3 メイヴブランドの化粧品シリーズを作りませんか? 1
「ハーブ……それは、素敵ね。このハーブティーもとても美味しいもの。たとえば、ハーブティー以外にどのようにハーブを使っているの? 何か作ったりしているのかしら」
「そうですね、ハーブを煎じたり、浸したりした液体を使って、髪や肌の手入れをしています」
「それって……化粧水のことかしら?」
「自己流なので、特に名前は付けてはおりませんが……」
「できれば実物を見てみたいわ」
「では、すぐにお持ちいたします。自室に、ふだん使っているものがございますから。しばらくお待ちいただけますか?」
「ええ」
5分ほどすると、メイヴは洗面に使う盥のような容器を持って戻って来た。
盥には、爽やかな香りのする液体が注がれている。
これが、ハーブを煎じた液体なのだろう。液体自体は、ほのかな褐色で、盥の底には、カモミールの花びらが沈んでいた。
カモミールと共に沈んでいる細長い葉と茎は、ローズマリーだろうか。
香りづけのためか、液体の表面には、新鮮な花びらもいくつか浮かんでいる。
独特の香りがする紫の小さな花は、おそらくラベンダーだ。
形が崩れていないので、カモミールのように火を通したわけではないのだろう。
「つけてみてもいいかしら?」
「どうぞ。この液に浸した布を肌にしばらく置いておくと、お肌がしっとりいたします」
メイヴは、盥と共に持って来た小さく切った布をハーブ液に浸すと、私の頬に貼り付けてくれた。
「マスクね。確かにしっとりするわ。香りもいいわね」
「“マスク”というのですか?」
前世では、マスクやローションパックと呼ばれていた。
布ではなく、紙にローションが浸され、あらかじめ個包装されたもので、女子に人気だったような記憶がある。
もちろん、自身でこのようにコットンに化粧水を含ませてパックをしていた人たちもいたと思う。
が、私自身が使っていたのは、あらかじめローションパックとして製品化されていたものである。その方が簡単だったからだ。
「これは、気持ちいいわね。気に入ったわ」
「どうもありがとうございます」
メイヴは嬉しそうに微笑んだ。
前世の私は、ゲーマーでもっぱら部屋に引き籠もって一人でゲームをプレイすることが多かったため、友人たちと共にコスメやファッションを楽しむという女子らしい嗜みを経験する機会がなかった。
しかし、人並みに女子としての経験値を積んでいたら、友人たちと一緒にいろいろなコスメを試しながらおしゃべりをするなんていう女子会を楽しむこともできたかもしれない。
私には無縁だったが、それこそ、みんなでローションパックをしながら、恋話に花を咲かせるなんてことを楽しむ女子たちも多かったのではないだろうか。
もちろん、メイヴは、今、ただ侍女として純粋に私の世話をしてくれているだけだろう。
ただ、「メイヴがもしも友人だったら」と妄想すると、まるで今まさに女子会か何かを一緒に楽しんでいるような気分になってくる。
前世ではできなかったことを、今になって経験しているようだ。
「なんだか、楽しくなってきたわ」
初めての体験に、思わず私も口元がほころぶ。
「こういったものを使っているから、メイヴは肌や髪がとても綺麗なのね」
「季節によって、使えないものもあるのですが……、今は夏場で、花も豊富に咲いているので、いろいろなハーブ液を作ることができます。冬場に向けては、これらを乾燥させてドライハーブを作っておきます」
「なるほど、よく考えているのね。あ、ちなみにメイヴは今、何歳かしら?」
「18歳にございます」
現在の私=エレインよりは3歳上になるが、前世で30年以上生きていた記憶があるため、自分よりかなり年下にも感じられる。
なんだか不思議な感覚である。
「若くて、みんなが憧れるような美人が、自ら作った化粧品を、その美容の秘訣と共に発信。うん、いいわね、これは使えるかもしれないわ」
「使える……、と申しますと?」
「これが、ビジネスになるかもしれない、ということよ」
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