第45話:清算される帳簿、泥の中の人間性
壁についた米粒が冷え始め、乾いたかさぶたのように壁紙にこびりついていった。四条の通りでは、ゴミ収集トラックの夜間交通が重い低音を響かせ、穴蔵にある唯一の小さな高窓の汚れたガラスを微かに振動させていた。
エイミーは床から動かなかった。彼女はプラスチックの検査薬を握りしめすぎて、その端の角が手のひらの皮膚を切り、ほとんど血も出ないような細い赤い傷跡を残していた。彼女の隣で、拓真の呼吸はすでにパニックによる荒い息遣いではなくなっていた。それは潮に流される砂のような音を立てる、静かで重く、短い吸気の反復へと変わっていた。
廊下の湿気による結露が分厚い滴となって溜まる高窓の枠には、外の街灯の光が鉄格子の影を映し出してはいなかった。そこには、数学的で完璧な鮮明さをもって、ロード・ケザールの反射が映し出されていた。貴族は座ってはいなかった。彼は湯気の層の向こう側に立ち、両手を後ろで組み、長年計算し尽くされた化学反応の結果を観察する者の冷酷さで、部屋を見つめていた。
拓真は窓を見なかった。彼は自分の両手を見つめていた。2年間、彩度のバーをスライドさせ、商品として成り立つようにティファニーの音声を修正し続けてきた、まさにその両手だ。スクリーンの記憶によってまだ曲がったままの彼の指先は、ゆっくりとスウェットのポケットへと降りていった。彼はポケットから、しわくちゃで柔らかく、油脂と溜まり水の汚れがついた1万円札を取り出した。
静寂は丸々3分間続いた。モデムの光が正確に92回点滅する、永遠のような時間だった。
拓真:――その声はかすれてはいたが、壊れてはいなかった。シーザー・タワーのビルを踏みしめて以来、一度も見せたことのないような澄んだ明瞭さをもって響いた――「6万円……」
エイミーは頭を上げなかった。リノリウムの床を見つめ続けていた。
拓真:「6万円が、最初の週にティファニーが僕に払ってくれた金額だった……伏見のアパートの敷金を払うためのね。空からお金が振ってきたみたいに思えたよ、エイミー。ノートパソコンの前に座って、いくつかの数字を動かすだけで、世界が僕を放っておいてくれるんだって思ってた」
少年はマットレスの上でゆっくりと身体の向きを変えた。体勢を変えたことで骨盤に乾いた激痛が走ったが、彼は瞬きひとつしなかった。彼は1万円札を、白いプラスチックの妊娠検査薬の隣の木目の上に置いた。
拓真:「画面の代償を払っているのは自分だけだと思ってた。衣装部屋の床でティファニーに手を踏みつけられていた時……その痛みはその部屋の中だけに留まるんだと思ってた。その痛みに耐えて動画をレンダリングしさえすれば、ノルマ(月謝)は払い終えたんだって」
彼はエイミーを見た。彼の瞳に拒絶の色はなかった。ステイシーが引き起こそうとしたヒステリックな嫌悪感もなかった。そこにあったのは巨大な罪悪感の影と、彼の表情を押し潰すような、遅すぎた深い理解だった。
拓真:「君は朝の7時にここを出てTシャツを畳み……それから今朝僕が飲んだスープを買うために、ミナミの路地裏へ向かわなきゃいけなかったんだね。僕は君の身体を喰らってたんだ、エイミー。マウスを握る手が震えるって愚痴を言いながら、君の血で買われたスープを飲んでたんだ」
エイミー:――乾いた喉で唾を飲み込み、この日初めて声を震わせながら――「バカなこと言わないで、タク。あんたは何も知らなかったのよ。この穴ぐらで生き残るために、誰かの許可なんて誰も求めやしないわ」
拓真:――首をゆっくりと横に振り、エイミーの擦り切れたズボンの生地に触れるまで不器用な手を伸ばしながら――「バカなことじゃないよ。同じ取引なんだ。ケザールは僕たちを監査するのに、45階のスクリーンなんて必要としてない。僕たちを同じ決算書の中に閉じ込めてるんだ。君は僕がこのマットレスの上で餓死しないように車の後部座席で自分を売り……僕がティファニーに電気代を払わせるために自分の頭脳を売ったのと、全く同じなんだ」
窓のガラスから、ケザールの反射がわずかに傾いたように見えた。彼の声は力強く響くのではなく、合板の壁の間の死んだ空間にだけ反響する、凍りついた囁きとなって滑り込んできた。
ケザール:「負債の承認か。実に特異な瞬間だ。下層社会には利他主義など存在せず、あるのは損害の交換だけなのだと、資産がようやく理解したわけだ。彼女は胎内で支払い、君はトラウマで支払う……だが最終収支はゼロのままだ」
拓真は夜を通じて初めて、高い位置にある窓を見上げた。彼の視線は結露の向こう側にある反射の氷の姿と交差した。彼は震えなかった。ステイシーがLEDリングライトの光を向けた時のように、顔を覆おうともしなかった。
拓真:――ガラスの中のケザールのシルエットをじっと見つめ、まるで南禅寺の石そのものから学んだかのような冷徹さで語りかけた――「収支はゼロなんかじゃないよ、ケザール。彼女がポケットに入れて持ち帰ったお金は、君の市場の配当金なんかじゃなかった。車の中で嘘を買い叩く必要があった、どこかの男のお金だ。エイミーはこの中にあるものを、何一つ売ったりしてない」
少年は床の硬さを感じながら、リノリウムの上で拳を握りしめた。
拓真:「彼女は僕から光への恐怖を奪ってくれたんだ。そして明日、僕は彼女と一緒にクリニックへ行く。僕が彼女の看護師だからでも、救世主だからでもない……僕たちがいるこの泥は僕たちのものだ、君のものじゃない」
窓の中のケザールの姿は、怒りで崩壊することはなかった。彼は軽く頭を下げた。遅かれ早かれ請求書はどちらにせよ取り立てられることを知っている監査人の、厳かな別れの挨拶だった。ガラスの結露が分厚い滴となって滑り落ち、反射を二つに切り裂き、四条の街灯の黄色い光の中に貴族のシルエットを溶かしていった。
風が再び、穴蔵の壊れたドアを揺らした。
エイミーは拓真を見た。プラスチックの検査薬の上に固く閉じられていた彼女の手はゆっくりと緩み、試薬棒をマットレスの上に落とした。二人の肩が部屋の薄暗がりの中でぶつかるまで、彼女は彼に少しだけ近づいた。
エイミー:――壁の米粒のシミを見つめながら、囁くような声で――「朝の8時に出るよ、タク。ミナミのクリニック。H&Mが開く前に、4番系統のバスに乗らなきゃ」
拓真:「切符の代金を探してくるよ。上着にまだ400円残ってる」
二人は空気の抜けたマットレスの上に並んで座り、穴蔵のちょうど真ん中で、ドアの下から忍び寄る夜の冷気を感じていた。そこにはもうカメラも、メトリクスも、折れ曲がった名刺の中に彼らを待つ目黒の金も存在しなかった。そこにあったのは、己の人間性の代償を払う覚悟を決めた、リノリウムの床の上にいる二人の本物の人間だけだった。
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