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異世界


聞き覚えはあるが、現実味の無い異世界の言葉に三人は言葉を失う。


「はあ……何ですの反応薄いですわねぇ、ここはオーバーリアクション気味に反応するところではございませんの?」


マリアの言葉。


「いやいや、いきなり異世界って言われても、なぁ!?」


開口一番。昌晃が他の二人に問う。勿論問われた二人も無言でコクコクと頷く。そして。


「確かに昌晃の言うとおりですね、いきなり異世界といわれても、何をして異世界なのか?ですね純一?」


「あ、あぁ…異世界のイメージプレイか何かっすか?」


最後に純一がマリアに問う。


「イメージプレイ………では、ありませんの」


「じゃあ何だよ?」


マリアの否定に今度は昌晃が質問。すると、マリアは薄笑いを浮かべ。


「アナタ達が実際の異世界に行きますの!」


と、人差し指をこちらに向けて断言する。


「あ、新手の宗教勧誘か?」


「いや、まさかテロの勧誘?」


「と、言いますかヤバい薬でも……」


「だぁかぁらぁ、宗教でもテロでも、ましてやヤバい薬でもありませんの!本当に異世界に行きますの、解りますか!!」


流石に自分を信じないことに苛立ちを覚え、マリアは声を荒げる。が、それでも三人は疑わしげな表情をやめない。


「本当に怪しくはありませんの!言った通り異世界に行くだけですの!!」


「うぅん、にわかには信じられないが、百歩譲って異世界に行けるとして、方法は?」


昌晃が話をやっと本筋へと戻す。すると、待ってましたと言わんばかりに、マリアが口をひらく。


「まぁ、百歩譲っては余計だけど……良いですの、異世界へはここから行きますの!」


………………


と、そこでマリアが指差したのは、多分奥へと続く部屋の扉だった。


「で?」


「で?って、だぁかぁらぁ、ココから異世界へ行きますの!」


「はぁ?てか、寝言は寝てからって感じっすね!」


「純一に同じ……」


椅子に座りながら、三人はマリアに対しあからさまに怪訝な表情を見せる。


「ほ、ホントですの!疑わしげな表情見せてますけどそのドアの先にはめくるめく異世界わーるどがありますの?」


「まじかよぉ?!」


「もう!良いですの、論より証拠その扉を開けてみてくださいまし!話はそれからですの!!」


腰に手をあて憤慨するマリア。その手は扉の方に向けられている。


「まぁ、それで真贋がハッキリするなら…なぁ」


「確かに、それが一番手っ取り早いっすね!」


「なら、適任は………」


と、淳と純一の視線が昌晃へと向けられる。生け贄だ。


「お、俺……!?」


自らを指差しあからさまな表情を見せる。そのままの表情でマリアを見ると、ニンマリとした笑みを浮かべ。


「ささ、開けますの!」


と、鉄パイプをパシパシしながら急かしてくる。


「いや、てか……開けたらただの飾り付けした部屋でした!とか……」


「ここまで来てそんな馬鹿なこと言いませんの!!ささ、早くあけますの!」


「いや、でもよぉ……」


「四の五の言わずあけますの!」


渋る昌晃の手を強引に掴みドアを開けさせる。そして、ドカッと言う効果音が聞こえる勢いでケツを蹴り飛ばし、昌晃はドアの向こうへ。


「お一人様ごぁぁぁぁん内、ですの!」


マリアの声が部屋に響き渡り昌晃は同時に。



!!?



異常な光景を目にする。



バタンッ!!


表情を固まらせ昌晃がドアを閉じる。マリアはそれを確認してしてやったりと笑みを浮かべる。


「フフリ、これで私が嘘つきでないと解ってもらえましたの!さぁ、話を始めましょうか?」


と、マリアをよそに昌晃はふらふらと自身のパイプ椅子へともどる。それを見た他の二人は。


「どうやった?」


「表情かすぐれませんが?」


「いや……なんと言うか……まぁ、おおよそアレの話しを聞くのもありかと………」


そう言って昌晃はマリアへと視線を泳がせる。他の二人もそれにならい恐る恐る視線を向ける。


「ではでは、これより説明を始めますの!」


いつの間にかマリアは手に教鞭を握っていた。



「さて、説明は簡単です、この扉をくぐると、異世界ヴォバックへいけますの」


「ヴォバック……」


「そう、ヴォバックですの、そしてそこでアナタ達は冒険をしますの!」


「エラいざっくりと……最近のラノベよりざっくりとしてるっすね……」


「コホンッ!確かにざっくりとはしてますけど、でも大筋はそんな感じですの!!」


「なら、詳しくは?」


そこまで聞いて、昌晃がマリアにツッコミを入れると、マリアは硬直し、一拍の黙考を挟み。


「入れば解りますの!」


と、バッサリと切り捨てる。


「しかし、ラノベなどのストーリーなら、ここはチート能力などを授ける……」


「訳ありませんの!ただ異世界とコチラの行き来は自由ですの、向こうでは街にあるギルドの受け付けに言えば帰れますの!」


「行き来自由……」


「なんか、有り難みが……」


「でも、一つ注意してほしいのですが、向こうで死んだらアウトですのよ!」


「アウトって…」


余りの適当な説明に、三人はマリアをジト目で睨むがいきなり放り出される訳でも無いのでそこは黙っておく。


「まぁ、行き来自由なら、行ってみるか?」


「そっすね!」


「ですね」


そう言って、三人は何かを納得する。と。


「後、最期に、何かしらのイベントに巻き込まれたと判断されたら帰れなくなりますので……まぁそんな事なかなかないとは思いますけど」


その後、マリアは向こうでの支度金としょうして金貨を布袋一杯に寄越し、三人を扉へと送り出す。






「………どうか、この世界を救ってくださいまし」


誰に言うでもない、マリアの独り言が、狭い部屋に静かに響くのだった。

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