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そして、始まりへと繋がる

閲覧有り難うございますm(__)m


幕間もこれにて終了です。


「フラン………?」


「久しぶり…………ね」


柔和な笑みを浮かべ、入口に立っていたフラン。それを見て驚く事もなくマリアはフランに視線を向ける。


「完成してたのね?」


ポツリと一言、未だに幻影の様に残る、異界との扉を見つめながらフランは散らかった研究室に脚を踏み入れてマリアへと近付く。


「ですわね、たった今………」


「日本には行けたの?」


「えぇ、行けましたの、極の言っていた通り、平和な良い場所でしたの」


「そう…………」


極、その名を聞いた時、一瞬だけフランの表情が曇ったが、別段気にした様子も無く。


「フランも行ってみます?」


と、一言。多分未だに極の事を引き摺っているのだろう、日本と聞いてフランの表情は険しくなる、だがマリアは止めない。


「極の姉にも会いましたの、彼女は極が死んだと思ってるみたいですけど」


「死んだのよ………極は………」


「私は、彼女に可能性はあると言いましたの!」


「マリア、極は死んだのよ………」


「だから、手掛かりを探し続けますの……」


「マリアッ、極は死んだのよ、何でっ!!」


遮るように怒号。苛立ちの表情を浮かべ、歯を食い縛り感情的に。それを優しげな表情で見つめ。


「………フラン、貴女がこの一年半、何をやって来たのか私も聞いてますの、遮二無二に十傑としての任務をこなし、あまつさえシャリオを拠点に旅団も結成した、でも………」


「何?」


「そこまでしても、極の事が頭から消えない」


「マリア………」


「何故、頑なに否定しますの、極はまだ生存している可能性も……………」


「止めて!」


それ以上何も言うなとばかりに言葉を遮る。表情は悲痛を越えて、苛立ちや怒りに変わろうとしている。


「フラン………」


「マリア、貴女が極の生存を信じているのは解る、でも、それを私にまで押し付けないで、私は、私の新しい使命を見つけたの、王国の十傑であり、国を守る盾、それ以上でも以下でも無いの………だから、ぬか喜びになると解っている事を、希望を持たせないで!!」


部屋いっぱいに響く声。しかし、マリアの表情は変わらない。フランがどう言おうとも意見を変えるつもりはないからだ、だから動揺はしなかった。


「フランは極を愛してましたものね……」


「解っているなら………尚更思い出させないで……マリア………」


一変、苛立ちや怒りから泣きそうな表情になる。それほどまでにフランにとって極は大きな大切な存在だった。


「そこまで想っているなら、なぜ諦めますの?」


「想っているから、だから、期待を持ちたく無いの、それは凄く残酷な事だから」


「それでも!」


「それでも何?私はマリア貴女とは違うの、勿論生きていれば嬉しいは、でも、今の私はパーティーを組んでいた頃の私とは違うの、十傑であり旅団の長、自分の部下を蔑ろには出来ない」


「しかし………」


「マリア、この話はおしまい」


それ以上何も言うな、そんな表情でフランは会話を切る。そして。


「マリア、ここからは、王都の十傑として聞きます、異界の扉を開いてどうするつもり?」


「?」


唐突に変わった表情、そして問われた質問に疑問の表情を浮かべ。マリアはキョトンとしてしまう。それを見て、フランは再度問い直す。


「王、そしてギルドからの問いよ……答えてマリア、返答如何によっては……」


「どうするのかしら?」


「国家反逆罪にもなりかねないは………」


「そう、ですの…………」


フランの追及、それを耳にしながらもマリアはいたって平静さを保ち、素っ気ない返事。


そして。


「別に、どうもしませんの、私は日本を見て、極の世界を見たかっただけですの、それ以上でもそれ以下でも無いですの……」


「本当に?」


「信じて貰えますの?私の言ったこと?」


おどけるようにマリア。その裏には何を言っても疑うのだろう、と言わんばかりの雰囲気を醸し出す。だが、フランはそんなマリアの雰囲気にも表情を変えることはなく、ただじっと見つめ。


「真意の沙汰は、私が判断する事では無いは、ギルドや国が判断します、私はマリア、貴女の真意を知りたかっただけ、私は今の言葉を信じるつもり」


そう言って、フランは言葉を区切る。その目に嘘偽りは無く、ただ自分の判断でそれ以上は何も言えないと訴えるのみ。それを見て。


「これからは独り言ですの…………フランにも戯言と想って聞いて欲しいですの…………」


と、研究室の整理を始める。それを無言の肯定とし、手近な椅子に座り言葉を待つ。


「正直、門を創造したその先何て考えてませんの、極の想いだけでも日本に連れて帰る、そして、その時まだ生きてると思えるなら、私は何かをしようと………」


「それで何か出来そう?」


「そうですわね…………正直まだ、でも私は………」


と、そこで一呼吸置き。


「極の様な、転移者や転生者を拾いあげてあげたいですの……」


「それは……」


「確かに自己満足ですの、中には日本側に帰りたくない方や、転生して複雑な方もいるでしょうね、でも、それでもこの力で希望する人を日本側に連れて行ってあげたいですの、それで変わる何かもあるかも知れないですから………」


研究室の机から、コップを探しだし魔術で精製した熱湯を注ぎ込み、白湯を作り出す。一応フランにも勧めるが苦笑いして固辞する。


「転生者や転移者を…ね…………でも、それをして何かあるのかしら、その人達はこちら側にとってはかなりの戦力よ、それを引き抜くみたいなことすれば、貴女も微妙な立場になるかも知れないわよ………」


「構いませんの、元々既に冒険者や十傑も辞めましたから…………」


「でも」


「既に決めましたの、第二の人生ですの…………」


「マリア………」


「兎に角、次元の門は完成しましたの、私は行ったり来たりの渡り鳥、魔導師…………ではなく、次元魔導師ですね、橋渡しの道先案内人ですの…………」


白湯を飲み一息。ゆっくりと天井を仰ぎ、最後にフランに視線を向ける。


「と、これが私の今の真剣な想いですの…………フラン、貴女にはこの想いを包み隠さずにギルドや王都に伝えて欲しいですの」


「……………」


「色々考えてたどり着いた結論ですの、尊重してくださいまし」


そう言って、マリアはフランに深々と頭を下げるのであった。




〜半年後 日本4月某日〜


「うぅ〜ん」


背伸びを一つ、オフィスビルの一室でマリアは日本のスーツに袖を通してそこにいた。


「今日から此処が私の第二の仕事場ですの」


何もない閑散とした一室。そこで気合いを入れて窓の外を眺める。


そして、考える。


半年前、フランとの再開の後のギルドとの交渉を。次元の扉はやはり魅力的なものだった。こちらの人間が日本に行き魔力素養のある人間をスカウトする。そうすれば即戦力を確保出来るからだ。


しかし、当初それを真っ向から否定したマリアはギルドと対峙、危うく関係が悪化しそうになるものの、フランの仲介の元、妥協案が提示。


A級以上の魔力素養の者以外はスカウトしない。それが、ギリギリの妥協点だった。


ふと、そんな事を思い出しながら、マリアは部屋の窓を開ける。オフィスビルから見えるのはやはりビル。近くには色々な商店があるものの、そこからは見えるのはやはりビルだった。


そんな景色を見ながら、ふと路上に視線を向けると、そこには三人の青年。さっき立てた看板を見ていた。それと共に、看板の魔力計測装置から計測される魔力値をみると、ゲージは降りきれていた。


「これは…………」


ゴクリッと唾を飲み込み、もう一度ゲージに目をやるとやっぱりと振りきっていた。マリアは三人を見て一瞬だけ思案する。だが意を決して声をかけようとするが、三人はそんなマリアを他所目に、首をかしげ疑念の表情を浮かべながらその場を立ち去ろうとする。

それを見てマリアは焦りながらも。


「良いんですの、本当に!?」


それが、マリアと三人の出会いだった。


次章から、また主人公三人へと戻ります。

よろしくお願いしますm(__)m

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