30 さあ、難民救出作戦を始めましょう 1
翌日、私たちはメーヌ海峡に臨む港町、ポートンドリーへと向かった。
聖カトミアル王国から到着する、難民を乗せた船を受け入れるためだ。
「また一艘、着きました。あれは、タヴィルク港からの船だそうです」
今日、到着する船のスケジュールが書かれた紙を手にしたベルクが、接岸される船を指さしながら言う。
「行きましょう。メイヴは怪我人の手当の準備をしてね」
「はい、かしこまりました」
船は、何の変哲もないごく普通の、小ぶりのカラック船である。ふだんは荷物の輸送に使われている貿易船だ。
ただ、今日はその積荷の中に、物品ではなく“人間”が混じっているかもしれないという点だけが、いつもとは異なる。
「運び出せ」
商人に身をやつしたゴヴァンが、人足たちに指示を出す。
人足たちは次々と、船底から荷を運び出し、港に備えられた蔵の中へと入れて行く。
荷をすべて運び込んでから、念のため蔵の扉を閉めると、人足たちは釘で閉じられた荷物の箱を開け始めた。
すべての箱を、今すぐに開ける必要はない。
率先して開けるべきは、箱の横や上部に、空気穴が開けられている箱だ。
茶や砂糖の入った荷であれば、空気穴は開けられていない。
空気穴が空けられているのは、人が入っている証拠だ。
「もう、大丈夫だぞ。ここは、アヴァロニア王国だ」
箱の中に入れられた難民を安心させるため、人足たちは声を掛けながら箱を開ける。
「た、助かった……? 助かったのか……ありがたい……!」
「どうも、ありがとうございます……」
箱の中からは、安堵の声が漏れ聞こえて来る。
しかし、中には、声を上げられないほど、怪我を負って弱った者もいる。
「救護班、お願いします!」
そう、声がかけられると、待機していた医師や薬師たちが、その箱の元へと走って向かった。
応急処置用に準備した薬草の入れられた盥を手に、メイヴも走る。
「それでは、ご自分で歩ける皆さんは、この蔵の裏口から出て、荷馬車に乗ってください。まずは落ち着ける場所へとご案内します。食事もそちらでご用意しておりますが、まずは、荷馬車の中でも食べられるように、携行食もそこのテーブルにご用意しています。遠慮なくこちらもお持ちくださいませ!」
私は、テーブルに置かれたサンドイッチやホットドッグを指し示しながら、蔵の裏口へと、人々を案内する。
「そんな、食べ物までいただけるんですか……ありがたい」
「至れり尽くせりですね。感謝します」
難民たちは、涙を浮かべながら、裏口へと向かった。
人間のほか、一見してエルフや獣人の血が混じっているとわかる外見の者たちも多い。
彼らはこれまで、聖カトミアル王国でさぞかしひどい仕打ちを受けてきたのだろう。
「宿で、しばらくゆっくりしていただいたら、皆様の適性に合わせて、お仕事のご案内もしていますので、そちらもご利用いたただければと思います!」
「何と、仕事まで斡旋してくれるんですか?」
「噂は本当だったのか……。酒場で聞いた噂話など、眉唾だと思ってはいたが……。一縷の望みを掛けて、この国に渡って来てよかった……」
皆、安堵の声を上げた。
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