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飛空技師は駆り出される  作者: 似瀬
ネブルヘイナ大森林編

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第134話 キモい進化

           ──飛空技師は駆り出される──


成果を持ってただいま──。

──(よい) 【曇り】


「オーッスオマエ等~、帰ってきたぞ~い」


あの後順調に巣荒らしを続け、合計10個の巣を持ち帰った。戦ったり探索したり色々あったが、その割には集められたんじゃなかろうか。


ジルゥ曰く…これでもまだ1人分しか作れないそうだが…。まあ明日もあるし…根気強く収集を続けよう…、巣…荒らそう…。


「カカー…! ちょっと話聞いてニー…! なんか途中で何触ってもビリビリする変な時間があったのニ…! あれ何か分かるニ…?!」


「あれは帯電晴(たいでんば)れっつう特殊天候だ、やっぱ知ってる奴居なかったか…。大丈夫だったか…?」


「手が痛かったニ…」


拠点へ戻る前にジルゥが地面を掘って作った食料保管庫を確認してきたが、中には様々な食料が置かれていた。トラブルの中でも頑張って集めたのだろう。


とは言えこの人数がお腹いっぱい食べるとなれば心許ない量だ…3人とクギャには明日も頑張ってもらおう…、しっかり腹を満たす為に。


「そっちの進行度はどんな感じ? 順調?」


「どっちとも言えないな…、やれるだけやるしかないって感じだ…。──あっそうだ、(みの)作りとは直接関係ねェけど、面白ェ物見つけたんだ。ジルゥあれ頂戴」


「コレだね、きっと3人も驚く筈だよ」


3人にあの古ぼけた屋舎で見つけた古城の見取図を見せた。3人は困惑の表情を浮かべ、各々頭の中で色々考えた結果、無事フリーズした…無理もない。


そこへ追い打ちをかけるように、ジルゥが提唱した〝魔物古代生物説〟と〝石碑が古代生物を復元させる為の装置である説〟を共有した。


いよいよ3人は石のように固まってしまった…無理もない。ちょっといっぺんに伝え過ぎたか? ロイスですら固まってしまうとは…。


3人がまた動き出すまでの間、アクアスと一緒に夕食の準備をしてしまう。長い距離歩いたり肉体労働したりで疲れてるだろうし、精がつく(やつ)拵えよう。


作業分担しながら手早く調理を進めていると、まずロイスが動き出した。ようやく整理が終わったようだ、是非感想を聞きたいね。


「おかえりロイス、さっきの話聞いてどう思った?」


「うん…そうだね…、その石碑が神造物であると仮定するのなら…あり得ない話ではないと思う…かな…? ごめんね…これ以上は何とも…」


ロイスの感想は概ね私達と同じ…〝石碑が神造物ならば納得せざるを得ない〟だ…。思考する上でなんと邪魔な存在か神造物…。


しかしやはり…復元説は引っ掛かる…。仮に石碑が復元装置だとして…石版には何の役割があるというのか…。


魔物が自らの意思で大陸各地に散らし…自身が身を置くエリアから持ち出されそうになればすぐさま駆け付け…どこまでも追い掛ける…。


既に復元が終わっている以上…魔物が石版に固執する理由はないように思える…。っとなればやはり封印が正しいんじゃないか…?


石碑に石版をはめ込むことで、対象の魔物を石碑の中に封じ込められる。故に魔物はそれを恐れ…何としてでも石版を守ろうとしている…とかな…。


正直どちらも原理はまるで分からんが…それも神造物だからと受け入れるしかない…。結局はっきりとした答えは出せないってこった…、封印説に関しても色々と疑問はあるしな…。


思考を巡らせればいくらでも疑問が浮かび上がってきやがる…、一生頭が痛くなる話題だ…退屈しないで済むのだけが救いかね…。


「──さて、料理も出来上がったし、難しい話は一旦区切って楽しい夕食にしようぜ。遠慮なくいただけよ、特にジルゥ」


「嬉しいねェ♪ 感謝感謝♪」


「ニキ! カーリーちゃん! もう思考止めな! ご飯にするよ! 冷めるよ!」


おでこをペチペチして正気に戻し、7人で食事を囲む。美味な料理を食べながら、明日以降の計画も軽く決めた。


とりあえず明日は今日とほとんど変わらず、2班に分けて各々の仕事をこなす。重要なのはその翌日だ。


明後日…いよいよ〝竜の巣〟へと足を踏み入れる…。そう急ぐ必要はないとアレスに指摘されたが…それっぽい理屈と勢いでゴリ押してやった。


だがそれは仕方のないこと…、アクアスの〝軌跡〟は3日前のものまでしか視られない…。明後日を過ぎれば落下した石版の〝軌跡〟が消えてしまう…。


〝軌跡〟を目印に探すのと闇雲に手探りで探すのとでは天と地ほどの差がある…、ましてや場所は竜の巣…長居は無用だ…。


長居すればするほど…ただただ危険が増すだけ…。ババッと行ってパパッと回収して、サササッと戻るのがベストだ。


その為にも明日できる限り巣を集めることが重要…! 最低でも3人分は作っとかないと…またアレスと言い合いになっちまう…。


アクアスは確定だが、能力(チカラ)を使用する以上…万が一にも超能疾患(クァーツ)であることがバレる危険性がある…。


それを避ける為にも…私かニキは同行しなければならない…。いや…ニキは好奇心そのままに行動する危険があるし…、私が行かねばなるまい…。


そんな中で「2人分しか用意できませんでした~」なんて状況になったら…アレスは間違いなく私とアクアスの2人で行くことを許可しないだろう…。


だがこっちとて譲るわけにはいかない…、そうなったら…最悪また殴り合いかな…。嫌だなァ…あんな化け物とまた殴り合うの…。


2対1じゃダメかな…? ニキさえ居れば殴り合い絶対勝てる気がするんだよね! 何ならニキだけで勝てる気がするんだよね!


まあそれは最後の手段、3人分作れるだけの巣を集めればいいだけの話だ。明日に備えてたっぷり栄養と英気を溜め込んでおこう──ウマっ。







──昼前(ひるまえ) 【晴れ】


「よしっ! これで2つ目だな、結構順調じゃないか。ひとえに頑張ってるおかげだな──パークがっ!!」


「まあ今のところ俺達見てるだけだしな…」


「優秀な人材を仲間にしたカカ様の手柄とも言えますね」


「それな」

「ちょっト?」


良いペースで集められている、この調子なら案外2人分集めるのは容易かもしれん。むしろ余裕だな、楽で良いぜ。




     ▼   ▽   ▼   ▽   ▼




──【雨】


「──なんて思ってた自分も居たっけねェ…。ハァ…途端に見つからなくなったな…、今までが運良かっただけか…」


「雨が降ってきてパーク様も浮かなくなりましたしね…」


「ごめんネ」


見つからねェし雨降るしパーク置物になったし…、なんか急に風向き変わったな…。少し前までの余裕が跡形もなく消えたんだが…。


どうすんだよこれェ…、パークが水吸って全然飛ばなくなっちゃったから…木の上に巣があるかも確認できねェ…。


また登らせて人力確認でもいいが…一度楽を覚えると面倒を避けちゃうのは人の悪いとこだよな…、雨が止むのを待とうとしている…。


ころころ天気が変わるから…待つのも悪い選択肢ではないと思うけど…、なんて考えてる時点で甘えてるのかもね…。


“──パキパキペキッ…”


「んっ? 何か聞こえないかい? 遠くの方で微かにだけど…」


「──確かに聞こえるな…草の根搔き分けるような音が…」


「そうか…? 俺には何にも聞こえてこねェが…、方角はどっちだ…? 念の為全員警戒しとけよ…!」


聞こえる音は微かなもので…音源はそこそこ遠くにありそうだが…、逆に言えばここまで音が届くほどの何かが起こっているようだ…。


どうか危険生物の襲来じゃありませんようにと切に祈りながら…微かに聞こえる音に耳を傾ける。


しかしその不吉を帯びた音は徐々に大きくなる…、どうやらこっちへと移動してきているようだ…。この時点で生物なのがほぼ確定した…。


すぐさま息を殺してジッと茂みの中に身を潜める…。草木を搔き分けるような音に加えて、ズシンッズシンッと重い足音も聞こえてきた…。


「おネエさん、ボクあっちに移った方がイイ?」


「そうだな…ジルゥと一緒に隠れてろ。ジルゥ、任せた」


「うわぁ…、凄い湿ってるぅ…冷たいぃ…」


湿ったパークをジルゥに預け、衝棍(シンフォン)を手に取って臨戦態勢を整える。まだ音の正体は見えてこないが…確実に近付いて来ている…。


足音的にかなりのサイズがありそうだ…、もしやすると昨日の混合獣(キメラ)よりデカいかもしれん…。絶対見つかりたくないな…。


「──…! ──…!!」


「──…!」


んっ…? 何か今までとは違う音が聞こえたような…。音と言うか()と言うか…、それも異なる人の声が…。まさか人語を話す獣でもあるまいし…。


だが徐々にその声も大きくなっていき…明らかに何者か2名の声だと分かった。会話の内容までは聞き取れないが…状況からして音の主に追われてるのかな…?


まあこんな場所に堅気が居る筈もないし、どうせ敵対連中の誰かだろう。獣賊団(クズ共)は手を引いたし…恐らくはランルゥ教徒。


“ズドーーンッ!”


「ぅぐっ…! クソ…どこまで追って来やがんだあの怪物は…?!」


「知りませんよ…! とにかく逃げなくては…──…っ! そこに誰か居るなっ?! 何者だっ?!」


えっバレた…!? えェ何でバレた…!? ちゃんと隠れてた筈なのに…! どういうこと…!? エスパー…!? それとも超能疾患(クァーツ)…!?


この状況でバレる要因なんてニオイぐらいしか…、あっ…蟲人族(ビクト)の触角か…。確か嗅覚に優れてるんですっけね蟲人族(ビクト)って…。


「そこに隠れてる奴出てこい…! 〝飛去戻切(スラーブ)〟…!!」


「ヤベっ…?! オマエ等伏せろ…!」


急いで身を低く屈めると、頭上を何かが勢いよく通り過ぎ…茂みが平らにカットされてしまった…。


通り過ぎた物体を目で追うと…大きなブーメランらしき物が高速回転していた…。やがてブーメランは弧を描いて持ち主の手元に戻った…スゲー技術だ…。


「不敬者共…?! まさかこんな場所で出くわすとは…、ここで会ったが百年目…! 神に代わってあの世に…痛いっ…?!」


「やってる場合かアホ…! もうそこまで来てるんだぞ…?! 逃げるぞ…!!」


「あぅぅ…叩かなくても…、んぅ…すみません…。──あっそれなら先輩! アイツ等になすりつけましょうよ!」


毒気のない純粋な眼でとんでもないこと言いやがったぞあの女…。怖っわ…、あれは一切の悪気も罪悪感もない目だ…。


“ガサガサガサッ!!”


「 “ギャオーーーンッ!!!” 」


「オオオオッ…!? なんだあのキモいアンバランス生物は…?!」


突如姿を現したのは…予想通り昨日の混合獣(キメラ)を超える大物…。胴体はクマなのに…首部分から長いウツボが4匹生えてる…。


昨日のがマシに見えるレベルのキモ生物だ…! ど…どういうことなのそれは…? 何がどう進化したらクマからウツボ生えんの…?


こんなキモい進化したらそりゃ絶滅もするわな…! ウツボは1匹で十分だわ…! ──いや要らんわ1匹も…!!


「クソ…こうなったらオマエの案採用だっ! なすりつけるぞっ!」

「はいっ!」


「ぅおーい来んな来んな来んな…!! オマエ等逃げるぞ…! 全速力だ…! でなきゃアレと戦うことになるぞ…!」


流石にあんなのと戦いたくない…、あれは間違いなく強敵の予感…。これからまだまだ巣を集めなきゃならない現状…あんなのに時間を使いたくはない…。


より一層キモい混合獣(キメラ)と教徒に背を向け、全力疾走で逃げ出す。ちょっと危険思考な教徒如きに、走りで遅れは取らない。


こちとら普段から歩いて戦ってを繰り返しとんのじゃ…! そこらの体力自慢よりスタミナも走力もある…! 私達の中に鈍足なんて──


「ハァ…ハァ…、ちょっと…待っておくれよぉ…」


「おネエさーん、このままじゃボク達死ぬヌー」


「オマエ足遅いんかい…! 毎日歩き回ってたんじゃねェのか…?! なのに体力ないとかオマエ凄いな…! 天性の鈍足マンだな…!」


このままじゃ余裕で追い抜かれ…ジルゥとパークは混合獣(キメラ)に襲われてしまう…。かと言って見殺しにもできない…。


引きずってでも逃げねェと…──…っ?! アイツ何して…?!


「〝飛去戻切(スラーブ)〟…!!」


「えっ…?」


女は刃のついたブーメランを…あろうことかジルゥに狙いを定めて勢いよく投擲した。風切音を鳴らしながら急接近するブーメラン…ジルゥじゃ避けられない…!


“バァン!”


「うわァ…!?」


あわや接触してしまいそうな最中(さなか)…一発の銃声と共にブーメランが弾かれた。何が起きたかは瞬時に理解できた…おかげすぐに動ける…!


弾いたブーメランはまるで引き寄せられるかのように女の手元へと戻ったが…もうこれ以上何も余計なことはさせねェ…!


来た道を引き返し、衝棍(シンフォン)を回しながら2人の方へと前進する。しかし状況が状況なだけあって、2人は私に目もくれず横に逸れた。


だがそれでも足を止めず真っ直ぐ前進し、全力で衝棍(シンフォン)を振るう。


「〝竜撃(りゅうげき)〟!!」

「〝無心の剣(フロー・ブレイク)〟!!」


「 “ギュオーーンッ!!” 」


いつの間にか私に追いついていたアレスと共に、ジルゥへと伸びてきていたウツボの頭部に攻撃を叩き込んだ。


手応えはあったが…皮の奥にある硬い骨の感触が手に伝ってくる…。ザリガニヘビと違って頭部へのダメージは少なそうだ…。


思わぬ反撃に混合獣(キメラ)は少し怯んだ様子を見せたが…他3つの頭がこっちを睨み付けている…。


もう教徒2人はここを離れただろうし…ここから混合獣(コイツ)を撒くのは不可能だろう…。してやられたもんだな…。


「僕等邪魔にならないように隠れてるから…! 君達は思う存分戦ってくれ…! 昨日のより遥かに強いから十分気を付けるんだよ…!」


「頑張ってネ~」


「おうっ…! オマエ等も十分気を付けとけよ…?! 戦いに巻き込まれても助けられるか分かんねェからな…!」



──第134話 キモい進化〈終〉

NEXT混合獣(キメラ)──!

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