2 メイヴのやりたいことは何ですか?
部屋の中に招き入れると、メイヴは私の机の隅にハーブティーの注がれたカップを置く。
「エレイン様、本日はお疲れになられたのではないでしょうか? 少しでもお疲れを癒していただければと思いまして、ハーブティーをお持ちいたしました」
「どうもありがとう」
カモミールティーの、心を安らげる柔らかな香りが鼻孔をくすぐった。
(う~ん、ハーブは結構豊富にあるのに、紅茶やコーヒー、カカオはまだ輸入されていないのね……。この世界の作物は、前世の世界とほぼ同じ。
世界設定をする時に、RPGではないから、きっとプランナーが手を抜いたのね。RPGだったら、独自の名前が付いた植物がたくさんあって、採集をするなんてクエストも用意されているけれど、乙女ゲームではそんなクエスト不要だもの。考えるのが面倒で、そのまま自分たちの世界の植物を、この世界のものとしてスライドさせただけなのだわ。
だとしたら、紅茶やコーヒーもこの世界の暖かい地域には生育しているはずよね。貿易が軌道に乗り出したら、これらも輸入したいわ)
ハーブティーを口に含むと、リンゴにも似た甘いカモミールの香りに、心が癒される。
メイヴに言われて、あらためて振り返ってみる。今日はたった一日のうちにいろいろなことがあった。
確かに、身体は心地よい疲労を感じている。
「美味しいわ、メイヴ。どうもありがとう」
「とんでもございません。こちちらこそ、エレイン様が持って来てくださったジャガイモ……フライドポテトというものを、夕食に初めていただきましたが、とても美味しかったです。他の侍女たちも、皆、喜んでいただいておりました」
メイヴが笑顔で応じる。
「お口に合ったみたいでよかったわ、安心したわ」
「エレイン様、差し出がましいことを申すようですが、まだお休みにならないのですか? この後もお仕事を続けられるのでしたら、お夜食でもお持ちいたしましょうか?」
「ああ、ごめんなさい。私が起きているとメイヴも休めないわよね。あと、もう少しだけ……キリのいいところまで進めたら、休むことにするわ」
「いえいえ、そうではありません! 決して、そのようなつもりで申し上げたわけではないのです。そのように気を遣ってくださらなくても……!」
「いえ、気遣わなければいけないところだったわ。誰でも休む時間は必要よね。ところで、メイヴは侍女以外の仕事で何かやってみたいことはないの?」
メイヴは私の言葉を勘違いしてしまったようで、急に真剣な顔で詫び始める。
「侍女以外の仕事で……? も、申し訳ございません! 私、何か失礼をいたしましたでしょうか……。私で行き届かないところがあれば、すぐに他の者と代わらせていただきます!」
「いえいえ、違うわ! ごめんなさい、勘違いさせてしまったわね。農村でも、ヴィネ陛下が皆にやりたい仕事がないかどうか、聞いていたのよ。今までは、自分で就きたい仕事を選んで就くということができなかったでしょう? それを変えていきたいと思っているの。だから、参考までに何かやりたい仕事がないかどうかを聞いてみたの」
メイヴが安堵の表情を浮かべた。
「そういうことでしたか……。そうですね、私は貴族でもないのに、このように首都のカーコードウィ城で侍女として働かせていただいています。それは、とてもありがたいことで感謝しております。私は、とても恵まれた境遇にあると思うのです」
「ええ、でももし何か他の職に就いていいと言ったら、どうするかしら?」
「……そうですね。考えたことなどありませんでしたが……、私はハーブを扱うのが得意なので、ハーブに関することを仕事にできたら嬉しいと思うのです」
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