コモス村
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「元気してたか、ヴェルナー?」
「はいっ、ハイドゥさん、それに皆さんも!!」
「はぁ、戻って来たってことは無事冒険者になれたのか?」
「はいっ!」
「嘘、良かったじゃない」
ラースを囲むように男女六人が喜びの声を上げる。置いてけぼりの淳や純一ではあるがそれでも悪い気はしなかった。酒場を包む空気みたいなモノが温かくなり、雰囲気は徐々に上がっていく、そして酒と食事がテーブルに並んで行く。
「よし、今日は俺の奢りだ、めでたい日だからな」
「まじかよ、珍しいなぁ隊長が奢るなんてよ?」
「ホント、明日は雪かしら?」
「言ってろ、今日は新たな冒険者仲間の門出だからな」
ハイドゥがそこまで言った時、各々の手にグラスが行き渡り。何故かそのまま宴会へと雪崩れ込むのであった。
〜数時間後〜
「凄いッスね……」
「確かに、何か日本にはない雰囲気ですからね………」
少し離れたテーブルでラース達を見ながら微笑ましげな表情を浮かべる、淳と純一。
酒場は夕方も近くなり、客も次第に増え始めている。と、言っても人口100人にも満たない村で、しかもラースとはほぼ知り合い。その為酒場はラースも含めて宴会状態になり始める。
「それにしても、酒の力は世界を越えて共通ですね………」
「そッスね、色んな意味で乗り遅れた感半端無いッスもんね」
いつの間にか酒場には20人程の男女が入り乱れている。
と。
「お二人とも、そんな端っこで何してるんですか」
「?」
声をかけられる。一瞬主役のラースかもと思ったが声が明らかに違う。そんな事を一瞬頭で考えながら声の方に視線を向ける、とそこには一人の女性が立っていた。青いロングの髪にモデル顔負けのスタイル。見覚えもまして知り合いでもない女性は、確かに二人に声をかけていた。はて、と思いながらもまず淳が笑みを浮かべ。
「まぁ、部外者ですから」
「部外者………でもラースとここまで来られたんですよね?」
「えぇ、まぁ………」
「なら、部外者なんかじゃ無いですよ、私は歓迎します!!」
愛想の良い笑みを浮かべ、女性は持っていた食事を二人に差し出し。
「私はアモン、コモス村村長の孫、ツィラ・アモンです」
ハッキリと通る綺麗な声、女性はコモス村村長の孫だと名乗った
。
〜コモス村周辺某所〜
コモス村を一望出来る場所……は、あいにく森に囲まれているため無いので、魔導師の望遠の魔術でコモス村を監視する。
「小さな村だな?」
「確かに………ホントにこんな所にお宝なんてあんのかよアドルノの旦那!?」
映像を見ながら、明らかにがらの悪い男達がアドルノと呼んだ男に視線を向ける。すると。
「あぁ、あるさ、確かな情報筋からのモノだからな」
「はぁ、なら今すぐ行くかい、旦那?」
「いや、今は不味い……」
「なんで?」
「何でじゃないわよベーム、ちょっと考えれば解る事でしょ!?」
「はぁ、何だコラッ、クソアマッ!!」
「ちょっと、アガーテにベーム止めなよ、アドルノさんも、ほらっ、止めてよ!!」
小さないさかい、しかし、二人を尻目にアドルノはただじっと映像を見て、そして。
「団長、いや、ジャコモの今回の目標だからな…………」
「「……………………」」
ただ一言そう言って、アドルノは二人のいさかいを終わらせる。ジャコモ。それが団長と言われる人物の名前。そして、簡単にその場を黙らせる程の名前。
「ま、まぁ、アガーテもベームも落ち着いて、アドルノさん、なら、何時動きますか?」
「ん、そうだな、今はあの村に冒険者も多い、後1日、商隊とアイツらの護送隊分の冒険者が減るタイミングを狙うべきだな」
「となると、常駐が五人と、あの馬鹿共捕縛した三人になった時ですね?」
「そうなるな……」
「まぁよ、俺はあの人数相手でもいいんだけどよ、旦那!?」
「アガーテ、アンタ副長に!」
「かまわない、今はこっちの指示に従ってくれればな………」
最後事切れる様に、アドルノの声が消えると共に、その場全員に、言い知れない殺気が背中を走る。
「あ、まぁ、何だ指示は指示、だからな従うよ旦那……」
アガーテが何故か視線をそらしながら、そう口ごもる頬には一筋の汗を流し。それを聞いて、見て、アドルノも薄く口許に笑みを浮かべる。
「明日さ………確実重視で行く、野党旅団キリールはな………」
〜コモス村 酒場〜
一体全体何時まで飲むのだろうか。そう思いながら淳は今日何杯目かの熱いお茶を口に運ぶ。
「ふぅ…………」
既に時間は日を跨ぐか跨がないかの頃。それでも未だに喧騒はおさまることをしらない。淳はそれを何処か他人事の様に見ながら、また口にお茶を含む。
「酒は飲まないんだってな?」
と、喧騒の中から今日何度目かの顔が淳の前に、純一はいつの間にかラース達とどんちゃん騒ぎに興じていた。
「えぇ、僕は未成年ですからね」
「19か、お前らの国の成人は存外遅いんだな…………」
「はは………」
対面の男ハイドゥは豪快に笑って、酒を煽る。豪快、その一言が似合うコモス村常駐の冒険者リーダーだ。
「ふぅ、にしても、ラースの坊は良くやったよ」
「良くやった?」
「あぁ、冒険者になったことさ」
「?」
ハイドゥの言葉に疑問の表情を浮かべる。しかし、淳の表情を見たハイドゥは気にした様子も無く言葉を続ける。
「アイツは元々、冒険者適正がなかったからな」
「適正が無い?」
「そうさ、元々魔導石を発動させるほどの魔力を持ってなくてな………」
「なら」
「努力だな、それも血の滲むような努力をな……」
少しだけ遠くを見る様に目を細めて、ハイドゥはラースの方に視線を向ける。ラースの頑張りを見てきたのだろう、言葉の端々に嬉しさを感じられる。
「簡単には言えませんけど、頑張ったんですね………ラースさんは……」
「あぁ、そして旅団にも所属だからな、教えたかいがあったってもんだ」
酒を飲み、喉を数度鳴らす。そして、手を上げハイドゥは淳の元を去っていく。と、今度は入れ替わるように村長のコジーモ・アモンが現れる。
「村長さん?」
「すまんの、1人の所に……」
「構いませんよ、良いんですか、主役の方にいなくて?」
薄く笑みを浮かべ、淳がコジーモに椅子をすすめる。ゆっくりとした所作で椅子にすわるコジーモ。すると。
「老体にはな、あの喧騒は堪える」
と、苦笑い。
「まぁ、御無理はなさらずに」
「そうさせて貰おう……」
手に持っていたグラスを口に運び、喉を潤すコジーモ。70を越える年齢には似つかわしくない屈強なガタイが、何処か疲れを表現するように椅子に体重を預ける。
「ワシも元冒険者じゃが、年には勝てんの」
「何を仰るのやら、そのガタイで良く言いますね」
冗談ぽくあきれ声で、しかし何処か感心して、淳はコジーモと会話する。
時間は日を跨ぎ、深夜深くに差し掛かろうとしていた。




