5 インフルエンサーにだって、薬師にだってなれるのです
「他にも、ハーブを使って、女性に喜ばれるいろいろなグッズが作れると思うのよ。香水だったり、ポプリだったり。これらをメイヴのオリジナルブランドとして、売り出してみてはどう?」
「私のブランドとして? 売り出す……のですか……? どなたかの下で働くのではなく、私が、『売り出す』のでございますか? しかし、一介の庶民が、商会の許可もなくそのような商売を始められないのではないでしょうか?」
「それをこれから変えていこうと思っているのよ。これからは、誰でも商売を始めたい人が、自由に始められるような世の中に変えていきたいの。
法の整備や商会との話し合いはこれからだから、もちろんすぐ明日から始められる、というわけではないのだけれど」
私は、昼間、ヴィネ様やセパルに話した、楽市楽座的な新しいビジネスモデルの話をメイヴにも簡単に説明した。
「準備が整ったら、すぐに知らせるわ。メイヴはとても綺麗だし、宮廷の侍女でもあるし、インフルエンサーにも最適よね」
「“インフルエンサー”……ですか?」
「流行を作り出す人のことよ」
とはいえ、SNSや動画配信サービスがないこの時代、前世の世界のように一気にバズらせるのは大変かもしれない。
スピードは遅くとも、社交界を利用して、口伝てに広めていくことになるだろう。
「そして、国内である程度、流行らせることができたら、国外にも輸出するのよ。どうかしら?」
「話が壮大過ぎて、きちんと理解できていない部分はあるかもしれないですが、もしできるならやってみたいです」
メイヴは、興味津々といった様子で、目を輝かせている。
「それと、ハーブは薬としても使えるのかしら?」
「ええ、喉が痛い時に飲むとよいハーブティー、胃が重い時に飲むとよいハーブティーなど、効能はいろいろとありますので、症状に合わせてお出しすることはできるかと思います」
「それもいいわね。是非、極めていってもらいたいわ」
医学や薬学が圧倒的に遅れているこの世界、この分野の研究と発展も必要だろう。
現在は回復魔法だけで、カバーしているような状況だ。他国より魔術を使える者が多いアヴァロニア王国ではあるが、それでもすべての者が回復魔法を使えるわけではない。
医学を進歩させておくに越したことはない。
とはいえ、この世界で、いきなり化学的な薬剤を調合することは困難なはずだ。まずは天然の成分を由来としたハーブや漢方薬から徐々に研究を進めていくのが現実的だろう。
メイヴにはいずれ、研究機関として大学が機能し始めた時、薬学の研究チームに加わってもらってもいいかもしれない。
「メイヴには、ハーブの知識を活かして、薬師になるという道もあるかもしれないわね」
「そんなこともできるのですか!?」
「もちろんよ。皆にやりたい仕事をやってもらうことで、経済を回していきたいと考えているの」
「それは、夢が広がりますね。たとえば、女の身で兵になることもできますか?」
「え、メイヴが?」
突然、話が飛躍したので、私は驚いて問い返す。
「いえ、私ではありません。私の姉なのですが、実は弓の名手なのです。とはいえ、女の身なので、たまに狩りの場でその特技を発揮する程度だと聞いています」
「それは、是非、採用試験が始まったら受けてもらいたいものね」
「女でも受けられるのですか?」
「ええ、そうするつもりよ」
「姉に伝えておきます!」
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