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思い

 懐かしい夢を見ていた。

 それはまだ俺が不良だった頃のものだ。あの頃は俺は本当に何をしたかったのかよくわからなかった。毎日毎日喧嘩ばっかりして家族には迷惑をかけ、

 そしてあの事故が起きて両親が亡くなった。

 両親に迷惑をかけるだけかけて何もできないまま二人共死んでいったのだ。

そして俺は改心して不良をやめた。断ち切るために当時の舎弟だった奴らに何も告げないまま引越しもした。それで俺は妹たちのために今日までを生きてきたのだ___。

 



「ん・・・・」


 目を開けると、俺はそこが見知らぬ場所であることに気づく。

 ・・・?どこだここ。

 俺はベッドの上に寝かされており、手は包帯でぐるぐる巻きにされていた。試しに包帯の上に手を置いてみると、激痛が走る。


「っ!?」


 そこで俺はさっきまでの出来事を全て思い出す。

 そうだ。木島を庇って腕が犠牲になったんだ。ところで木島は・・・?

 一緒に車に乗ったところまでは覚えているが、そこから先は全くわからない。もしかして帰ったのだろうか。

 そこで俺はベッドのそばで壁にもたれるようにして寝ている木島の姿を見つける。泣いていたのか、目元が少し赤く腫れていた。

 俺は木島を起こさないようにして立ち上がると、携帯で時間を確認する。

バイトの時間には2時間程遅れていたが仕方がない。とりあえず先輩に詫びのメールをいれよう・・・。そう思い、俺はメールをしようとして日付がおかしいことに気づく。


「ん・・・?今日って平日だったっけ?」


 確か、休日に暇だから・・といって少し買い物をしたあとにバイトに行こうとして木島を見つけ、助けたはずだ。それにも関わらず、3日も時間が進んでいる。もしかして携帯の表示がおかしいのか?

 まあいいや。とりあえず先輩にメールしておこう・・。あと、妹たちにも遅れることを伝えないと。

 そう思いメールを送ると間もなく一件の着信が来る。咲良からだった。


「ん、咲良か。あのさ、今日遅れ__」

「兄さん・・・!?」


 咲良はまるで叫ぶようにして俺を呼ぶ。


「あ、ああ。兄さんだけどあの__」

「理子!!兄さんが・・目を覚ましたって!」


 そこで電話の相手が咲良から理子に代わる。


「お兄・・・ちゃん?お兄ちゃん・・だよね・・?」

「理子か。ああ、俺は俺だぞ」


 すると、電話越しで嗚咽を漏らすような声が聞こえてくる。


「う、うぅ・・よかっ・・わたし・・もうお兄ちゃんが起きないんじゃって・・・!」

「へ?」


 ちょっと待て。起きない?いったいどういうことだ。

 いや、大体わかっている。今のがどういうことを意味するのか。ただ理解したくなかっただけだ。゛3日゛もずっと眠っていただなんて。

 理子は電話越しに泣きじゃくりながらこういった。


「すぐそっちに行くから・・・!」

 

 そこで電話が切れる。  

 はぁ・・どうやら二人にかなり心配をかけていたみたいだ。

 しかし3日も眠っていたなんて俺の体も怠け者だな。まああの多量出血が原因なんだけど。

 怪我をしていない方の腕には輸血用のパックがついている。それのおかげもあってなのか、今は至って健康だ。

 そうして俺は再びベッドに戻ると、ベッドに軋む音で木島がゆっくりと目を覚ます。


「よう」

「はれ・・?神崎・・?」


 木島は寝ぼけているのかろれつが回っていなかったが、俺の姿を捉えると途端に意識がはっきりとする。そしてそのまま俺に抱きついてきた。


「神崎ぃ!!神崎、神崎!」


 俺の名前を何度も連呼しながら泣き始める。俺は少し驚いたものの、木島の肩が震えていることに気づき背中をさすってやる。


「わりぃな。なんか結構迷惑をかけたみたいで」

「迷惑どころじゃないわよバカ・・!私このまま神崎が目を覚まさないんじゃ・・ってずっと悪い方向にばっか考えていて頭がどうにかなりそうだったのよ!?」


 なぜか逆ギレをされるが、いつもの木島らしさが戻って(?)来ているようで俺は安心していた。


「ごめんごめん。ここのベッドが気持ちよかったからつい寝過ごした」

「つい・・じゃないわよバカぁ・・」


 そのまましばらく泣き続ける木島を俺は慰めながら、あることを思い出す。


「そういえば俺を刺した男はどうなったんだ?」

「警察に連れて行かれた・・。今頃殺人容疑で逮捕されているわ。もしされていなかったら抗議しに行くところよ」

「そうか。まあそれならいい」


 そこで泣きやんだ木島は俺から離れると、深々と頭を下げる。


「本当にごめんなさい。私を庇ったばかりに神崎がひどい大怪我を負ってしまうなんて・・。許してもらえるとは思っていないわ。でもちゃんと謝りたかったの・・」

「謝ることはない。こうして俺は無事なんだし、木島に怪我がなかっただけでも俺は十分だ」

「だめ・・。そんな優しいこと言わないで。神崎が良くても私の気がすまない・・。なにか私にできることはない?なんでもするから!」


 いつもの刺のある言い方はなりを潜め、俺の反応を伺うようにしてこちらを見てくる木島。


「じゃあ胸見せてくれ」


 俺が冗談っぽくそう言う。普段の木島ならたくさんの罵詈雑言を言ってきただろう。しかし木島は、


「わかった。神崎がそれで満足するなら・・」

 

 そう言って服を脱ごうとするのを俺は慌てて止める。


「待て待て待て冗談だ!一体どうしたんだ木島・・?いつものお前なら俺がそんなこと言ったらゴミを見るような目で睨んでくるじゃないか」

「確かにそんなこともあったかもしれないわ。でもそれは過去の話。私、神崎になら見られてもいいよ」

「お、おい・・本当に一体どうしたんだ?」


 いつもの木島らしくない行動に戸惑う俺だったが、木島は平然としている。


「別にどうもしてないわ。ただ、私が今まで愚かだったことを認識しただけだったの」

「???」


 突然そんなことを言われ意味がよくわからなかったが、木島はこういった。


「ゆみ先輩から聞いたの。神崎が今まで私にしてくれたこと___」


 





 













 

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