予言が君を殺すまで・3
「それで、その颯真のバイト先しか知らないような内容が
なんでここに載ってるんだろうね?」
雫は自身のスマホの画面に視線を戻し、不思議そうに記事を読みだす。
しかし難しい内容だったのですぐに読むのを辞めて颯真に問いかけた。
雫の質問に眉間にしわを寄せ、う~ん…と呻りつつ自身のバイト先の面々を思い浮かべる。
「情報漏洩をしそうな人は一人もいないけどな…」
所長の叔父さんはもちろん、調査員の2人も颯真よりは年上ではあるものの同世代で若い。
しかし、一人は同世代と思えないほどの機械音痴で、報告書も手書きで作成し、
普段の連絡手段であるアプリも、開いて読むのがやっとで返信などはほとんどこない。
どうやらパソコンやスマホのタイピングが苦手らしい。
それに加えて電子的な光を見ると頭痛がし、画面自体が数分も見てられないという。
今の時代、情報を漏らすのであれば間違いなくネットを通して発信するのが主流。
しかし、普段から機械を触らず、というより触れない人がそんなことができるとは考えにくい。
万が一、アナログな方法で情報を漏らしたとしても、彼は字が驚くほど汚い。
一度頼むから読める字を書いてほしいと頼んだところ、
いつも半日から遅くても3日以内に渡してもらえる報告書のメモ書きが、
一週間経っても渡してもらえなかった。
遅れた理由をきくと、”丁寧な字を書くのには相当な時間が必要だ”と彼は主張していた。
その一件以降、彼の汚字の問題はこちらが読解力を鍛えることにシフトチェンジした。
そんな彼が努力して、他人に読んでもらえる字で、
昨日すべてが揃った案件の概要を記載した書類を
今日すでにネットニュースに上げれる短期間で作成するのも不可能だろう。
だから彼が情報漏洩したとは考えられない。
もう一人はもっと単純な理由で情報漏洩の可能性はほぼない。
所長である叔父さんに惚れこんでいるからだ。
仕事中も隙あらば叔父さんに猛アタックしており、
叔父さんが事件で怪我をすれば人一倍大袈裟に心配をし、
叔父さんが不利になるようなことがあれば、原因を作った相手を殺しにかかりそうな勢いで詰める。
そんな人が叔父さんを裏切るようなことは考えられない。
「あっ!」
颯真が事務所の人間が口外する以外の方法で、情報が漏れた可能性を考えていると
雫が声を上げた。
「ここ見て」
雫は画面を颯真に向ける。
「ここの日付。9月15日って書いてるでしょ」
記事のタイトルの右下に記載されている日付を指さして雫は言葉を続ける。
「今日は9月8日でしょ?さっきの地震の記事も9日だったし…」
言葉を一度止め、颯真から視線をそらし、少し間を開けてから
雫自身も半信半疑であると語っているような表情をし言葉をつづけた。
「…未来のニュースが載ってたりする?」
「いや…、」
そんなわけないだろ、と続けるはずの言葉を止めた颯真は、
雫に貸してと言葉をかけスマホを取り、他のカテゴリのニュースを見る。
選んだのは『芸能』のカテゴリ。
今度は先ほど雫に言われた守秘義務を気にして声には出さないが、
昨日大物芸能人夫婦の夫が、妻の不倫を疑って事務所に依頼に来ており、
依頼主が帰宅後、所長が「ほぼ黒だろうな」と呟いていたことを思い出した。
”本当に黒だったら絶対ニュースになってるはずなんだよな…”
颯真は、アイドルの熱愛やタレントの炎上などの見出しで並ぶ、
芸能関係のニュースが日付の若い順から並んでいる一覧をスクロールし、
下のほうに目的の芸能人夫婦の名前が記載されている見出しを見つけた。
その見出しをタップし、内容を読むと、
大方依頼に来た夫が説明した内容と一致する不倫に関する概要、
それと疑惑を裏付ける証拠の写真などが載っていた。
さっと一通り記事を読み終えて最後に日付を確認すると、
そこには”9月30日”と記載されていた。
「…まじで未来の記事が載ってるかも」
一瞬伝えるか悩むも、こちらを見ていた雫にそう伝えてみる。
「やっぱり!?そうだよな!未来の記事だよな!」
普通の人はここで不気味に思うなのに、なぜか嬉しそうに興奮する雫。
雫を誰よりも理解している颯真は、やはり伝えるべきではなかったかもしれないと思いつつ、
次に出てくる雫の言葉を待った。




