予言が君を殺すまで・2
「お前なぁ、ウイルスの類だったらどうしたんだよ」
颯真に一通りこの不思議なアプリのことを画面を見せながら説明をし終えると、
途中から曇っていった顔のまま大きくため息をつきながら、雫の顔を呆れた顔で見つめて言葉を投げかけた。
「…まあそん時はそん時だし、実際今の所おかしなことは起きてないよ」
ばつが悪そうに颯真から顔を背けつつ、拗ねたように下唇をとがらせてそう返答する雫。
「なんつう顔してんだよ…」
雫の表情に”ははっ”と声を出しながら、その頭に手を添え、くしゃっと髪を撫でる。
そのまま雫の持つスマホを背面から覗き込むようにして、もう一度見た颯真は、
雫だと難しそうという安易な理由で開かないだろう『政治』のカテゴリをタップし、
一番最初に出てきたニュースを読み始めた。
真剣にニュースの記事を読む颯真の顎が雫の肩に置かれ、
その肩に乗った少しの重みにくすぐったさを感じた雫はほんの少し肩をすくめた。
そんな雫に口角を緩めつつも、長めの記事を読み進めていく颯真。
暇を持て余した雫が、颯真の髪を指先であそび出したころで
ようやく記事を読み終え、口を開いた。
「…この記事、結構信憑性あるかもな」
「まじ?」
颯真の言葉に驚いた雫は、自身の肩に乗った顔のほうに自身の顔を向け、その横顔を見つめ言葉の続きを待つ。
「…っ」
軽く視線を雫のほうに向けた颯真は、その近さに顔を赤らめて雫の肩から顔を上げ、
今度は颯真が雫から顔を背けた。
「なんだよ!なんで信憑性があるんだよ」
颯真の不可解な行動よりも、謎のアプリのニュースに信憑性がある理由が気になっている雫は
後ろから颯真の顔を覗く。自然に上目遣いになる。
「はぁ~」
「うっ…」
雫と目が合った颯真は長い溜息をついた後、その両頬を片手で挟んでニュースについて言及をし始めた。
「この政治家、横領の疑いがかけられてんだよ今」
その言葉を聞いた雫も朝につけているだけのようなニュース番組でそのような内容が流れていたような気がする。
「でも本当はこの政治家の愛人が真犯人なんだよ。こいつははめられてるだけ。」
「…ほうはほ?」
そうなの?と出したはずの言葉は頬を挟まれているため、うまく発音できなかった。
しかし颯真はその言葉を聞き取り、うなずいた後に話を続けた。
「でもそのことはまだ誰も知らないはずなんだよ、
俺のバイト先が調査を続けて昨日やっと全部証拠が揃った案件だから」
颯真のバイト先は小さな探偵事務所だ。
ただ颯真の業務は事務系が多く、調査に行くことはほとんどない。
颯真の叔父である所長を含めた調査員3人とバイトの颯真、計4人で運営しているその事務所は
小さいながらも大きな事件の調査等を数多く請け負っているため、所員たちは多忙な日々を過ごしている。
そのため調査報告書は、調査員はメモ書き程度で済ませ、そのメモ書きを用いて颯真が正式なものを作成している。
だから調査員ではないが、颯真は探偵事務所が担当した案件の概要や調査結果はほとんど全て知っている。
この政治家の横領疑惑についても、警察の捜査は現時点では政治家本人にまだ向いており、
探偵事務所は政治家の妻から浮気調査の依頼で調査を進めていたところ、
横領に愛人が関係していることをたまたま突き止め、昨日やっとすべての証拠が揃ったところであった。
横領に愛人がかかわっていること自体は少し前に突き止められており、
その時点で調査報告書の下書きを作成していた颯真は、大体の概要を知っていた。
その内容に警察の本格的な捜査の結果も付け加えられた内容が、
このアプリのニュースの記事には記載されていた。
「まだ調査報告書には昨日揃った証拠については何にも書いてないから
依頼主どころか、叔父さんにも提出してないんだよ。
てことは報告書がないから事務所の人間以外が知るわけないんだよ。
だけど、ここにはすべて書いてある。」
颯真の話に耳を傾けつつ、ふと一つの疑問が湧いてきた雫は、
純粋な目で颯真を見つめて口を開く。
「それ俺に言っていいの…?守秘義務とかあるよね…?」
雫の言葉にはっと目を開き、”やべぇ”っと顔を青くさせていく颯真。
雫相手だと何もかも気が緩んでしまう自分に嫌気がさす。
「…ふふっ、大丈夫だよ、俺颯真以外友達いないから。誰にも言わないし。
でも今後は気を付けなよ、じゃないと叔父さんに怒られるぞ」
くすくすと笑みを浮かべながら、背伸びをして颯真に軽いデコピンをした雫。
その行動にまた頬を緩めながらも、今後はより一層気を引き締めようと誓う颯真であった。




