エピローグ:四条の夏雨、冷たいご飯
京都の夏は、鍋の底にへばりついた冷たい味噌汁のように濃厚な熱気とともにやってきた。狭い部屋の合板の壁は、熱せられた木の匂いと四条の路地の湿気を放っていた。
夜の9時。部屋の唯一の明かりは、拓真が南駅近くのリサイクルショップで300円で買ってきた安物のスタンドライトだけだった。リノリウムの床の上、壁にこびりついていた乾燥した米粒のシミはほとんど剥がれ落ち、壁紙の上にわずかに明るい影だけを残していた。
エイミーはあぐらをかいて座っていた。首元を解いたH&Mの化学繊維の制服を着て、不器用なハミング音を立てて回る小さなプラスチック製扇風機の風を浴びていた。彼女の手には2枚の紙があった。
一枚目は、神戸簡易裁判所からの訴訟通知書だった。赤い蝋の封印も英国製ウールの弁護士も存在しない、一枚のシワの寄った感熱紙。文章は簡潔で、先を急ぐ公務員の官僚的な無感情さで綴られていた――ブランド「ティファニー」の代理人によって提起された訴えは、予備審問における原告側の不出頭により却下された。ティファニーは3週間前に韓国コスメのチャンネルを再立ち上げするためにソウルへと去り、ファイルと代理人費用、そして首都の私立クリニックに預けた妊娠4ヶ月の記録だけを置き去りにしていった。
拓真:――振り向くことなく、濡れ雑巾で窓枠のホコリを拭きながら――「なんて書いてある?」
エイミー:――感熱紙を二つに折り、廊下に食べに来る猫の皿の下に敷きながら――「何でもないわ。ファイルが閉じられたって。法廷に現れなければ、裁判官がリストから名前を消してくれるのよ」
二枚目の紙は、2週間前の『京都新聞』の南区三面記事の切り抜きだった。エイミーはそれを3秒間見つめた後、床のひまわりの種の殻を拾うために使った。
エイミー:「ステイシーのことが『京都新聞』に出てたわ。地方テレビ局のビルの入場ゲートで、夏の特別番組の控え室に隠しカメラを持ち込もうとして警察に拘留されたって。公務執行妨害で3日間の行政拘禁と5万円の過料」
拓真:――汚れたガラスに雑巾を当てたまま一瞬手を止め、遠くのトラックの行き交う交通量を見つめながら――「高い配信代になったな」
エイミー:「彼女には関係ないんでしょうね。靴下に隠したスマホで、パトカーの中から逮捕の様子を生配信しようとしたって記事に書いてあったわ」
拓真はそれ以上何も言わなかった。彼は足の伸ばせる薄いマットレスに近づいてエイミーの隣に座り、寝る時だけ着るようになった擦り切れたスウェットのポケットから、薄い封筒を取り出した。烏丸の広告チラシの印刷所で資材係の助手として働いた、最初の1週間分の給与明細だった。インクの匂いと新聞紙の香りが残る、真っ直ぐなピン札で5万2千円。
彼はそのお金を、エイミーが空のマッチ箱に大切に保管していた、破れた妊娠検査薬のすぐ隣のリノリウムの上に置いた。
拓真:「主任が言うには、輪転機の夜勤シフトに入れば、8月には小さなエアコンを買えるようになるって」
エイミー:――少年の肩に頭を預け、彼のTシャツの硬い生地と、機械油と清潔な汗の匂いを感じながら――「廊下に雨漏りさえしなければ、それで十分よ、タク」
外では、夏の雨が高窓のアクリルに降り注ぎ始めていた。清々しく、素早く、大通りの電話線を覆っていたホコリを洗い流していった。英国製ウールのシルエットも、紫色の光も、どのガラスにも映し出されなかった。
ただ熱いアスファルトに落ちる水の音と、夜の真ん中で一杯の冷たいご飯を分け合う二人の姿だけが、そこに残されていた。
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