1 謁見の翌朝です
「失礼いたします、エレイン様。起きていらっしゃいますか?」
部屋の外から女性の声がする。
ヴィネ陛下に謁見した後、客間を与えられた私は、旅の疲れと極度の緊張から解放されたこともあり、早々に寝床についた。
安宿の粗末な寝台で就寝する日々が続いていた身にとって、久々に味わうフカフカのマットレスは心地よく、すっかり熟睡してしまっていたようだ。
「はい、どうぞ」
扉の外に声を掛けつつ、眠い目をこすっていると、朝の身支度用の盥を持った侍女が部屋の中へと入って来た。昨日、身支度を整えるのを手伝ってくれたハーフエルフの美少女だ。
「おはよう……ええと、名前をまだ聞いていなかったわよね」
「メイヴと申します。しばらくの間、この城に滞在されることになられたと伺いました。その間、エレイン様の身の回りのお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします」
「こちらこそ、あらためてよろしくね、メイヴ」
「それから……身支度が終わったら、キッチンまで来るように、と。陛下の小姓のベルク様から申しつかりました」
「キッチンへ? わかったわ、ありがとう」
昨日、大広間では姿を見かけなかったと思うがベルクと言えば、『聖なる乙女と光の騎士のマリアージュ』のプレイヤーの中でも人気のあるキャラの一人だ。
確か、年齢は15歳。見た目はとてもかわらしい半獣の少年だ。オオカミとのハーフで、緑の髪の間からピョコンと飛び出た耳とフサフサの尻尾がトレードマーク。
時に、オオカミにも変身するが、その姿は猛々しい野獣というよりも、大型犬に近い。愛くるしいモフモフキャラだ。
そんなかわいらしい外見に反し、性格は年齢よりもずっと大人びていて優秀だ。
ヴィネ様の周りには複数の小姓たちが仕えているが、その中でもとりわけ気が利くベルクは、小姓頭的存在である。
他の小姓たちをまとめながら、ヴィネ様のお世話の一切を取り仕切っている。将来の執事候補といったところだろうか。
特に、ショタ好きには絶大な人気を誇るキャラである。
しかし、ヴィネ様と同様、プレイヤーには攻略する術がない。
「そういえば、メイヴはハーフエルフだし、この城の従者には、人間以外の種族も多いのね」
昨日、城内に入ってから気付いたのだが、侍女や従者、衛兵に人間以外の種族が目立つような気がするのだ。
聖カトミアル王国で見ていた風景とは、随分、違うと感じていた。
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