12 ヴィネ陛下が現れた!?
突然、私のすぐ右隣からヴィネ様の美声が聞こえてくる。
「えっ……、あっ、ちょっ……!?」
ヴィネ様の美声に耳朶をくすぐられ、思わず腰がくだけそうになる。
馬車の中で腰掛けていた状態だったからなんとか姿勢を保つことができたが、もし立った状態だったなら、全身の力が抜けてその場にヘナヘナとしゃがみ込んでしまったことだろう。
馬車の中という狭い空間で、すぐ隣にヴィネ様が密着して座っていらっしゃるものだから、思わず動揺して変な声が出てしまった。
「……へ、陛下!! どうやって、ここに……いらっしゃったのですか?」
深呼吸して、気持ちを落ち着けながら、なんとか問いかける。
「空間移動の魔術を使ったのだが? 執務の手が空いたので、こちらに来てみた」
ヴィネ様は、何ということもない様子で、平然と答えた。
一方の私は、心臓が口から飛び出しそうである。
推しがすぐ隣に、肩と肩が密着した状態で座っているのだ。
体温が感じられる距離で。
「エレイン、そなたの話に興味があったのでな。使用人たちの仕事が楽になる便利な道具の提案をしたと、ベルクから聞いて興味を覚えた。ホットドッグとやらも、食べてきたぞ。あれは、美味な上に、忙しい時は便利なメニューだな。おかげで、ここに来る時間も取ることができた」
「あ、ありがとうございます」
「正直、他の世界から転生して来たなどという与太話、話半分に聞いていたのだがな。セパル、ここまで何か収穫はあったか? 我が国を豊かにするような、政策に関する提案はあったのか?」
「ええ。私も陛下同様、エレイン様が転生されて来たというお話、正直、疑っておりました。しかし、先ほどからエレイン様が提案されるお話は、我々では想像もつかないものばかりで……。生まれ持った血筋に関係なく、適性に合った職業に就くように社会を変えるなど……、思いも寄らぬことです」
セパルは、先ほど私が説明したことを、かいつまんでヴィネ様に説明してくれた。
セパルにとっては、荒唐無稽な提案ばかりだったはずなのに、しっかりと理解をした上で、ヴィネ様に伝えてくれているのは、さすがである。
「なるほど……。まず皆に等しく“教育”というものをするのか。“学校”という場を作るのだな」
そして、ヴィネ様の理解力と順応力もさすがである。
聖カトミアル王国の頭の硬い政治家たちだったら、こうはいかないだろう。
「ええ。そして、ゆくゆくは、専門的な高等教育を行う場でありながら研究機関ともなる場を設けたいと思うのです。“大学”という施設なのですが。ただ、雇用にしても、教育にしても、財源確保をどうするか、ですね」
お気軽に評価やご感想をいただければ幸いです。よろしくお願いいたします。





