28 魔王討伐包囲網、着々と準備中ですか? 1
「それと、もうひとつ、深刻な事態が起きています」
「何だ?」
カーラは深刻そうな表情を浮かべながら、ヴィネ陛下への報告を続ける。
「異端審問が始まって以来、聖堂騎士団の侵攻や異端審問を恐れ、ファシシュ教を信仰していなかった周辺の小国も、宗旨変えをしているのでございます」
「なるほど……つまりは、『魔王を倒せ』という、我が国に対する包囲網ができあがっていると見えるな」
「はい、おっしゃる通りにございます。聖カトミアル王国を中心に、強大なファシシュ教連合ができあがりつつあり、聖戦の気運も高まりつつあるように見えます。聖女たちの一行は、ローテルン大陸のあちこちに出掛けては、魔物討伐を繰り広げ、確実に信者を増やしています。
しかし、私にはどうもおかしいと感じられて仕方がありません。なぜ、これまで洞窟や森の奥にしか存在しなかった魔物たちが、村や町のすぐ近くに、現れるようになったのか」
そうなのだ。
これまで、魔物たちは人の住んでいるところには現れなかった。
洞窟や森、深海など、人がふだんは分け入って行かないような場所に生息していたはずのだ。
それが最近では、人里近くまで現れる。
前世で暮らしていた日本という国でも、山に住んでいる野生の動物たちが人里に降りて来て、人間を襲うという事件が時々起きていたように思う。
しかし、それは、人間の側が自然を破壊し、彼ら野生動物の住む場所を奪ったからだ。
今のところ、この世界ではそのような自然破壊は行われてはいない。
では、なぜ、魔物たちは急に人里近くに出没するようになったのだ?
魔物に襲われた時、私も疑問に感じたことを、カーラは口にする。
「――召喚魔法か」
「おそらく。召喚魔法を行える術者が、魔物を呼び出し、聖女たちが討伐するという芝居を打つ……、三文芝居があちこちで行われているようにございます」
完全なマッチポンプだ。
しかし、仕組みのわからない民たちは、魔物や異端審問の恐怖から逃れるため、教会にすがるしかないだろう。
お気軽に評価やご感想をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。





