焔矢、魔森を貫く
黒蝕森の絶望的な戦いの中、帝国が秘めたSSS級火属性弓長老がついに救援に駆けつけ、一矢で魔の潮流を切り裂く。
エリーヌは瞳に透き通る涙をたたえながら、唇を強く噛み締め、涙を落とすまいと必死に堪えていた。遠くの黒蝕森の方角からは、濃い墨のような魔気が渦を巻いて立ち昇り、魔物の甲高い咆哮、兵器の砕ける音、兵士たちの悲痛な叫びが次々と伝わってくる。足下の大地さえ微かに震動し、抑圧的な空気が軍営全体を包み込み、人の心を重く沈ませ、絶望に浸らせていた。
リゼロットは顔を蒼白にし、瑠璃色の瞳を黒蝕森の方向に釘付けにしたまま、指先を掌に食い込むほど強く握り締めていた。彼女は心を焦がしながら、すぐにでも森の中に駆け込んで助けたいと願ったが、側の親衛たちが必死に引き止め、この帝国第一王女が危険な地に足を踏み入れることを必死で防いでいた。彼女はただ魔気が渦巻く森を眺めるほかなく、無力さと焦りで胸がいっぱいだった。
この生死の境をさまよう瞬間、軍営の後方から鋭く力強い号角の音が突然鳴り響いた!
「ウゥーッ!ウゥーッ!ウゥーッ!」
三度の号角が空を揺るがし、続いて真紅の求援信号弾が次々と空に舞い上がり、天幕に眩い火炎を咲かせ、求援の信号を営地の最奥に待機する臨時予備軍に伝えていた。火の光が抑圧的な空気を切り裂き、最後の一筋の希望をもたらした。
営地の奥深く、一筋の人影が猛然と立ち止まり、体中に灼熱の火の気を纏っていた。彼は緋色の火紋が刺繍された長衣を身にまとい、銀髪を束ね、眉眼は鋭く、全身真紅の長弓「炎嵐」を手にしていた。この人物こそ、帝国SSS級火属性弓道長老――赤城焔司である。天賦は絶倫で、帝国百年に一人の逸材であり、実力は土属性のゴルバシュをはるかに凌駕し、遠距離狙撃に長け、独自に編み出した**「焔天貫魔矢」**は、一矢で黒蝕森全体を貫き、火炎には浄化の力が宿り、あらゆる魔物に対して天敵となる力を持っている。
血塗れの伝令兵がずるずると転げながら彼の前に駆け寄り、声を嗄らして震えながら叫んだ。「長老!黒蝕森前線は三大魔将の待ち伏せに遭い、魔物がどんどん湧き出し、兵士たちは甚大な被害を受け、勇者たちも全員重傷を負っています。これ以上遅れたら全滅してしまいます!」
赤城焔司の瞳が冷たく輝き、体中の火炎が猛然と膨れ上がり、周囲の空気までが焼かれて歪んで見えた。「我が帝国の領土で虐殺を繰り返すとは、死を望むな!」彼は低く厳かに号令をかけた。「臨時予備軍全員、我に従い黒蝕森を救援せよ!」
声が落ちるや否や、彼の姿は真紅の火の光と化し、真っ先に黒蝕森に向かって疾走した。背後の数千の臨時精鋭部隊がこれに続き、鎧の音が響き、歩調は雷のように鳴り、あの人間地獄へと真っ向から向かっていった。
この時の黒蝕森の中は、既に文字通りの惨状だった。
血のにおいがあまりに濃くて吐き気を催し、魔気の腐敗したにおいと混ざり合い、息をするのも苦しいほどだった。ゴブリン、スケルトン兵、歪な姿の魔物が隙間なく密集し、潮のようにどんどん湧き出し、樹上、地穴、茂みから狂ったように這い出し、生き残った人間に向かって幾度となく襲いかかり、魔の潮流は軍陣全体を飲み込もうとしていた。
帝国兵士は惨憺たる有様で、屍が腐った葉の上に無造作に積み重ねられ、血が黒い土に染み込み、細い流れとなっていた。生き残った兵士たちは既に疲労困憊し、鎧は砕け、傷だらけで、背中合わせになって寄り添い、欠けた兵器を振り回して最後の抵抗を試みるほかなく、一撃一撃が全身の力を込めた反撃だったが、それでも汹涌とした魔の潮流を食い止めることはできなかった。
熊谷剛の体に宿る大地の熊の獣甲は完全に砕け、巨体は地面に倒れて気を失い、胸は微かに動くだけで、息も絶え絶えだった。風見鈴の手に持つ木の杖は折れ、魔力は完全に尽き、顔は紙のように蒼白になり、木の下にへたり込み、指一本動かす力も残っていなかった。桐生凛の周囲の雷光はすっかり弱まり、体は血まみれで、片膝をついて荒い息をし、雷を集める力さえほとんど残っておらず、既に涯に近い状態だった。
佐藤悠真はざらざらした木の幹にもたれかかり、右手で胸の禍々しい傷を必死に押さえ、血が指の隙間からどんどん溢れ出し、ボロボロの衣を濡らしていた。意識は朦朧となり、瞳は半開きのまま視線は散漫で、目の前の光景もはっきりと見えず、傷から襲い来る激痛が全身を襲い、生命力が少しずつ失われていき、もう完全に息絶えてもおかしくない状態で、最後の一筋の念だけでかろうじて息を繋いでいた。
三大魔将は屍と魔物の残骸の山の上に立ち、臨死の人間たちを見下ろし、傲慢で残忍な表情を浮かべていた。蠍豹魔将・ザガンは鼻で息を吐き、蔑む表情を浮かべ、蠍の尻尾を随意に振り回し、襲いかかってきた数人の兵士を軽々と吹き飛ばした。蟷螂虎魔将・影丸は両腕を組み、体中に殺気を纏い、魔の潮流が人間の防衛線を浸食していく様を冷徹に眺めていた。狐猫魔将・リンカは両腕を組み、口元にお世辞と陰険な笑みを浮かべ、臨死の人々を見つめる瞳は戯れに満ち、まるで屠られる羊を眺めているようだった。
「この弱々しい人間ども、もう長持ちしないな」
「ちょうどいい、こいつらを全部喰らい尽くして、我々の力を強化するのだ」
リンカは軽く笑い、指先に魔気を集め、佐藤悠真の方に襲いかかろうと、最後の一撃を加えようとした。
この千钧一髮の瞬間、天地を貫くような真紅の矢の光が、森の外から猛然と飛び込んできた!
「ゴウッ————————!!!」
耳をつんざくような轟音が森全体に響き渡り、恐るべき熱波が四方に襲い来、火炎は万物を浄化する威勢を持って、一矢で黒蝕森全体を真っ直ぐに貫いた。道中の汹涌とした魔の潮流は瞬く間に灰と化し、密集した魔物が一斉に倒れ、渦巻く魔気も圣火に焼き払われ、魔の潮流の中に幅広い通路が無理矢理に開かれた。
三大魔将の表情は一変し、驚きと戦慄に満ちた。
「これは……SSS級の火の力!」
「一矢で森全体を貫くなんて!」
森の入り口に、赤城焔司が弓を構えて立っていた。緋色の長衣が火炎になびき、体中に圣火を纏っていた。彼の瞳は冷たく鋭く、万物を焼き尽くす威圧感を持った声が、黒蝕森全体に響き渡った。「我が帝国の兵士を傷つけ、帝国の民を虐殺するなど、今日、この身でお前たちを全滅させる!」
後書き
本章では、黒蝕森の絶望的な戦場に、帝国が秘めた最強の援軍を呼び込みました。
SSS級火属性弓長老・赤城焔司の一矢が、無限に湧き出す魔の潮流を一刀両断し、戦局に希望の火を灯しました。
重傷を負った勇者たちと兵士たちの命が、この一撃によってかろうじて救われたのです。
だが三大魔将はまだ健在であり、彼らの反撃はこれからが本番となるでしょう。
次章では、焔司と三大魔将の直接対決が幕を開け、物語はさらなる激しい局面へと進みます。




