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【第一部完結】魔女として断罪された悪役令嬢は婚約破棄されたので魔王の妃として溺愛されることを目指します  作者: 中臣悠月
第四章 魔王の国を改革するための第一歩! 採用試験で自由に職業選択できる世界を目指します

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34 ヴィネ様と、夕刻の庭園で

 ポートンドリー城は、要塞としての役割を色濃く表した城である。

 貴族の住むきらびやかな居館という風情はない。

 強固な城壁を持つ、一大軍事拠点だ。


 ポートンドリーの港は、アヴァロニア王国の中でも最東南に位置している。

 メーヌ海峡を挟んだ向こう岸は、ローテルン大陸だ。

 肉眼でも十分に確認できるほど近くに迫る対岸までは、手漕ぎの船でも半日もあれば着くことができるだろう。

 つまり、戦になれば、この城が最前線となる要衝である、ということを意味している。


 そんな位置的な意味合いもあってか、あるいはボーウェン伯の質素な性格を反映してか、この城にはあまり華美な装飾は施されておらず、庭園にも最低限のものしか植えられていない。

 厨房から出てすぐの中庭には、実用性を重視したハーブ園と果樹園があり、そこに形ばかり、観葉植物も植えられているのだ。

 万が一の事態に備える意味もあり、現在、庭園の大半は、秋植えのジャガイモが占有している。

 その周囲に、植えられたヘリオトロープが紫色の小さな花を咲かせていた。


 中庭へ足を踏み入れると、紫の小花の咲き乱れる中、ヴィネ様がベルクを従えて立っている背中が目に入る。

 ヘリオトロープの紫色と、ヴィネ様の青い髪がマッチして、なんとも美しい一幅の絵画のようだ。


「陛下……!」


 私の声にヴィネ様がゆっくりと振り返る。


「……!?」


 私は、思わず言葉を失う。

 その顔には、仮面が付けられていなかった。


「仮面が……!」


「ああ。そろそろ、いいだろう。妃候補殿の前では、な」


 そう言って、ヴィネ様は柔らかな笑みを浮かべる。

 その笑顔に、思わず心臓を鷲掴みにされた。

 キュンどころか、ズキュンくらいの激しい勢いで、心臓を射貫かれる。


「は、はい……」


「ベルク、少し席を外してくれないか。メイヴも。エレインと二人だけで話をしたい」

「かしこまりました」


 二人は、そう言って、私たちの傍から素早く辞去する。


 庭園には、私とヴィネ様の二人だけが残された。

 もう、呼吸困難を起こしてしまいそうだ。

 息を吸うのを忘れて、一瞬、気が遠くなってしまう。


「どうしたのだ? 顔が真っ赤だぞ。大丈夫か?」

「……はい、大丈夫です」

「少し、そなたと話をしたくてな。いろいろと、昔話をしてみたくなった。私の昔話を聞いてくれるか?」

「はい、もちろん」

「では、歩きながら話そう」

「はい」


 ヴィネ様は、ゆっくりと歩き出す。

 私も、ヴィネ様にエスコートされるように、その隣をゆっくりと歩き始めた。



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