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戦場への道、土の老将の視線

異世界に呼び出され、たった一人E級と烙印された佐藤悠真。

嘲笑の渦の中で、彼はただ「普通に生きたい」と願うだけだった。

だが、長公主リゼロットの優しさ、二公主エリーネの真摯な心が、彼の冷たい世界に一筋の光を差し込んだ。

三日後、軍営への出発が告げられ。

栄光を目指す者たちの中に紛れ、E級の少年は戦場へと歩み出す。

そして、彼の土の力に目を留めたのは、帝国最強のSSS級土系魔術師、老将ゴルバシュだった――。

これは、平凡な勇者が大地の奥深くに眠る力を目覚めさせるまでの、静かな物語の始まりである。

第七章 戦場への道、土の老将の視線

佐藤悠真は握りしめた拳をゆっくりと緩め、指先には残る果実酒の甘さと肉の香りが漂っていた。彼はゆっくりと青石板の上の弁当箱と徳利を片付け、残った食べ物を丁寧に包んで石の部屋の隅に収め、庭を簡単に整えた後、全身の疲れと、背中の丸まった姿勢のまま、石の壁にもたれて休憩した。これは異世界に来てから、彼にとって一番穏やかなひとときだった。


しばらくの休憩の後、ゆっくりと瞳を開けた。

目の中の迷茫は煙のように消え去り、穏やかで確かな决意だけが残っていた。


彼はゆっくりと立ち上がった。この安らぎは束の間の贈り物に過ぎないと、心の底でわかっていた。三日の期間が来れば、軍営に向かわなければならず、まったく未知の生活に踏み出すのだ。未練もなく、そっと体の埃を払い、相変わらず背中を丸めたまま、石の部屋と庭をもう一度くまなく確認した。すべてが整っているのを確かめてから、じっと立ち尽くし、集合の日を黙って待っていた。


二日の時間は風が枯草を通り抜けるように、音もなく流れ去った。第九修練場にはもう誰も邪魔をする者はなく、朝霧と夕日だけがこの小さな庭を行き交っていた。佐藤はただここに佇み、出発前の日々を穏やかに過ごした。不安も期待もなく、運命の流れに従い、ただ出発の瞬間を静かに待っていた。


三日目の夜明け前、淡い青色の光が郊外の原野に広がり、霧が纱のように四方を包んでいた。佐藤は早くから支度を整え、古いリュックには彼のすべてが詰まっていた。半分残ったノート、使い果たしかけの鉛筆、何度も洗って白くなった服、そして姉妹の姫が残してくれた最後の食べ物。彼は最後にこの温もりの宿った庭を眺め、傾いた木の戸をそっと閉め、背中を丸めたまま、軍営へ続く土道を歩み出した。


郊外の土道はでこぼこで長く、両側の枯れた草の先には朝露が付いて、ズボンの裾を濡らし、少しの冷たさをもたらした。彼は一人で寂しい道を歩み、ずっと頭を下げたまま、できるだけ影に身を隠し、誰にも注目されないよう、誰の目にも留まらない落ち葉のように佇んでいた。異世界に転移した日から、彼は隅っこにいることに慣れ、冷たい視線に慣れ、一番目立たない存在であることに慣れていた。軍営に踏み出す直前でさえ、骨身に染みついた低姿勢と臆病さは、少しも変わっていなかった。


一時間ほど歩くと、遠くから整然とした訓練の掛け声、馬の嘶き、旗がはためく音が徐々に伝わってきた。鉄血で重厚、戦火の薫りを帯びた威圧感が押し寄せ、郊外の寂しさとはまったく違っていた。佐藤はゆっくりと頭を上げ、目を細めて眺めると、雄大で厳かな軍営が大地にそびえ立っていた。


灰色の石塀は磐のように高く、壁には錯綜した傷跡が刻まれ、無数の魔物との戦いの証だ。城壁の上では帝国の旗が風になびき、甲冑を身に着けた兵士たちは槍の林のように立ち並び、軍営全体が鉄のように沈静で、人は息を飲むほどの圧迫感に包まれていた。


軍営の外では、他の十五人の異世界勇者たちがすでに集合を終えていた。十六人は天赋の強さに応じて自然に幾つかのグループに分かれ、境界は明確で、誰一人隅っこの佐藤に近づこうとはしなかった。


人群の最前線には、二つの眩しい存在がいた。

黒髪で鋭い桐生凛は、微弱な雷気をまとい、瞳は寒い刃のように鋭く、SSS級の雷の天赋。その威圧感は強烈で、周りの者は近づくことさえ恐れていた。

もう一方は赤髪が炎のような凌月。颯爽とした服装に、赤い槍を手にし、容貌は鮮やかで華やか、同じくSSS級の槍の勇者。人群の中にいても炎のように輝き、多くの視線を集めていた。


少し離れたところには、A级の熊谷剛がいた。体は大きく逞しく、人柄は穏やかで落ち着いており、熊の鎧を召喚して憑依させることができ、驚異的な力を持っていた。

そばにいるC級の風系少女・風見鈴は、緑色の杖を手にし、髪の間にそよぐ風が纏わり、穏やかで静かな気質を持っていた。佐藤を眺める視線には、軽蔑などなく、ただ平淡な優しさがあった。


一方、山下健太たちは相変わらず固まっていた。佐藤が歩いてくるのを見ると、すぐに侮蔑と嘲笑を浮かべ、小声で陰口を叩き、このE級の勇者に対する不屑を隠そうともしなかった。


佐藤は頭を上げることもなく、ただ黙って隊列の最後尾、一番僻んだ場所に立った。影に生える雑草のように、周りの栄光や喧騒とは相容れない存在だった。


この時、軍営の正門の高壇から、重厚で落ち着いた足音が響いた。

会場は一瞬にして静まり返り、誰もが思わず頭を上げて眺めた。


松のように背の高い姿が、ゆっくりと高壇に上がってきた。


老人は濃い茶色の重鎧を身にまとい、髭は半白だが顔つきは彫刻のように剛毅。外に余計な気を発することもなく、ただ百戦錬磨の戦場を支配するような重々しい威圧感を纏っていた。胯下の馬は神々しく、腰の巨刀は重厚で無言だ。


会場からは思わず低い声が漏れた。

「ゴルバシュ様だ……」

「帝国最強の土系老将、隕石さえ召喚できる伝説の存在!」


彼はSS級ではない。SSS級巅峰の極致土系魔術師なのだ。

大地の権能を掌握し、山崩れを起こし、隕石を呼び、万里の防壁を築くことができる、帝国真の戦場の柱石。女帝でさえ敬意を払う老将である。


ゴルバシュの瞳は深岩のように沈黙し、ゆっくりと下の勇者たち一人ひとりを眺め渡した。

視線が隅っこに移り、背中を丸めた目立たない佐藤悠真に止まった時、老人の瞳は極わずかに止まった。


彼はこの少年を覚えている。

天赋測定の日、彼はその場にいた。

測定石には確かに土属性の微かな光が灯ったのに、最終的な等級は驚くほど低かった。E級。


他の者は皆、彼を屑で、足手まといで、召喚儀式の失敗作だと思っていた。

しかしゴルバシュは一生を戦場で過ごし、無数の天赋者を見てきた。土の脉は、表に出ず目立たず、微塵のように弱く見えても、実は大地の奥深く根を張っている。ただ時が来ていないだけで、まだ花开いていないだけだと、誰よりも知っていた。


彼は声には出さず、ただ瞳の奥に、他の誰にも気づかれない留意と期待を宿した。

このE級の土の少年を、彼は心に刻んだ。


次の瞬間、老将は視線を戻し、その声は洪鐘のように会場全体に響き渡った。


「異世界の勇者たちよ、今日から、本将ゴルバシュが直接率いて前線の戦営に向かう。

これより修練、実戦、国土を守り、魔潮を防ぐすべては、軍法に従う。

弱者は淘汰され、

強者は栄光を得、

大地の上で生き残れる者だけが、勇者と呼ばれる資格がある。」


声が落ちると、風が急に冷たくなり、埃がそっと舞い上がった。


佐藤は隅っこに立ち、指先でそっとリュックの紐を握りしめた。

自分が生き残れるかどうかも、E級の自分が戦場でどれだけ持ちこたえられるかもわからない。

だが彼は、リゼロットが差し出した牛肉のこと、エリーネの柔らかい励ましのこと、果実酒の甘さ、そして二度と帰れない東京のことを思い出した。


行く手がどうであれ、彼は進まなければならない。


高壇の上、ゴルバシュは馬にまたがり、巨刀が朝陽の中で冷たい鋭光を一瞬反射した。

老人が一声を発すると、声は野原まで響き渡った。


「全軍――出撃!」


馬が嘶き、旗が翻る。

十六人の異世界から来た勇者たちは、帝国軍と共に戦場へ向けて進み出した。


栄光へ向かう者もいれば、未知へ踏み出す者もいる。

そして佐藤悠真、この塵のように平凡で、天赋がE級まで低い少年も、滔々とした隊列の中で、戦火へ、そして大地の奥深くの秘密へ、第一歩を踏み出したのだ。


彼はまだ知らない。

あのSSS級巅峰の土系老将が、すでに人群の中で、黙って彼を記憶に刻んでいたことを。

軍営への出発、それは佐藤悠真にとって、新たな試練の始まりだった。

強者たちの中で、E級の彼は目立たない存在だが、老将ゴルバシュの視線は彼に向けられていた。

土の力は、ゆっくりと根を張り、やがて世界を支える力となる。

この先に待つ戦いと成長を、どうぞ見守っていただければ幸いです。

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