危機に現れた謎の巫女たち
今日も私たちは戦いの中だ。
ただ、今日の戦いはマジやばい。
雑魚が多いだけでなく、そこに紛れ込んでいた砂賭け婆に砂を浴びた藤井が視覚を奪われ、戦力ダウン。
だと言うのに、砂賭け婆は主戦力ではなく、ただ単に私たちの戦力をダウンさせるためだけの存在。
主力は4体の鬼。有脩の話では酒吞童子の四天王との事だ。
鬼を切り裂く刀を持つ明智はいない。
鬼を消し去る卑弥呼様の破魔矢もない。
ここは卑弥呼様に大活躍してもらうしかない状況だ。
そんな卑弥呼様が破魔矢を放つ。
その軌道周辺の雑魚たちを消滅させていく。今まで以上にパワーアップしてはいるが、私が買った破魔矢の威力にはまだまだ及ばない。
状況が状況だけに力を抑えているとは考えられない。やっぱ不調?
「鬼を狙ってください!
一番近いのは左前方の鬼です!」
私の言葉に卑弥呼様が鬼に向けて破魔矢を放つ。
軌道上の雑魚を消し去りながら、鬼に破魔矢が近づく。
見事に命中。
だけど、消え去ったのは鬼ではなく、破魔矢の方だ。
「うん?
今のは何だ?」
その鬼が嘲笑気味に言って、私と卑弥呼様に視線を向けた。
ぎょろりとした目、にやりとした口元。
「ぐおぉぉぉぉ」
続いて雄たけびを上げたかと思うと、私達に向かって来た。
ヤバい。マジでヤバい。
そんな時だった。
視界がまばゆく光った。
多くの雑魚たちが光の粒となって消えて行く。
そして、私たちに向かっていた鬼も胸に刺さった破魔矢を中心に光が拡がり、消えて行った。
「なに?」
恐怖で乱れていた心を沈める。
私たちの右手方向から何かが近づいている。
それは邪気ではなく、清き力。
視線を向けると、5人の巫女がいた。
そこから放たれる破魔矢は1本を除くと今の卑弥呼様レベル。
そして、別格の一本は清子様レベル。
もしや清子様では?
そんな思いで目を凝らすが、それは見知らぬ女性だ。
その巫女が放つ破魔矢は一撃で鬼を消し去ってしまう。
どこの誰だか分からないけど、助かった。
それが私の本音。
破魔矢を放ちながら、近づいてくる巫女たち。
次々に消されて行く妖たち。
そして、最後の鬼が破魔矢で消し去られた時、その巫女は私の隣にまで来ていた。
「なにゆえ、そなたは戦わぬ?」
その巫女が言った。
「なにしろ、矢が無いので」
背に矢筒を背負い、手に弓を持ってはいるが、買った10本の卑弥呼様の力を宿した破魔矢はずっと以前に打ち尽くしてしまっている。
「なら、これを使え」
その巫女は自分の矢筒から矢の束を抜き取り、私の矢筒に詰め込んだ。
「いえ、そう言う意味では」
「なら、どう言う意味なのだ?
まあよい。早く、戦え」
そう言って、その巫女が雑魚に向けて破魔矢を放つ。
私もとりあえず、雑魚たちに向けてもらった破魔矢を放ってみる。
一気に雑魚たちが消えて行く。
その威力は買った卑弥呼様の破魔矢以上だ。
きっと、この矢はこの巫女の力が込められているのだろう。
もしかしたら、後で一本100貫とか言われないだろうか? と心配になってしまう。
4体の鬼はすでに消え去っていると言うのに、雑魚たちが引き揚げぬと言う事はまだ大物がどこかに潜んでいると言う事だ。
心静かに、辺りを探る。
前方より二体がこちらに向かって来ている。
速度は結構速い。
「前方より、二体」
「二体とならば、おそらく酒呑童子と茨木童子でしょう」
私の言葉に有脩が言った。
「お前たちは邪魔だ。
我らの側面につけ」
巫女の言葉に、残りの巫女たちが私たちの横に並び、雑魚たちに破魔矢を射かけ続ける。
「そこの男たちと女もだ」
空真たちはこの巫女に従う理由は無いが、その力を目の当たりにしているだけに、目を開けられない藤井を連れて、私達の横に戻って来た。
「よいか」
なぜだか、その巫女は私に視線を向けて言った。
「その方の前面に現れるのが、おそらく酒吞童子。
私の前に現れるのが、茨木童子。
それぞれ目の前に現れた敵を討つのだ」
「しかし」
「矢はそなたに分けたであろう」
巫女の顔には自信にあふれている。
確かにこ破魔矢の威力なら、鬼でも片付けられるに違いない。
心を静め、近づく邪気の動きを確かめながら、破魔矢で狙いを定める。
多くの雑魚の向こうにちらりちらりとその巨体が視認できるようになってきた。
そろそろ矢の射程圏内。
「行きます!」
巫女にそう言うと、引き絞っていた弦から指を離し、破魔矢を放った。
隣にいる巫女もほぼ同時に破魔矢を放った。
軌道周辺に妖たちを消し去りながら、それぞれの破魔矢が二体の大きな妖に到達した。
そこにはやはり鬼の容姿をした妖がいた。




