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電子書籍発売記念SS裏〜レオン視点〜

エンジェライト文庫様から電子書籍が発売されました!画仁本にも様に素敵な表紙を描いていただきました。

ありがとうございます♪


シーモアやKindleなどで発売中です。

ぜひよろしくお願いします。

 エラが可愛くて困る。

 第一騎士団に来たばかりの頃のエラは、緊張していてどこか暗い印象だった。けどエラの悩みが解消された今、毎日太陽のように笑って過ごしている。正直に言うと、あの笑顔を他の騎士に見られるのは我慢ならない。そう思う一方でエラにはずっと笑っていてほしい。

 何とも悩ましい問題だ。

 俺は思わず深いため息をついてしまった。

 それを副団長のセシルが首を傾げて見ていた。


「団長、どうしたんですか?」

「いや何でもない」

「どうせエラのことなんじゃないのー?」


ギルは相変わらず鋭い。任務ではとても重宝するのだが、こういう時にまで発揮しなくてもいいと思う。いつも通りのニヤニヤした笑顔が生意気だ。

 真面目なセシルはギルにムッとしたらしい。


「そんな訳ないじゃないか。ね、団長」


そう言ってこちらに同意を求めてくる。

 こっちを見るな。今の俺は不満を隠せていない。

 不満そうな俺の表情を見たセシルの目がどんどん丸くなっていく。


「……て図星なんですか!?団長」

「あは。ウケるー」


セシルは呆然としている。ちょっと申し訳ない。セシルは俺のことを団長として尊敬してくれているというのに。

 だが仕方ない。騎士という生き物はどうしても恋愛に疎いのだ。

 このまま自分だけで悩んでいても仕方ない。

 俺は意を決して二人に話すことにした。


「正直戸惑っているんだ」

「団長が……戸惑ってる?」

「ああ。このままだとエラを誰にも見せたくなくて監禁してしまいそうだ」

「団長それはやりすぎです」

「分かってる。分かってるからこそ堪えてるんじゃないか」


 不安そうな顔をするな、セシル。

 さすがに騎士団長としてそんなことはしない。

 多分。


「ねえねえ。そもそも団ちょー、エラと恋人同士でもないんでしょー?」


その通りだ。俺はぐうの音も出なかった。

 俺だって早く恋人になりたいさ。


「んじゃさ。そんな事したらただの犯罪じゃね?」

「……ギルの言う通りだな」


だが何もかもギルの言う通りだ。大変不本意だが。

 分かってる。

 恋人でもない俺がエラにとやかく言うことなんて出来ない事も、まして独占したいなんて思う事も。

 俺にはそもそもそんな資格がないのだ。


「早くプロポーズしちゃいなよ」

「プロポーズか……」


ギルのやつ、楽しそうに言ってくれるな。こちらにはこちらの事情やタイミングというのがあるのだ。


「したいのは山々なんだがな。アリア嬢のこともあったばかりだし、時期を見計らってと思ってるんだ」

「ふぅん」


エラはつい最近、身内に不祥事があった。エラを虐げていた身内とは言え、エラはたまに塞ぎ込んでいる時がある。そんな時に俺が告白やらプロポーズやらしたって、エラには迷惑になるだけだろう。

 本当は一刻も早く俺のものにしたいところなんだが。

 急いては事を仕損じる。

 まだ納得していなさそうなギルに、俺はふっと笑って見せた。


「まあそのうちな」


◆◆◆


 王宮での面倒な報告業務を終えて、俺はいそいそと第一騎士団の宿舎へと向かっていた。

 もうすぐ夕食だ。

 エラの「おかえりなさい」を早く聞きたい。あの笑顔を見れば今日の疲れも引き飛ぶのだ。

 と言うのに、間が悪く声をかけられてしまった。


「レオン君」


聞き覚えのある女性の声。俺のことをレオン君なんて呼ぶ女は一人しかいない。

 全く面倒なヤツに捕まった。

 俺はため息を吐きつつ、振り返った。


「スノウ。どうした」


彼女の名前はスノウ。王宮では天才と呼ばれる薬学者だ。最近は美容薬の制作に注力しているらしい。

 そしてやはり、スノウは大きな箱を抱えていた。


「これ。今回の実験……じゃなかった。お裾分けだよ」

「ああ……いつもの美容薬か」

「そうそう。今回は美肌効果のある美容薬なんだ。日々日焼けして肌を痛めてる騎士達にも効果があるか確認したくてね」

「なるほど」


 美肌効果、か。

 それならエラにも使えるかもしれない。いつも家事で大変なエラは手は荒れているし化粧もあまりしない。それでも可愛いのだから何の問題もないのだが、令嬢はこういうのが好きだと聞く。もしかしたら喜ぶかもしれない。

 満面の笑顔で「ありがとうございます」と言うエラを思い描いて、少しにやけた。

 しかしそれをスノウに見られてしまった。


「何その変な顔」

「何でもない」

「ふうん?まあ、それじゃあよろしくね」


スノウも忙しいらしい。いつもはもっと絡んでくるのだが、今日はあっさりしていた。

 だが俺としても助かった。

 俺は足早に宿舎へと向かった。


◆◆◆


 残念なことに、あの美容薬が予想外のことをもたらした。

 やはり美容に興味があったらしいエラは、嬉しそうに使っている。その姿があまりに可愛くてちょっと強引に迫ってしまったが、それは不可抗力というものだ。だが、エラの可愛いさは止まることを知らなかった。

 あれから美容薬を使い続けたエラは、どんどん可愛くなっていく。

 きめ細やか艶肌が、エラの明るい笑顔をより魅力的に見せている。

 すごく素敵だ。

 ほら見ろ。

 他の騎士達までエラに見惚れているじゃないか。


「こんなはずじゃなかった」


俺は思わずため息をついた。今日の合同模擬試合だって俺は反対だったんだ。

 ただでさえ明るくなった家庭的なエラに騎士達が注目しているというのに。


「団ちょー落ち込みすぎ」


ギルは他人事のように笑っていた。

 そんなギルが憎らしい。


「落ち込んではいない」


だが騎士達が怖がっているのも分かっている。それくらい我慢してほしい。


「大丈夫だってえ。姉御だよ?そんなそこら辺の騎士に惚れることないでしょー?」

「そうだが……ほら見ろ。騎士達のあの視線」


あんな野獣のような視線を見て平静でいられるものか。

 いつエラの身が危険に晒されてもおかしくないんだぞ。エラの可愛さに魅了された騎士が襲ってきたらどうするんだ。


「まー……モテてるよね」


ギルもエラの人気が高まっている情報を掴んでいるらしい。


「許せない」


おっとつい心の声がそのまま出てしまった。


「団ちょー。前も言ったけど、団ちょーはまだ片思いだからね。暴走しないでよねえ」

「分かってる」


ギルの忠告に俺は頷いた。

 分かってる。分かってはいるんだ。

 だが何とももどかしい。

 エラの笑顔に癒されるのに誰にも見せたくない。

 俺だけのものにしたい。けど急いてエラを戸惑わせたくない。困って欲しくない。ずっと笑っていてほしい。出来ることなら俺の隣で笑っていてほしい。

 俺だけに笑いかけてほしい。

 そんな葛藤をしていると、ふと優しい声が聞こえてきた。


「レオン様」


エラだ。エラに話しかけられただけで俺の気持ちは浮上していく。


「エラ、どうした?」

「あ、あの……」


そう言ってエラが差し出したのはバスケットだ。

 顔を赤くしてバスケットを差し出すエラが可愛い。

 可愛いが渋滞していて感情が追いつかない。

 俺はバスケットを受け取って中身をのぞいてみた。


「これ……!」


中身はサンドウィッチだった。しかも俺の好物が詰まっている。

 俺のための、俺だけのランチ。

 これは勘違いしていいのだろうか。

 エラを見ると、ほんのり頬を赤くして小さく頷いた。


「レオン様の好きな物詰め込んでみました。その……他の騎士達には内緒ですよ?」

「勿論だ」


誰にも言うもんか。これくらい独占されても誰にも文句は言わせない。

 サンドウィッチは相変わらず美味しかった。

 エラの作る料理はいつも何でも美味しくて癒される。それはエラの聖女の力も関係しているのかもしれないが、絶対にそれだけじゃない。


「いつも通り美味しい」

「あ、ありがとうございます」


お礼を言うと、エラは花が咲いたような笑顔を見せてくれた。

 可愛い。

 俺の語彙力が足りないばかりに、これ以上エラの可愛さを表現することが出来ない事がもどかしい。

 俺はエラにサンドウィッチを差し出した。


「あーん」


エラは驚いた表情を見せた。しまった。ちょっとやりすぎたかもしれない。

 しかしエラは顔を真っ赤にしながら、恐る恐る口を開いてくれた。

 何だこれ。可愛い。

 小さな口で食べる姿が何とも庇護欲をそそる。


「な?美味しいだろ?」


エラに警戒させないよう、優しく微笑んだ。エラは顔を真っ赤にしたまま何度も頷いた。

 そんなエラが可愛くて、もっと食べてるところを見たい。俺はまた食べさせようとサンドウィッチを差し出した。

 しかしエラが必死に首を横に振った。


「レ、レオン様!これはレオン様のために作ったので……」


あ。内緒って言いながら自分でバラしたな。

 これだけでもう充分エラに密かに想いを寄せていた騎士達の心は折られていた事だろう。いい気味だ。

 俺は思わず笑みをこぼした。

 だが油断せずトドメを刺しておこう。

 レオンはゆっくりとエラの頬に触れた。


「肌、綺麗になったな」


想像以上に艶やかで柔らかい肌に、理性が飛びそうになる。だがあまり力を入れると壊れてしまいそうで、なるべく優しくそっと触れる。

 綺麗だ。

 するとエラは恐る恐る俺の手に頬擦りした。

 俺の思考は停止した。

 理性が飛びそうになるのを必死に堪えた。


「美容薬のおかげです」

「……そうか。良かったな」


いや本当に。

 エラが可愛いくて困る!


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