正規昇格初任務
新章です、宜しくお願いしますm(__)m
〜日本側事務所〜
「後期授業が始まって、こっちでは平和そのものッスねぇ」
「……………純一、何か違和感を感じますが、その言葉」
「そっスか?俺としては…………まぁ、あんまり気にしないで下さいッス!」
自分で言って少なからず違和感を感じたのか、純一もそれ以上は何も言わない。
「それにしても、無用心ですねウチの店主さんは、施錠もせずに事務所を空けるとは」
「そっすね、にしても昌晃は今日来ないんスか?」
「えぇ、今日は授業が四限までらしいですから、僕らだけですね」
事務所、二人しかいないそこで、個々の事務机に座り何することも無く買ってきた缶コーヒーをすする。と、その時、ヴォバック側ではなく、入り口側の扉が開き。
「お早うございます!!」
元気の良い声と共に、事務員のバイトをしている海堂岬が入って来る。
「お早うございます、海堂さんも授業は休みですか?」
「うん、まぁ休講とかが重なってね」
「で、バイトッスか?真面目ッスね」
「あれ?千鳥君、昌晃は?」
と、部屋を見回し、岬の視界に何時もの人物がいないことに気付き淳に質問。
「ん?昌晃は今日は四限まで授業ですよ、聞いてませんでしたか?」
「………………そう言えば確かに」
思い出すかの様に首をかしげ、そのまま自分の事務机に向かう岬、とその時今度はヴォバック側の扉が開き。
「……………と、アラアラ朝早くからお揃いですのね?」
そう言って、この事務所の店主、マリア・レイヴァンスが現れる。別段本当に驚いた訳でもないが、そう言って手に持っていた資料をヒラつかせ。
「丁度良かったですの、来たら伝えて欲しいと言われてましたから」
「伝える?任務ですか、マリアさん?」
「そうですわね、淳は察しが良くて助かりますの、旅団からの任務ですのよ」
そこで言葉を区切り、マリアは淳に資料を手渡す。
「なんですの、こっちの世界のメールとか言うのが有れば、紙面にする必要も無いのかもしれませんけど、兎に角一度目を通してくださいな?」
言って資料を手渡すとマリアは岬にコーヒーを入れるように頼む。
「で、任務ってなんスか?」
資料に目を通している淳を横目に、純一がマリアに質問。問われたマリアは軽く首をかしげ。
「内容は淳から聞いて下さいまし、任務には基本的に秘密保持がありますから、いくら事務所の店主でも旅団所属ではないものにはね」
「あぁ………確かに、そッスね」
納得して頷くと、純一は任務指示書を見ている淳を待つ。
「簡単に説明すると、荷馬車の護衛任務です」
「護衛……」
「えぇ、シャリオから指定の村までの簡単なものらしいです、しかし近場では無いらしいので、出発はコチラのタイミングに任せるらしいです」
と、資料から目を反らし事務机にあるカレンダーに視線を落とすと。
「今日は金曜日ですか、純一、明日は大丈夫ですか?」
「俺っスか、土日は暇ッスよ」
「なら、行きますか」
そう言って淳は立ち上がると、部屋にあるロッカーへと向かう。
「必要物品はシャリオで、仕事着だけ持っていきましょう」
「ほへ?昌晃はどうするッス?」
「…………今回はパスでしょうね、時間がありませんから」
微笑を浮かべ淳がマリアに視線を向け。
「では、マリアさん、僕達はいきますね、今日は金曜日ですから日曜日には戻ります」
仕事着のスーツを持ち、淳はヴォバック側の扉に向かう。勿論純一もそれに付き従う。
「さて、正規昇格初任務ですね………」
淳が言葉を紡ぐと共に扉は開かれる。
〜シャリオ ギルド支部〜
扉の先には、待ち構えていたかのようにユリが立っていた。
「準備万端ですね」
「はい、マリアから今しがた連絡がありましたから、今日は二人………ですね?」
確認するように二人を眺め、ユリは一度頷いて手に持っていた資料を淳に手渡し。
「旅団の方には既に了解済みですから、依頼者の所にお連れしますね」
支部の廊下を歩きながら簡単な説明を行い、一室へと案内する。
「コチラが今回の依頼者………」
そう言ってユリが紹介しようとすると、依頼者自らが立ち上がり。
「いやいやサーベンス氏、構いませんわ、初めましてワシは商人のアジッチ、今回の依頼者言うたらええんですかいな、いやぁそれにしてもあの有名旅団から人出してもらえるなんて光栄ですわ!」
声の大きな商人アジッチは、淳と純一に握手を求め、ニカッと笑みを浮かべると、備え付けのソファーに座る。勿論淳と純一もアジッチの対面に座り、ユリの元説明を始められる。
「今回の任務は商人の物資護衛です」
「護衛…………」
「はい、今回はシャリオから半日程の場所にあるコモス村までの物資輸送になります」
「そうですわ、職員さんの言うとおりなんですけど、何せ最近何かと物騒でっしゃろ?」
「…………物騒?」
と、ユリの任務説明を遮りアジッチが割って入って来る。正直淳達からすればヴォバック自体が物騒なのだ、今さらと言った感じもある。しかし、この世界の人間が物騒と言っているのだ何かしらあるのだろう。黙って耳を傾ける。
「………………アジッチさん」
「あっ、すんまへん」
と、ユリに名を呼ばれて、アジッチは口を閉じてソファーに座る。
「すいません、で今も話にありましたが、今回の護衛は色々とありまして」
「色々…………?」
「はい、最近コモス村方面に辻斬り報告が多数ありまして」
「辻斬りですか、それはまた」
「勿論通常ならば、すぐに討伐隊を編成しているのですが、ニシノ要塞の件もあって…………」
「人材不足」
「はい、ギルドとしても任務発注をしてソロ冒険者を送ったのですが……………」
「ことごとく返り討ちなんですわ!」
と、限界のきたアジッチが口を開く。もちろん直ぐにユリが咳払いをして。
「残念ながらアジッチさんの仰る通りです、どうやら相手はそれなりの腕の様で、しかも、バックには野盗旅団が………」
「野盗旅団?なんッスか?」
そこで、首をかしげ純一が質問。旅団は解るが、野盗旅団とは穏やかではない。ユリは一度ため息を吐き。
「簡単に言うと犯罪者の集団、と言えば良いでしょうか」
「犯罪集団ですか」
「そうです、ですからソロ冒険者のように個人では相手に手を出しにくく」
「で、事が大きくなってしまったと」
「はい……………ギルドとしては、一刻も早く事態の収拾をはかりたいのです」
「でしょうね………」
ふぅと息を吐き出しながら、淳が何かを納得したかの様にユリに苦笑いを浮かべる。そして。
「兎に角、ニシノ要塞防衛戦の力量を評価しての抜擢です、お二人には拒否権はありますが出来れば………」
「解ってますよユリさん、希望の翼の団員としてこの任務受けさせて貰います」
そう言いながら淳と純一は立ち上がり、アジッチと握手をかわす。
正規昇格後、二人にとっての初任務である。
昌晃はいませんm(__)m




