25 そしてまた魔女扱いですか? 2
一方で、男は、引っ込みがつかなくなったのか、往生際悪く、小声でモゴモゴと反論を続けようとしている。
「し、しかし……しかしですね、陛下……」
男が言葉を続けるより前に、ヴィネ様は、口の中で何か素早く呪文を唱えたかと思うと、右の人差し指を天へと向けた。
途端に、男の真上にのみ突然黒い雲がかかったかと思うと、激しい音と共に、男の周囲にだけ超局地的ゲリラ豪雨が降りかかる。
「う、うわぁぁぁっ! な、なんだ、これはっ!!」
ヴィネ様がパチンと指先を鳴らすと共に、黒い雲は消え失せ、何事も無かったかのように雨も止む。
後に残されたのは、キョトンとした表情を浮かべたずぶ濡れの男と、水溜まりだけだ。
雲が一瞬で消え去った上空には、先ほどと変わらぬ青空が広がり、夏の日差しが男を照らしていた。
「エレインは、魔力を持たぬただの人間だが、そんなに魔力を持つ者を蔑みたいのなら、私のことも『魔王』とでも呼んで、蔑むがよい」
「ぐ……」
ヴィネ様は、再び何かの呪文を唱えると、まずは空中に両手を大きく掲げた後、男に向けてその手を突き出した。
ヴィネ様の手の動きに合わせて、今度は突風が男に吹き付ける。
まるで天然の扇風機かドライヤーだ。
強風によって、ずぶ濡れだった男の衣服はみるみるうちに乾いていく。
「ふ……。魔力は、怖いか? 使い方によっては、このように便利なものなのだがな。いくら夏とは言え、濡れたままでは身体が冷えるであろう。サービスで乾かしておいてやる」
男は、ヴィネ陛下の迫力に押され、さすがに反論できずにいる。
しかし、先ほどとは異なり、魔力を目の当たりにした恐怖も混じり合ったような複雑な表情を浮かべていた。その顔を見る限りでは、完全に納得してはいないようだ。
事はもうジャガイモどうこうという問題だけに収まらなくなってきているような気はする。
しかし、ここまでされても納得できないような男に信用してもらうには、やはり、即席ホットドッグを作った時のように、実際にジャガイモを食べてもらうよう仕向けるしかないのではないか。
私はおずおずと口を開く。
「あの……そんなに私の言うことをお疑いなら、私がジャガイモの毒を取った上で調理してみましょうか? もちろん、最初の毒味は私がします。それで、なんともないということがわかったら、皆さんもお召し上がりください。それでいかがですか? 陛下、どうでしょうか?」
「うむ、そうだな」
ヴィネ様は、満足そうな笑顔を浮かべながら頷いた。
「やってみるがよい。そなたが食べて大丈夫だと言うなら、私は、そのジャガイモとやらを食べてやるぞ。皆も私が食べたなら、ジャガイモを食べてみるな?」
民たちは、ただただ頷くしかなかった。
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