33 セパルに笑われてしまいました
ヴィネ陛下の英断により、さっそく私の提案は採用されることとなった。
ひとまず決まったのは、寺子屋のような義務教育の場を設けること、身分に関係なく好きな職に就ける採用試験を始めること、保育所を作ること、この三つだ。
王家が費用を出してくれるということは、すべて王立ということになる。雇用も、まずは王宮周りの職から募集するということになるだろう。
私は、セパルと共にこれらの準備にあたることとなった。
また、もうひとつ、ヴィネ様がすぐにも始めたいと言ってくれたのが、ジャガイモの栽培だ。
北の大地を開墾するための人材、各城塞都市でジャガイモを栽培する人材については、今回、新たに雇用することとなった。
「ジャガイモについてご説明するにあたって、王宮の皆様にもジャガイモを実際に召し上がっていただいた方がよろしいのではないでしょうか? セパル様でさえ、“悪魔の果実”だと思っておられたのでしょう。毒だと思い込んでいらっしゃる方々に、まずは安全で美味しい食べ物なのだということを、わかっていただかなくてはならないのではないでしょうか」
「そうだな。では、セパルの荘園にあるジャガイモを少しもらって帰ってもよいだろうか?」
「ええ、もちろんかまいません。昨日まで捨てるつもりでいたものです。どうぞ、好きなだけお持ちくださいませ」
「では、遠慮なくいただいて行くぞ」
ヴィネ様は、マントをはずしたかと思うと、それをまるで風呂敷のように使って無造作にジャガイモを包む。
「私はジャガイモを持って一足先に城へ戻っておる。ベルクに伝え、今宵の夕食用に先ほどのフライドポテトを作らせてみよう。持てなかった分は、そなたたちが持って帰って来てくれ」
「かしこまりました」
「では、参るぞ」
言い終わった途端、その場からヴィネ様の姿は、跡形もなく消えていた。
「あ、ヴィネ陛下……待っ……」
帰りも一緒に馬車で帰れるのではないかと期待していた私は、肩透かしをしてくらって、思わず何もない空間に向かって、手を伸ばし、呼びかけてしまった。
私は、よほど落胆した顔を見せていたのだろうか。
「エレイン様は、本当に陛下のことがお好きなのですね」
と、セパルが笑っている。
「え? あ、はい……、お慕い申し上げております」
「そうですか。いえ、不思議だなと思いましてね」
「不思議ですか?」
「エレイン様は我が国を訪れるのは初めてでいらっしゃいますでしょう? 陛下は、あのように気さくな上に名君でいらっしゃいますから、我が国では貴族からも庶民からも、とても慕われている方なのです。我が国の者であれば、陛下に片思いしている女性も多いことでしょうね。陛下のことを好いていても、何ら不思議はありません。
しかし、エレイン様は、敵国とも言える聖カトミアル王国のお方です。たとえ、噂で陛下のことを耳にしたにしても、敵国の君主の美点など普通は信用しないでしょう。陛下の真の魅力について、理解などされていないと思っていたのですよ。
だから、私も陛下と同じく、エレイン様が『妃にして欲しい』と言い出した時には、何か魂胆があって言っていると思っていたのです」
「魂胆……ですか?」
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