予言が君を殺すまで・5
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「颯真!とりあえずアカウント作ってみた!」
雫は帰ってきた颯真に「おかえり」の言葉もかけずに、
その姿をみつけるなり、嬉しそうにわざわざ予言をするためだけに作ったSNSの新しいアカウントを見せてきた。
午前中謎のアプリや雫の予言者になる発言に振り回されたのち、バイトが入っていた颯真は一度家を出た。
バイト中、雫と離れて冷静になったおかげで、
颯真はいろいろ考えなおし、帰宅後もう一度雫を説得しなおそうと考えていた。
しかし帰宅した今、嬉しそうな雫に水を差すようなことは言えなかった。
”雫に嫌われるくらいなら好きにさせたほうがいい。
…何かあれば俺が守ればいいし”
そう思いながら、颯真は嬉しそうな雫の頭を撫でて「よかったな」と声をかけた。
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「スマホはおかしなことなかったか」
帰ってきて先に風呂を済ませた颯真は、ダイニングで颯真の夕ご飯を並べてくれていた雫の後ろ姿に問いかけた。
「全然おかしなことはなかったよ~」
「そっか、気をつけろよ。ウイルスの可能性もまだあるんだからな。
それと個人情報とかカード情報は必要なら俺の携帯から入れろよ」
軽い口調で返答してきた雫の危機感のなさに眉を顰めつつ、
ウイルスの可能性がまだ残っていることと、
午前中に家出る前に一度伝えていた気休め程度である、ウイルス対策の個人情報などの取り扱いについて再度伝えた。
そんな颯真を軽くあしらい、颯真の夕食を食卓に並べ終えた雫は
颯真の前の席につき、「早く食べなよ」と声をかける。
「ありがとう、いただきます」と伝え、夕食を食べ始めた颯真。
毎日、颯真好みに作られた食事と、
颯真の食事の時間を共に過ごすために食卓につき食べ終わるまで会話を楽しんでくれる雫。
雫と過ごすこの時間は颯真にとってとても大事な時間である。
今日もまたその時間が嬉しくて大切にしたいため、これ以上アプリや予言者について口うるさく言うことを辞め、
そこからはいつも通り他愛のない話をした。
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「颯真も心配してくれてるんだよね。」
食事も残り一口となったとき、雫が言った。
主語はないがきっとアプリのことを指しているんだろう。
顔を上げて雫を見て言葉の続きを待つ。
「ちゃんと何かおかしなことが起きたらすぐに言うし、ウイルスだったら怖いから
個人情報とかも入れないし、気を付けるよ。」
そう言葉を必死に続ける雫の様子を見て、
なんだか怒られた後の子供が親に反省を述べているときのような光景だなと
呑気に考えてしまう颯真は、少し面白くなってきて口角が緩んでいってしまう。
「このアカウントも最初はよくある預言者ごっこくらいで済まそうと思う。
地震があるかもしれません、とか、この芸能人もうすぐ結婚しますよ、とか」
自然災害の予言とか、個人名を出した予言とか、
外れたら不謹慎にもほどがあるし大変なことになりかねないと頭の片隅には思い浮かんではいる颯真。
しかし一度許可したこと、大事になる前に自分が止めればいいこと、
今やネットで一般人が簡単に有名人のようなインフルエンサーとやらになりやすい世界ではあるが
だからといってそんな簡単にネットの世界に雫の予言者ごっこアカウントが見つかるとは思えないこと、
色々な言い訳で頭の中を埋め尽くし、雫を止めるのをやめた颯真。
それ以上は何も言わずに、夕飯の最後の一口を食べたあと「ごちそうさま」と手を合わせ、
食器を下げるため立ち上がり、目の前の雫の頭を撫でて、キッチンへ足を運んだ。




