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魔王の降臨

黒蝕森の戦いは、予期せぬ形で終焉を迎える——真の脅威がついに姿を現す。

赤城焔司声が落ちた刹那、長老の足下から赤い火浪が爆発的に広がり、空気は高温で歪み、周囲の魔気さえ一瞬で焼き蒸発した。無駄な動作はなく、腕を勢いよく引いて炎嵐長弓を絞り、弦の震えは雷鳴のように響いた。聖炎に包まれた三本の長矢が瞬時に形を成し、矢先の指す先は光まで歪んだ。次の瞬間、三本の火虹が空を裂き、残像のみを残して、目の前の密集する魔物群へ真っ直ぐ突っ込んでいった。


鈍重な爆音が連続して鳴り響く。


聖炎は凡火ではなく、あらゆる闇と魔性を滅する浄化の炎である。魔物の体に触れた瞬間、骨に喰らいつくように燃え上がり、消すことは叶わない。群がるゴブリン、骸骨兵、異形獣が火海中で悲痛な叫びを上げ、体は急速に炭化して崩れ、灰すら残らなかった。怒涛のような魔物軍団が、この三矢で一気に広大な突破口を開かれ、炎は道なりに広がり、沿道の魔物を焼き尽くし、その恐るべき勢いは森全体を震わせた。


続いて帝国の予備軍が一斉に叫び、甲冑がカンカンと響き、足並みは雷のように整っていた。兵士たちは矛と刃を持ち、赤城焔司が開けた缺口から戦場へ殺到し、これまで敗退し崩壊寸前だった戦線は一瞬で立て直された。士気が高まり、兵士たちは勇んで戦い、傲慢だった魔物は聖炎と軍陣の二重の抑え込みで完全に狼狽し、恐れの叫びが絶えず、続々と逃げ出し、以前の凶暴さは跡形もなくなった。


三大魔将は高所に立ち、この光景を見て顔色が次々と変わった。


蠍豹形態のザガンは棘だらけの蠍尾を振り、尾先が微かに震え、隠しきれない忌避感を目に浮かべて言った。「あの爺の炎……俺たちへの抑制が強すぎて、正面からは到底耐えられない」


狐猫の姿のリンカは鋭い鉤爪を舐め、以前の悪戯で陰険な表情はすっかり消え、深刻な面持ちになった。「このまま戦えば、得るものはないだけでなく、重傷を負う可能性もある」


最も鬼魅的な影丸は両腕を組み、蟷螂のような刃腕が微かに光り、沈黙の後、冷たく二文字を吐いた。「撤退」


迷いなく、三人は一斉に体内の魔気を駆動し、体中の黒煙が膨らみ、姿は一瞬にして森の闇に紛れ、完全に消え去った。魔将の指揮を失った魔物は群龍無首となり、崩壊し、森の奥へ散り散りに逃げるか、帝国兵に討ち取られるかした。瞬く間に、すべてを飲み込まんばかりの魔潮はすっかり引き、散乱した破損した兵器、魔物の残骸、そして生き残り力尽きた人々だけが残された。


戦場の喧騒は次第に治まり、荒い息遣いと、風が枯れ枝を過ぎるさらさらという音だけが残った。


赤城焔司はゆっくりと弓を下ろし、体中の聖炎は完全に消えず、なお体表をゆっくりと巡り、警戒して周囲を見渡した。三大魔将は一時的に逃れただけで、本当の敗北ではなく、黒蝕森の奥には想像を絶する危機が潜んでいると心得ていた。隣の同じく傷だらけで息が乱れるゴルバシウスに振り返り、軽く頷いて示し、その後、沈黙の声で後ろの兵士に命令した。「全軍分散、小隊単位で全域を厳しく捜索せよ。樹洞、薮、地下巣、岩の隙間……魔物が隠れそうな場所は一切逃さず、残敵を徹底的に殲滅し、奇襲を受けぬよう徹底せよ」


「承知いたしました!」


数千の兵士は一斉に承り、ただちに兵器を持って慎重に森の各所へ散らばり捜査を始めた。矛を樹洞に突っ込み、刀で薮を払い、足取りは穏やかで目は警戒し、少しも手を抜かない。激戦を経たばかりの森は、今や不気味なほど静かで、兵士たちの整った微かな足音だけが、ゆっくりと森の中に響いた。


戦場の脇、太い古木の陰に、一人の影がぶるぶると縮こまっていた。


それは山下健太である。


才能測定でA级と判定され、普段は尊大で佐藤悠真を何度も嘲笑した異世界勇者が、今や昔の勢いは微塵もない。両手で頭を強く抱え、体は制御不能に震え、冷汗は全身の衣をびっしょりと濡らして体に張り付いていた。三大魔将の出現、魔物の包囲、赤城焔司の応援、戦局の逆転……戦いのすべての間、彼は終始木の陰に隠れ、戦うどころか、戦場を見上げる勇気さえなかった。極限の恐怖が彼のプライドと傲慢をすべて飲み込み、骨の髄まで染み渡る臆病さと狼狽だけが残った、まさに弱くて愚かなA级勇者だ。


冷たく低い声が、突然彼の背後から響いた。


「ここに隠れて、何をしている」


山下健太は全身がびくりと震え、硬直したままゆっくりと振り返った。


桐生凛がそこに立っていた。全身に傷が無数にあり、衣は破れ血に染まり、雷光は殆ど消え失せていた。それでもまっすぐに立ち、折れない槍のようだった。


「俺……俺は……」健太は唇を震わせ、言葉も出ない。


「全員が血を流して戦っている。帝国兵も、他の勇者も、そしてE級の佐藤悠真さえ、最後の力を振り絞って戦っている」桐生凛の声は厳しく響く。「お前はA级勇者でありながら、木の陰に隠れて震えている。こんな者が勇者などと呼べるのか」


周りの負傷者たちは皆沈黙していた。

熊谷剛は木にもたれて座り、大地熊の獣甲は砕け、傷だらけで静かに目を閉じていた。

風見鈴は地に崩れ落ち、杖は折れ、魔力を使い果たして動けない。

他の勇者たちも、傷を負い力を尽くし、誰も声を上げなかった。ただ健太を見る目には、軽蔑と失望が込められていた。


赤城焔司とゴルバシウスは顔を見合わせ、深刻な面持ちになった。

「ここに留まっていては危険だ。傷の手当てをし、すぐに黒蝕森を離れ、兵営に戻る」


軍医たちが駆け寄り、佐藤悠真の胸の傷をはじめ、全員の手当てを始めた。

みな生き延びた安堵に浸り、危機は去ったと思っていた。


だが、その瞬間――


轟音が天地を揺るがした。


空が裂け、闇が降り注ぎ、黒蝕森全体が闇の領域に包まれた。

魔淵の奥で長き年月をかけ、魔王ヴァルグロスは砕けた肉体を完全に再構築し、ついに降臨したのだ。


闇の中に巨影が現れ、魔王が総てを見下ろす。

彼は片手を上げ、闇の鎖が二本、赤城焔司とゴルバシウスを襲う。

二人は全力で抵抗したが、力は及ばず、縛り上げられ、地面に叩きつけられた。


たった一撃で、帝国の二大最強は捕らわれた。


そして三大魔将が再び現れ、魔王に跪く。

先ほど逃げ散った魔物たちが一斉に戻り、総てを包囲した。


前には完全な魔王、横には魔将、背後には無限の魔物。

誰も戦う力は残されていない。


佐藤悠真は木にもたれ、闇を見上げた。

今度こそ、もう逃れられない。


絶望が、すべてを飲み込んだ。

絶望の先にあるものは、希望か、それとも更なる闇か。次章で明かされる。

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