めんどくさい奴
昼休みも天王寺はずっと女子に囲まれていた。そんな状況でも天王寺は全く困ることなく、爽やかスマイルとで次々と女子を虜にしていく。
俺は、今日も先輩たちに昼食を誘われていたので高崎と共に食堂へと赴き、先輩たちと合流する。そこには先輩と木島の他に理子や咲良もいた。
「あ、お兄ちゃんこっちこっち!」
「おお、二人もいたのか」
「もう、なんで私たちも誘ってくれなかったのよ」
そうして取っておいてくれた席へと着く。食事をしながら、話は転校生のことになった。
「すごかったわね、神崎くんのクラス。1回通りかかったのだけれど、まるでスターでも来たかのような人気ぶりだったわ」
「全く、男にそうしてメロメロになるなんて皆どうかしているんじゃないかしら。それもまだ会って間もない相手に」
多分、メロメロになってるんじゃなくて、転校生だから興味がわいて見に来た奴がほとんどだと思うけどな。でも天王寺ならその線もあながち間違いじゃないかもしれない。男の俺から見ても彼のかっこよさはなかな
かだと思う。
「ん?お兄ちゃんのところ転校生が来たの?」
「ああ。かなりのイケメンらしいぞ」
しかし理子は対して興味もなさそうで、咲良も同様だった。
「ああ・・イケメンなんて滅べばいいんだぁ・・」
何故か悔し涙を流している高崎をみんなは気にすることなく食事を続けていると、不意に声をかけられる。
「神崎くん。隣、いいかな」
それはさっきまで話題になっていた天王寺だった。
俺が頷くと、天王寺は隣に座る。
「一緒にいた女子たちはどうしたんだ?」
「僕が食堂に行くと言ったら皆ついてくると言ったんだけどね、用事もあるからって言って断ってきたんだ」
そう言うと天王寺は有栖川先輩、木島、理子、咲良の4人を見て目を見開かせた。
「お、おお・・。神崎くん、彼女たちは知り合いかな?」
「ああ。この二人は俺の妹で、先輩と彼女はバイトの先輩と同僚だ」
天王寺は美しいものでも見るかのように四人を眺めていた。木島が嫌そうな顔をする。
「ちょっと。ジロジロ見ないでくれる?きもいんだけど」
「おっと・・ごめんごめん。君たちが余りにも可愛いから思わず見とれていたんだ」
そう言って先輩たちに微笑みかける。大抵の女子なら今ので堕ちていただろう。だが、4人は全くそんなこともなく特に木島に関しては完全に気持ち悪そうな様子で見ていた。
「はぁ・・。えっと転校生さんでしたっけ?そうやって口説こうとするのやめてもらえませんか。私、別にあなたに興味はないんです」
「え・・?今私達、口説かれてたの?全然気付かなかったわ」
「あらあら。昼間から校内でそんなことをするなんて駄目な転校生ね」
天王寺の言葉が裏目に出たのか完全に敬遠されてしまったようだ。しかし、天王寺はそれでも笑みを崩すことはなかった。
「はは、これは手痛いところを・・。ですがそんなところも気に入りました」
そこへ、天王寺に気づいた女子がやって来る。
「あ、天王寺くん結局食堂にいたじゃない!私達とお話しましょうよ!」
「いえ、あの僕はこの人たちと・・」
しかし、そのまま女子たちによって連れ去られてしまった。その様子を皆で眺める。
そこへ、高崎がそっと耳打ちをしてきた。
「よかったな、妹ちゃん達があいつの毒牙にやられなくて。お前ちゃんと調教できているじゃないか」
「誰が調教だ。張り倒すぞ」
俺が睨むと、高崎は冗談だと言って笑った。
全く・・・。
「でも、あいつもしかしたらまた狙ってくるかもな。あれは完全に獲物を見る狩人の目をしていたぞ。
俺もそういう目をしたことがあるからわかる」
高崎がそれを言うと妙に説得力があるから困る。まあそんなことはないと思いたいが・・。
「でも私、さっきの人・・あんまり好きじゃなかったな。なんかずっとニコニコしていたけど、無理して笑って
いるような気がして。なんか裏がありそうというか・・」
「私は最初からいけ好かなかったわ。それに初対面の女性にあんなこと言えるなんて、慣れているのよ女の扱いに。だからすぐにああいう言葉が出てくるんだわ。正直一番嫌いなタイプね」
妹二人の意見は散々なようだった。それに内心ほっとしている俺がいた。
「私はお兄ちゃんさえいればそれでいいの~。ね、お姉ちゃん」
「な、なんで私なのよ。ま、まあ別に私も他の男性に興味はないけど・・・」
その様子を見ていた先輩が微笑んだ。
「神崎くんは愛されてるのね~。少し羨ましいわ」
「神崎・・いくら妹が可愛いからって手出したらダメよ」
「出すわけ無いだろ」
何考えてるんだ、全く。妹をそういう対象として見るわけがないだろう。
「私はずっとお兄ちゃんがいいって言い続けてるんだけどなー。お兄ちゃんを落とすにはまだまだ時間がかかりそうね」
「理子・・・それ普通男子が言う台詞だから」
そうしてその後はたわいもない話で盛り上がりながら、俺たちは昼休みを過ごしたのだった・・・。
◇◆◇◆
「やはりどこかで見たことがあるような・・・」
神崎たちが食堂でご飯を食べている頃、私はあの天王寺とかいう青年のことが気になっていた。気になって
いるといっても、別に好きとかそういうわけではない。単純に、奴をどこかで見たことがある気がしてならな
いのだ。
そこへ一通の着信が届く。相手を見ると、私の仲間からだった。
「何かわかったのか」
「はい。多分そいつはあの天王寺で間違いありません。まさかそんなところにいたとは・・・」
「そうか・・・。わかった。後でまた折り返し連絡する」
そう言って私は通話を切る。
「ふぅ・・・、まためんどくさい奴が来たな・・」
◆◇◆◇




