニヤニヤしている。
気持ち悪い。
でも。
「……ちょうど良い。」
「ワン?」
「ここなら戦える。」
狭い通路で三匹を相手にするよりずっといい。
逃げていたのは怖かったからでもあるけど、戦う場所を選びたかったのも理由の一つだった。
……本当です。
半分くらいは。
「二人とも聞いて。」
「ワン。」
「は〜い。」
「まず槍を持ってる奴から倒す。」
「どうしてだワン?」
「リーチが長いから。」
僕たち三人の中で一番近接戦闘をするのは二郎丸と僕だ。
槍が残っていると動きづらい。
「るかには槍の奴を毛針で狙って。倒さなくても良いから動きを邪魔して。」
「分かった〜。」
「二郎丸は僕の近くから離れ過ぎないこと。」
「ワン!」
「絶対だよ。」
「ワン!」
「本当に絶対だからね。」
「ワン!」
……。
不安だ。
「行くよ。」
木刀を両手で握る。
ゴブリンたちも動いた。
最初に来たのは槍だった。
「ギャァ!」
槍先が真っ直ぐ僕の胸へ伸びてくる。
「っ!」
半歩右へ。
以前なら大きく避けていただろう。
でも今は違う。
必要最低限だけ体を動かす。
槍先が胸部プロテクターのすぐ横を通過する。
怖い。
本当に怖い。
でも見えている。
僕は槍の柄へ木刀を叩き付けた。
ガンッ!
「ギッ!?」
槍が大きく横へ逸れる。
「るかに!」
「え〜い!」
ドドドドッ!
毛針が飛ぶ。
槍持ちゴブリンが慌てて腕で顔を守る。
その瞬間。
「ワーーン!」
二郎丸が飛び出した。
「二郎丸!離れ過ぎないって言ったよね!?」
「作戦通りだワン!」
「どこが!?」
ドゴッ!
二郎丸の体当たりが槍持ちの腹へ直撃した。
ゴブリンが吹き飛ぶ。
結果だけ見れば正解なのが腹立たしい。
「ギャッ!」
その隙を狙って斧持ちが二郎丸へ踏み込んだ。
「危ない!」
斧が振り下ろされる。
二郎丸が横へ跳ぶ。
ガァン!!
斧が石床へ叩き付けられ、火花が散った。
「ひぇっ!」
あれはプロテクターでも受けたくない。
絶対痛い。
いや、痛いでは済まないかもしれない。
「二郎丸戻って!」
「ワン!」
今度は素直だった。
僕の横へ戻ってくる。
だが今度は盾持ちが前へ出た。
剣を横へ振る。
キィン!
木刀で受ける。
重い。
普通のゴブリンとは明らかに違う。
「くっ!」
腕に衝撃が走る。
それでも木刀はびくともしない。
さすが「決して折れない」霊剣。
武器が壊れる心配をしなくていいというだけで、戦っている時の安心感が全然違う。
ゴブリンがもう一度剣を振る。
今度は受けない。
一歩下がる。
空振り。
「今!」
胴へ横薙ぎ。
ゴッ!
しかし盾で防がれた。
「ギギッ!」
ゴブリンが笑う。
腹立つ顔だ。
「盾かぁ……。」
厄介だ。
僕が正面から相手をしている間に、槍持ちも立ち上がっている。
斧持ちもこちらへ近付いてきた。
三匹が再び揃う。
やっぱり強い。
一匹なら何とかなる。
でも三匹になるだけで難易度が一気に上がる。
それぞれが勝手に攻撃しているわけじゃない。
ちゃんと仲間の動きを見ている。
「なるほど……集団戦闘を得意とするってこういうことか。」
「ご主人?」
「僕たちも負けてられないね。」
「ワン!」
「るかにも頑張る〜。」
僕は三匹を見る。
正面突破は駄目だ。
だったら。
「二郎丸。」
「ワン。」
「さっき走ってた通路まで戻れる?」
「余裕だワン!」
「槍の奴だけ誘って。」
「分かったワン!」
「攻撃しなくていいからね!」
「ワン!」
「本当にだよ!」
「ワン!」
二郎丸が走り出す。
「こっちだワン!悔しかったら来るんだワン!」
犬がゴブリンを煽っている。
何とも不思議な光景だった。
「ギギャ!」
案の定、槍持ちが追い掛ける。
斧持ちも動こうとしたが。
「るかに!」
「毛針〜!」
ドドドッ!
斧持ちの足元へ毛針が突き刺さる。
「ギッ!?」
一瞬止まった。
その間に槍持ちと二郎丸の距離が開く。
「よし!」
僕も追う。
盾持ちが邪魔しようとしたが、無視。
まず一匹。
通路へ入る。
二郎丸は既に十メートルほど先にいる。
槍持ちがその後を追う。
僕は後ろから槍持ちへ迫る。
「二郎丸!」
「ワン!」
二郎丸が急停止。
くるりと振り返った。
「遠吠え!」
「ウワォォォォォォォーーーン!!」
狭い通路に大音量が響き渡る。
「うるさっ!」
僕まで怯みそうになった。
槍持ちゴブリンは完全に動きを止めた。
「今だ!」
木刀を両手で握る。
踏み込む。
ゴブリンが振り返る。
遅い。
「せぇぇい!」
ゴッ!!
木刀が首筋へ直撃する。
「ギャッ!」
槍を落とした。
そこへ二郎丸。
「噛み付きだワン!」
ガブッ!
今度は尻ではなく腕だった。
「ギャァァァ!」
「よし!」
もう一撃。
頭へ木刀を振り下ろす。
ゴンッ!!
ゴブリンが倒れる。
黒い煙。
「一匹!」
「やったワン!」
「戻るよ!」
広間へ戻る。
るかには二匹を相手に逃げ回っていた。
「待て〜。」
トコトコトコトコ。
「ギャァ!」
「こっち〜。」
トコトコトコ。
「ギギャァ!」
……。
何だこれ。
るかにが小さいせいなのか、ゴブリン二匹が攻撃を当てられず延々追い掛け回している。
「るかに凄いワン。」
「うん。」
ちょっと面白い。
「シュウ君〜!見てないで助けて〜!」
「あ、ごめん!」
そこからは早かった。
二対三になればこちらが有利だ。
盾持ちを二郎丸が横から牽制し、るかにが毛針で視界を奪う。
僕は斧持ちと正面から戦う。
ガキン!
木刀と斧がぶつかる。
重い。
レベル7だけあって力はかなり強い。
「ぐっ!」
押される。
だったら力比べはしない。
木刀を滑らせるように斧から外し、一歩横へ。
斧が空を切る。
「今!」
脇腹へ一撃。
ゴッ!
革鎧がある。
効きが浅い。
「ギギッ!」
斧が横から来る。
避け切れない。
ドンッ!
「ぐぁっ!」
胸部プロテクターへ斧の柄が当たり、体が横へ吹き飛んだ。
痛い。
でも。
「……これ買って良かったぁ。」
本当に良かった。
高い方を買って正解だった。
「シュウ君!」
「ご主人!」
「大丈夫!」
立ち上がる。
息を整える。
怖い。
痛い。
でもまだ戦える。
斧持ちが再び来る。
今度はよく見る。
右肩が動く。
斧を振り上げる。
振り下ろす。
「見える!」
半歩左へ。
避ける。
木刀を握り直す。
剣術Lv3。
体が勝手に最適な動きを選んでくれるような感覚。
斧を持つ手首へ一撃。
ゴッ!
「ギャッ!」
斧が落ちる。
「二郎丸!」
「ワン!」
二郎丸が盾持ちを無視して飛び込む。
「噛み付き!」
斧持ちの足へ牙を立てる。
ゴブリンが倒れる。
「るかに!」
「え〜い!」
毛針が顔へ集中する。
「ギャァァ!」
僕は木刀を上段へ。
「これで!」
振り下ろす。
ゴンッ!!
二匹目が黒い煙へ変わった。
残り一匹。
盾持ち。
「ギ……。」
さっきまでニヤニヤしていた顔から笑みが消えている。
「逃げるかな?」
そう思った。
でも。
「ギャァァァァ!!」
来た。
「うわ、勇敢。」
「ご主人!オイラが!」
「待って!」
今度は僕から踏み込む。
剣が来る。
受ける。
キィン!
盾が来る。
避ける。
そして。
「二郎丸、右!」
「ワン!」
二郎丸が右から飛び込む。
ゴブリンが盾を向ける。
それでいい。
左側が空いた。
「るかに、顔!」
「は〜い!」
毛針。
ゴブリンが剣で払う。
正面が空いた。
「僕!」
一気に懐へ入る。
木刀を下から振り上げる。
ゴッ!!
顎へ直撃。
「ギャッ!」
盾が落ちる。
もう一度。
横薙ぎ。
ゴンッ!!
ゴブリンが床へ倒れた。
そして黒い煙となって消える。
「……。」
静かになった。
三人ともその場から動かなかった。
「終わった?」
「終わったワン……。」
「疲れた〜。」
僕はその場へ座り込んだ。
「つっかれたぁぁぁ……。」
二郎丸も横へ寝転がる。
るかには僕の太腿へ登って、そのまま丸くなった。
「三匹はキツいね。」
「強かったワン。」
「怖かった〜。」
「うん。でも勝ったね。」
三人で顔を見合わせる。
「勝ったワン!」
「勝った〜。」
嬉しい。
裏山ダンジョンとは違う。
明らかに格上の敵。
それも三匹。
ちゃんと考えて、分断して、三人で役割を決めて倒した。
少しだけ。
本当に少しだけ。
冒険者らしくなってきた気がした。
『レベルアップップップ〜♪』
「……。」
『レベルアップップップ〜♪』
「……。」
『レベルアップップップ〜♪』
三回。
「余韻を返して。」
「音痴だワン。」
「今日は同意する。」
「歌長い〜。」
三人で笑った。
・・・
しばらく休憩することにした。
おにぎりを一つずつ食べ、二郎丸には約束の唐揚げ、るかにはプリンを渡す。
「美味しいワン!」
「プリン〜。」
「ダンジョンでプリン食べてるハリネズミって世界初じゃない?」
「えへへ〜。」
僕もおにぎりを頬張りながら、さっき倒したゴブリンたちが残した魔核を並べてみた。
「ん?」
普通のゴブリンの魔核より少し大きい。
三つとも同じくらいだが、レベル7だった斧持ちのものだけ僅かに色が濃かった。
「鑑定。」
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【魔核・小】
ゴブリンソルジャーから生成された魔力結晶。
内部に少量の魔力を蓄積している。
魔物の強さに比例して純度及び蓄積魔力量が上昇する。
用途:魔道具・魔力媒体・素材・エネルギー源
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「エネルギー源?」
初めて見る記載だった。
詳細鑑定へ切り替える。
文章量が一気に増えた。
「うわ……。」
本当にWiki先生である。
必要そうな部分だけ読む。
どうやら魔核には魔力が蓄積されており、その魔力を取り出す技術があればエネルギーとして利用できるらしい。
電気とは違う。
燃料とも違う。
魔力。
今の人類には存在しないエネルギー体系。
「これ……結構凄いものなんじゃない?」
防衛省へ送った魔核のことを思い出した。
研究者さん達、ちゃんと調べられているかな。
まあ、日本の偉い研究者さん達だ。
僕なんかより遥かに頭が良い。
きっと何とかするだろう。
「ご主人〜。」
「ん?」
「これ食べられるワン?」
二郎丸が魔核を見ていた。
「絶対ダメ。」
「美味しそうだワン。」
「どこが?」
「飴みたいだワン。」
「ダメだからね。」
「ワン……。」
危ない。
今度から魔核はすぐ袋へ入れよう。
もう一つ気になっていたことがある。
「ダンジョンそのものも詳しく鑑定できるかな。」
以前入口で鑑定した時は難易度などが表示された。
内部ではどうだろう。
石床へ手を触れる。
「鑑定。」
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【第101ダンジョン・第一階層】
現在攻略進行度:18%
階層数:3
第一階層推奨Lv:5〜10
魔物再生成:あり
魔物は一定時間経過後、ダンジョン内部の魔力を消費して再生成される。
階層主を撃破することで次階層への進行が可能。
最下層階層主を撃破することで攻略完了となる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……。」
僕は何度か読み返した。
「三階層。」
思っていたより短い。
でも。
「階層主?」
ボスだ。
たぶん。
つまり第一階層にもボスがいる。
そして三階層にも。
……あれ?
最終ボスがホブゴブリンだとすると、その前にも何かいるということだろうか。
「攻略進行度18%か。」
今日だけで結構進んだ気がする。
ただし魔物は再生成される。
つまり一度倒したから安全になるわけではない。
「これ、休んでる間に後ろから復活とかしないよね……?」
急に怖くなった。
「二郎丸、気配察知お願い。」
「ワン!」
耳を立てる。
「後ろにはいないワン。」
「良かったぁ。」
安心して残りのおにぎりを食べる。
三人ともかなり疲れていたが、まだ動ける。
時間も昼を少し過ぎた程度。
「どうする?」
「進むワン!」
「るかにも行く〜。」
「僕も。」
ここで帰るのは簡単だ。
でも今ならまだ進める。
「ただし次に強い敵が出たら、一回様子を見るからね。」
「ワン。」
「無理しない〜。」
「そう。それ大事。」
休憩を終え、三人で再び奥へ向かった。
・・・
それからしばらくは敵に遭遇しなかった。
通路はいくつか枝分かれしており、行き止まりもある。
壁には時折、意味の分からない模様が彫られていた。
「文字かな?」
鑑定してみる。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【装飾】
ダンジョン生成時に自動形成された装飾。
特に意味はない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「意味ないんかい。」
思わず突っ込んだ。
誰だよ作った奴。
絶対楽しんでるだろ。
さらに進む。
その時。
二郎丸が突然止まった。
「ご主人。」
声が低い。
さっきまでとは違う。
「何かいる?」
「いるワン。」
「何匹?」
二郎丸が耳を動かす。
「一匹……だと思うワン。」
一匹。
それなら。
「近い?」
「この先だワン。」
通路の先に小さな部屋が見える。
僕たちは足音を殺して近付いた。
るかには僕の後ろ。
二郎丸は少し前。
入口の手前で止まり、ゆっくり中を見る。
「……ゴブリン?」
一匹いた。
でも何か違う。
体格は普通のゴブリンとほとんど変わらない。
しかし武器を持っていない。
代わりに木の枝のような杖を握り、ボロボロの布をローブのように体へ巻いている。
「何だあれ。」
「変な格好だワン。」
「お爺ちゃんみたい〜。」
「いや、ゴブリンに年齢あるのかな。」
鑑定。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
【ゴブリンメイジ】
Lv8
魔法を習得したゴブリン。
身体能力は通常のゴブリンと大差ないが、魔力を利用した遠距離攻撃を行う。
使用魔法:
火球 Lv2
魔力弾 Lv1
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「……。」
魔法。
ついに来た。
ファンタジーと言えば魔法。
ちょっと見たい。
凄く見たい。
でも。
「火球って書いてあるね。」
「ワン。」
「火〜?」
「うん。」
僕は自分の装備を見る。
プロテクター。
アンダーウェア。
グローブ。
「これ耐火装備じゃないよね。」
「燃えるワン?」
「たぶん。」
「シュウ君燃えちゃう〜?」
「嫌だなぁ。」
非常に嫌だ。
ゴブリンメイジはまだこちらに気付いていない。
今なら戻れる。
「一回帰る?」
「……。」
「……。」
三人で顔を見合わせる。
その瞬間。
「ギ?」
ゴブリンメイジと目が合った。
「あ。」
「ギギッ!」
杖が持ち上がる。
先端に赤い光が集まり始めた。
「ちょっ!」
光が膨らむ。
野球ボールほど。
ソフトボールほど。
そして。
「ギャァッ!」
ゴブリンメイジが杖を振った。
赤い火の玉が一直線に飛んでくる。
「伏せてぇぇぇ!!」
三人同時に床へ飛び込んだ。
ブォン!!
頭上を火球が通過する。
直後。
背後の石壁へ激突した。
ドォォン!!
熱風が背中を撫でる。
「……。」
「……ワン。」
「……。」
ゆっくり振り返る。
石壁が黒く焦げていた。
僕は再びゴブリンメイジを見る。
向こうもこちらを見ている。
「ギギギッ。」
笑っていた。
「……帰ろうか。」
「帰るワン。」
「帰ろ〜。」
だが。
ゴブリンメイジの杖に、再び赤い光が集まり始める。
「ですよねぇぇぇぇ!!」
第101ダンジョン攻略二日目。
僕たちはついに。
魔法という非常にファンタジーで、非常に夢があり、そして実際に敵から撃たれると全然嬉しくないものと遭遇したのである。




