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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します

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36 ねじ曲げられた歴史と、ヴィネ様の父王

「ふっ……やはり、そうか」


 ヴィネ様は、「わかっていた」というような諦めの感情と悲しみとがない交ぜになったような、複雑な歪んだ笑みを浮かべる。


「そして、その後も、アヴァロニア王国の魔族はたびたび叛乱を起こすので、聖カトミアル王国は、創造主ファシシュの名の下に聖戦を行うしかなかった……というのが、聖カトミアル王国側の正史です」


 私も唇を噛みながら、そう伝える。

 もちろん、私はわかっている。

 ロマリエル王家が、そんなひどいことなどするわけがない。

 これは、聖カトミアル王国が“聖戦”を仕掛けるためにでっちあげた作り話、ただの言いがかりだ。


「聖カトミアル王国の人々は、それを信じているのか?」

「……はい。残念ながら……」

「そなたが前世で暮らしていたという、ここよりも文明が進んでいた世界……、そこなら、こんなことは起きぬのであろうな?」


 私は、前世の記憶をたぐり寄せる。

 前世の世界で習った歴史。

 数々の戦争には、大抵、何らかの“大義名分”が付けられていた。

 しかし、その大義名分など怪しいものだ。


 前世で暮らしていた日本という国でも、古代から近代まで、何度も国内で戦が行われてきたが、「勝てば官軍」という言葉があるぐらいで、正しい歴史が伝えられていたかどうかは怪しいものだと思う。


 たとえば、古代の東北、坂上田村麻呂に滅ぼされた阿弖流為(あてるい)は、本当に滅ぼされねばならぬような逆賊だったのか。

 戦国時代、関ヶ原の戦いと大坂の陣に東軍が勝利することよって、徳川が戦のない太平の世をもたらしたと言われている。しかし、その太平の世は、徳川幕府でなければ作れないものだったのか。

 そして、幕末。

 その徳川幕府を倒した薩長や官軍に、本当に正義はあったのか。

 勝った側の論理で次々に正史が塗り替えられていくのだから、庶民には、歴史の真実などわからないのだ。


「いえ、前世で暮らしていた世界も、この世界と同じです。勝者によって、歴史というのは簡単に塗り替えられてしまうものなのです」

「そうか……どの世界でも同じなのか……」


 ヴィネ様は、口惜しそうに拳を握りしめる。


 そして、一拍おいて、昔のことを訥々と語り始めた。


「実は、……私の父は、聖カトミアル王国との戦で命を落としている。“聖戦”という名の侵略戦争によって。

 私の父もまた、ファシシュ教への改宗を迫られたのだ。この、アヴァロニア王国の国教を、ファシシュ教にするように、と。そして、エルフやドワーフ、獣人たちは、この領土から追い出すようにと言われた。父は、当然、そんな条件は呑めぬと答えた。


『彼らは、我が国民であり、大事な仲間だ。そもそも、この国の先住民族である、彼らを追い出すことなどできぬ』


 父がそう答え、しばらくすると、我が国に大軍が押し寄せて来た。異教徒を成敗するのだと言って……。

 その戦で、父は討ち死にしたのだ」

「……」


 どう言葉を掛けていいのかわからない。

 ただ、神妙な顔で頷くことしかできなかった。


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