19 医師への誓い。必ず仲間たちを救います!
ジャンやヴァレリーが、何かよからぬ企みを持っているのなら、何としてでもそれを阻止したい。
私は拳を強く握りしめる。
そんな、私の思いを読み取ったかのように、ヴィネ様は医師に語りかけていた。
「これからのことは我々に任せてひとまず休め。今後の始末については、我々が考えよう。
ベルク、この者の傷がよくなるまでの間、滞在できるような部屋を準備してやってくれ」
「はい、かしこまりました」
「試験は、傷がよくなってからゆっくり受けてくれればよい」
「あ、ありがたき幸せにございます……」
「医術による手当てを行ったゆえ、不要かもしれぬが、念のため私からも回復魔法もかけておく」
ヴィネ様が呪文を唱えると、男のもとに天から眩い光が降り注いだ。
「さあ、メイヴの煎じた薬も飲むとよい」
「ありがとうございます」
苦しそうにあえいでいた男の頬にすこしばかり赤身が戻る。男は、嬉しそうに表情をほころばせた。
「おそらく、そなた、医学については最新の知識を持っていそうであるな。伝染病の仕組みを、理解しているような口ぶりであった」
「私の推測が正しいかどうかはわかりませぬが……」
謙遜する男に、私は断言する。
「いいえ、正しいわ。この世界には回復魔法が存在するから、確かに魔法で多くの怪我や病気も癒せるかもしれません。現に今も、陛下の回復魔法により、あなたは楽になったように見えます。
しかし、病気になってから回復するより、病気にならないことを目指した方が効率的だと思います。ですから、予防法を皆に教えたあなたは正しいと私は思っています。具合が悪くなるのを未然に防げる手立てがあるならば、防いだ方が得策というものでしょう。
回復魔法の使い手がどれだけいるのか、詳しくはわからないけれど……。たとえば、国中の人が病にかかったら、どうすればいいんですの? 回復魔法の使い手まで、病に倒れたらどうするのです? そうならないために、あなたは予防を皆に働きかけてくださっていたのでしょう?
それを阻止する権利は誰にもないはずよ。なぜ、それが異端なのか、私にはわからないわ」
「エ、エレイン様……そうなのです……、でも、誰も理解してくれなかった……」
男の目には涙が滲んでいる。
私は、手当の邪魔にならない場所に跪くと、男の手を握った。
「あなたには、是非、この国で医学の研究をしていただきたいですわ。あ、もちろん、試験を受けていただいてから、ということにはなりますけれども」
他の者の手前、急いで試験のことを言い添えたが、先ほどまでの会話とステータス画面の確認だけで十分だった。ステータス画面に見える、この者のずば抜けた知性であれば、十分に医学の進歩への貢献が期待できる。
「あ、ありがとうございます……エレイン様。申し遅れましたが、……私は、モーリス・ルニャールと申します」
「モーリス先生ですね。よろしく頼みます」
「はい、エレイン様」
「私からも、よろしく頼みたい。そして、先ほどのそなたの願いについても承った。大陸に残る、そなたの仲間たちを救う手立てを皆と相談して考えてみよう」
「あ……ありがとうございます! 噂は、本当だったのですね……アヴァロニア王国の国王陛下は……民の味方だと……ここまで来てよかった……」
モーリスの頬を、一筋の涙が伝う。
「そこまで大げさなものではない。ただ、そなたの話から、大変なことが起きているのがよくわかった。迫害され苦しんでいる民がどこかにいて、国外からでも何か手を差し伸べられるのであれば、君主としてできることをするまでだ。それが、国を治める者の務めであるというだけのことよ。できるだけ早く、迫害を受ける前に、亡命できるように手助けをしたいと思う」
「あ、ありがとう……ございます……」
男は歓喜のあまり、嗚咽した。
お気軽に評価やご感想をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。





