第七十一話
魔書から創造した新たな仲間であるゼブルスを皆に紹介した蓮は、冒険者ギルドに足を運んでいた。
ゼブルスの冒険者登録と、パーティー登録をする為である。
ギルドに入った蓮はカウンターにいるマリナの姿を発見し、声をかける。
「マリナお姉ちゃん、こんにちは!」
「あら、レンくん。体調は良くなったのね。もうあまり無理しちゃだめよ?」
「あはは。ごめんね、心配かけちゃって。」
あの日、孤児院で起こった事件は緘口令が敷かれ、詳しい事情を知るのは領主アルバートをはじめとした数人である。
また、目を覚さない蓮の事は、大氾濫での疲れにより体調を崩していると伝えられていた。
「今日は依頼を受けに来たの?」
「ううん。今日はゼブルスの冒険者登録をお願いしたくてきたんだ。」
蓮の後ろに控えていたゼブルスは、ゆっくりと前に出てマリナに話しかける。
「わしがゼブルスじゃ。冒険者登録と、天魔の双翼への加入手続きをお願いしたいんじゃが、頼めるかのぉ?」
「あ、はい、かしこまりました。では、こちらの用紙に必要事項をお書きください。」
マリナはカウンターの上に登録用とパーティー申請用の用紙を取り出し記入を促した。
ゼブルスはスラスラと必要事項を書き込み、マリナに渡す。
「……はい、ご記入ありがとうございます。では、手続きをして参りますので、少しお待ちください。」
マリナは渡された用紙を確認し、奥の部屋へと入っていった。
少しして戻ってきたマリナは、カウンターの上に1枚のカードを置いた。
「こちらがゼブルス様のギルドカードでございます。そのカードに魔力を流していただくと登録が完了となります。」
「ふむふむ。」
ゼブルスはギルドカードを受け取り、魔力を流して登録を完了させた。
「冒険者に関する詳しい説明は必要でしょうか?」
「いやいや、詳しいことはルーに聞いておるから大丈夫じゃよ。」
「かしこまりました。パーティー登録も完了しておりますのでご安心ください。」
ゼブルスは懐にギルドカードをしまい、礼を言った。
冒険者ギルドでの用事が済んだ蓮達は、続いて鍛冶屋街へとやってきていた。
カンカンと槌を打つ音の中を進み、目的のヘパストル工房へと着いた蓮は扉を開けて中に入った。
「こんにちはー!あっ、ガルドンさん!」
「おう!レンの坊主か!」
蓮の声に気付いたガルドンは手に持っていた大きな箱を地面に置き、近寄ってきた。
「大氾濫では大活躍だったらしいな!馴染みの冒険者達がみんな口を揃えて言ってたぞ!」
「ルー達が頑張ってくれたからね。僕は戦えないから何もできなかったけど。」
自嘲するような苦笑いを浮かべ、言葉を返す蓮に、ガルドンは一瞬キョトンとして大声で笑い出した。
「ガッハッハッハッ!そりゃあルーたちの事も話題に上がっていたが、1番はお前さんの事だよ!何人もの冒険者の治療をしたんだってな!あの規模の大氾濫で死者が1人も出なかったのはお前さんのおかげだって皆が言ってるぞ!」
今回の大氾濫での死者数は0。
これは奇跡としか言いようの無い結果であり、それに大きく貢献した蓮を筆頭とした天魔の双翼は、今やイーラスの街で英雄と称えられる存在になっていた。
現在冒険者ギルド本部に報告に行っているジョセフが帰って来たら、Sランク昇格は確実だろうと言われている。
そんな話を聞いた蓮はポカンと口を開けて固まってしまった。
「知らぬは本人だけってか!ガッハッハッハッ!で、今日はどうした?」
ガルドンの問いかけにハッと意識を取り戻した蓮は、要件を伝える。
「そ、そうだ!家族が増えたから、このお揃いの外套を追加で作ってもらおうと思って!」
「わしはゼブルスじゃ。よろしく頼むのぉ、ガルドン殿。」
「おう、俺はガルドンだ!こっちこそよろしく頼むぜ!」
ゼブルスはガルドン握手を交わした所で蓮に向き直る。
「蓮や、お揃いの外套とは今羽織っておるそれの事かのぉ?」
「うん、そうだよ。みんなでお揃いなんだ!」
ふむ。と長い顎髭を擦りながら、じっくりと蓮の外套を見やるゼブルス。
蓮が何をしてるんだろうと首を傾げていると、少ししてゼブルスが口を開いた。
「それならば、態々作ってもらわんでも大丈夫じゃよ。……ほれ。」
ゼブルスの着ているフード付きローブが風を受けたようにふわりと揺れると、次の瞬間蓮の外套と同じ天使と悪魔の翼の紋様が背中に刻み込まれた。
「うわぁ……。」
「ほう?そのローブは魔道具か?」
「まぁ、そんなところじゃのぉ。」
すごいすごいと手を叩いて褒める蓮に、ゼブルスの優しい笑みも深まった。
ガルドンはゼブルスのローブを興味深そうに見ながら口を開いた。
「どうやら、俺達の仕事は無さそうだな。」
「あっ……ごめんね、ガルドンさん。仕事の邪魔しただけになっちゃった。」
「別に構いはしねえよ!英雄様に会えて嬉しいってもんだぜ!ガッハッハッハッ!」
ガルドンの揶揄うような発言に、蓮は恥ずかしそうに頬を染める。
「……こりゃぁ、世のショタコン共が黙ってねえな。ただでさえ綺麗な顔してんのによ。」
蓮の恥ずかしがる姿を見たガルドンはため息混じりにそう呟いた。




