37 ヴィネ様からの突然の告白
「私は、時々考える。我が一族がこの島に渡って来たことが、すべての……この血塗られた歴史の元凶だったのではないか、と。我々が渡って来なければ、もともとのこの島の住人たちは、平和に暮らすことができたのではないか、と」
苦しげな表情を浮かべて、自問自答するヴィネ様に対し、今度は、自信を持って答える。
「そんなことはありません! ロマリエル王家が、この島に渡って来ようと来なかろうと……遅かれ早かれ、聖カトミアル王国は、この島の存在を知ったことでしょう。そして、ロマリエル王家の存在がなかったとしても、何らかの言いがかりをつけて、聖カトミアル王国はこの島への侵略をはかったはずです!」
「そうだろうか……」
「はい。これだけは、自信を持って言えます。ヴィネ様の一族に咎はありません!」
「……ありがとう」
ヴィネ様は、立ち止まると、私の方へと身体を向ける。
「不思議だ……。私は、これまで、誰に対してもこんな悩みを口にしたことなどない。セパルにもだ。
しかし、そなたを前にすると……なぜか、自然とこのようなことを相談できる。これまで誰にも話したことなどなかったのに、不思議だ。やはり、そなたが持っている、前世の記憶と豊富な知識とやらが、そうさせるのだろうか」
「ありがたき幸せに存じます。そのようにおっしゃっていただけるなど……。望外の喜びです。どうか、何もかも一人で抱えこもうとしないでください、私の前世の知識で、どれだけのことができるかはわかりません。それでも、私は、できる限りの力で、ヴィネ陛下、あなたのことを助け、支えていきたいと思っているのです」
「それは、妃候補の話を正式に受けてくれる答えだと、そういう意味に受け取ってよいのか?」
「え?」
「私の隣に立って、この国を一緒に治めてくれる、という意味だと……そういう答えだと受け止めてよいのだろうか?」
トクンと、心臓がまた波立つ。
「あの……、妃候補とは……便宜上のものではなかったのですか? あの会議の場で、重臣たちをとりあえず納得させるための、便宜上ものでは……?」
「そなた、まさか、本気にしていなかったのか? 今の、今まで」
ヴィネ様が、一歩、私へと距離を詰める。
「どう言えばいい? ああ、どう言ったら、わかってくれるのだ? 私は、今までこんなことを習ったことがないぞ。帝王学の中には、こんな科目はなかったのだ。しかも、政略結婚の道しか、私には許されていないと思っていたのでな。ああ、騎士たちにでも聞いておくのだったな。貴婦人に対する愛の囁きとは、どのようにすべきなのか、と」
「あ、愛の囁き……!?」
思わず、声が裏返ってしまう。
「政治的には、私の結婚をこの小国を救うために使うのが得策であると、わかっている。重臣たちが言うことはもっともだと、頭では理解してはいるのだ。それでも、私は、そなたを諦めたくない」
「諦めたく……ない……?」
それは、言葉通りに受け止めていいのだろうか。
私が、ヴィネ様に求められているのだ、と。
「私も、この道には疎い方だと思うのだが、そなたも大概鈍いのだな。
その、つまり……、誰か他の者を正妃にして、そなたを側女にするというのでは嫌なのだ、私は。
『そなたを正妃にしたいと思っている』、そう言っているのだ」
「え……!?」
突然の、思いも寄らぬ告白に、心臓が激しく鼓動を打つのを通り越して、もう、息が止まってしまいそうだ。
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