ニシノ要塞防衛戦 シャリオ草原の戦い3
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………
薄れゆく意識。
敵との実力差はいかんともし難いものがある。それでも淳は動かなければならない。
誰のために?
誰かが問う。しかし、誰も答えない。
なぜそこまでする?
ボロボロのぼろ雑巾になった身体を酷使して、その先に何をもとめるのか。
解らない。
が、確かにバイトでしかない彼にそこまでする理由は無い、ましてや日本人の彼に命をはる理由はない。
でも。
マリアのためなら……
淳の意識がただ一点、ナイフを突き立てられ倒れたマリアに向けられる。
怒り。驚き。
死………
それを考えた時、淳の身体は熱を感じ始める。トクントクンと脈をうって、相手を殲滅しろと。
力が欲しい……
ならどうする?
注げ……魔導石に
万能には程遠い、己を強靭にする魔導の石に。
意志を魔力を……
注げ…注いだ分だけ魔導石は答えるのだから……
魔力を。注げ……注げ……
千鳥 淳よ……
「あ~あ、あっけないしぃ~、普通の研修とは違うけどチョロいよねぇ~」
淳を投げ捨て、少女は頭の後ろ、手を組んで空を見上げる。
「さて、ペシャール様への報告もあるし、さっさとトドメさして帰ろっかなぁ~」
と、舌なめずりを一回、少女はまず淳の下へ向かおうとする。
が。
異常な程の魔力の収束を感じる。それは想像出来ないほど、自身の魔力量など児戯に等しいのではと思える程に。
「まさか、レイヴァンス?」
はっとなってマリアを見やるが、マリアは未だにダメージから回復していない、なら、そう思った刹那。
「…………」
微笑も苦笑も無く、淳は無言のままただじっと立っている。
「ちょっと、流石にしつこいんじゃない…研修の分際でわきまえたら?アンタはウチにはかてないよぉ~」
舌を出し馬鹿にした態度。一歩一歩、動かない淳に近づく少女は今度こそトドメを刺そうとナイフを構え。
その刹那。淳の正面で何かか二三回煌めく。
「………!!!」
少女はその煌めきを見た瞬間、言い難い危機感を覚えて魔術障壁を展開、同時に後方に全力で飛び退く。
ジュッ!!………ズドンッ!!
光の熱波と衝撃波が少女のいた場所を文字通りえぐり取りとる。
「…………」
背筋にゾッとしたものが走る。それもそのはず、先程までと威力と速さが段違いなのだから。そう思いながら少女は体勢を保てず地面を二三度転がり、威力が落ちた所で立ち上がる。
「何………今の?」
体勢を立て直しすぐさま戦闘姿勢をとる。いつしか少女からは今まで感じていた余裕は消えている。
「何なのかなぁ~それがアンタの実力ぅ~?」
何時でも攻撃に移れるように少女は足元に力を籠める。そして。
「まぁ、関係無いけどぉ!」
力を籠め、更に魔術で身体強化をかけ飛び出す。足元の地面をえぐり取り土煙をあげ一瞬で距離を詰める。
勿論普通なら普通ならば少女の動きを捉えられる者はそうはいない。だが今の淳は違った。
「…………」
流れる動きで少女の横をすり抜け、突進をいなす。
「!?」
まさか、必殺の飛び込みのつもりが淳は難なく回避。少女は勢いを殺せず。そのまま。
「なわけ無いじゃぁん!!」
かわされたがそこでは終わらない。突進の勢いを殺せずかわされたと見るや、魔術を発動。火球を展開し交錯様に淳へ。
ズズッ!!ボボボンッ!!
火球が周囲の酸素を喰らい火勢を増し爆裂。盛大な火の手が淳を包み込む。
「ははぁ~ん、直撃コースゥ~!!」
確認せずとも感触で解る。少女は笑みを浮かべ、してやったりな表情を浮かべる。確かにかなりの、しかも自身にも反動でダメージが来そうな超至近距離からの魔術攻撃、あれでダメージが無ければ。
「これでダメージが無いならペシャール様クラスかなぁ~……………」
と、そこまで言ったとき背に悪寒を感じる。そして。
「…………………ッ!!!」
気配の方へ向く暇もない、少女は背に激しい激痛を感じた瞬間、地に叩きつけられる。
「カハッ!!」
身体の周囲に魔術防御を張っていたため致命傷には至らなかったが、叩きつけられたら衝撃は大きく。一時的に呼吸が出来なくなり、天地が歪む。
「……………」
そんな、少女を見ても無表情の淳。その豹変ぶりには寒気すら感じる。
(な、なんなのコイツ……)
叩きつけられそのまま蹴り。少女は受け身もとる暇無く更に地面を転がる。が、淳は無言のまま追撃せず。今度は魔力球を数個展開。転がる少女に向け魔力球を発動。無軌道を描きながら魔力球は四方から少女に襲いかかる。
(く、コレは………)
何とか意識を繋ぎとめ少女が魔術障壁を展開。魔力球を防ごうとするが、その威力は絶大で魔術障壁は紙細工のように破壊され。
……………
少女は無抵抗に宙を舞う。
少女が宙を舞っている……
曖昧な意識の中、それを自分がやっていると言うことだけは理解できた。
それでも淳の感情に何の変化も起きないのは多分その少女が敵だと認識出来たからだろう。
しかし。
魔力を……魔力を………
と、先程からその声が、頭の中を一番占めていたのだった。
解っていますよ………
誰に問われるでも無く、その声に応えて淳は意識を集中して魔力を注ぎ続ける。多分端から見れば本当に驚嘆に値するほどの魔力を注いでいるのだろう。
その証拠に少しづつではあるが意識が薄れていくのを感じていた。
ガンッ、既に倒れている少女の顔に蹴りを見舞う淳。普段なら絶対にしないその行為、しかし、今は違っていた。
「うぅ……」
最後の魔術攻撃が利いたのだろう少女は、既に気を失っている。
「…………」
だが淳には何も思う所が無いのか、無言で一瞥し。口元で何かを口ずさむと、数個の土槍が周囲に展開され。
「……串刺し…」
と、口走った瞬間、土槍が。
…………………
…………………………
……
……




