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異世界の魔道具ライフ  作者: 多趣味な平民
三十六章 生まれ変わった国

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外伝16 魔界旅行記1

『『『ブウウウウウウウウーーーーッ!!』』』


「ハッハッハ、どうやら事前の打ち合わせが不足していたようであるな」


 冗談で済まされていたプリンスネタとは違い、カンニングという真剣勝負を汚す行為をしたことで会場中から罵倒されるジーク。


 それでも彼は知らぬ存せずを決め込み、非難轟々の中で表彰式を終えた。


「これで良かったのだな?」


 通話を切ると同時にさきほどまでのとぼけ顔から一変、王族らしい真剣な顔つきで正面のアリシアを見た。


「ええ。ありがとうジーク。迷惑掛けるわね」


「気にする必要はない。不正発覚で最下位になることに同意したのは吾輩だ。知らない土地の者に何を言われようと動じもしない。

 もしも今後関わることがあれば本当のことを伝えればいいだけである。人も魔族も魔獣も神獣も、真摯に向き合えばわかり合えるものだ」


「ひゅ~♪ おうぢカッコいい~♪ でも残念。“気”が使えないんじゃ、あたしのライバルにはなれないな~」


「なんだと!? この筋肉が目に入らぬか!?」


 ムキッ。


 テッサの挑発(?)によって、ただのイケメンからただのマッスル中年に戻ったジークのポージングが炸裂!


 アリシアのハートに1のダメージ。

 テッサのハートに1のダメージ。

 クロの精神に10のダメージ。

 周囲の精霊に500のダメージ。


 異性の魅力と戦闘力をイコールで考える少女達とは100まで貯まれば恋愛に発展するのだが……。


「グルル」

(強者を目指すのであれば精霊術は必要ですよ。筋肉を鍛えるより精霊と仲良くなる方が強くなれますよ)


 クロが印象操作でプラマイゼロ(むしろプラマイマイナス)にしているのでそうなることはおそらくない。



「しかしニーナ嬢には悪いことをしたのである。通話を切るだけの吾輩達とは違い、あの場に居るニーナ嬢は逃げられない。いくら知らなかったとは言え、悪意を向けられるのではないか? 悪はこちらにある。恰好の的だ」


 ポージングをしたまま再びアリシアに顔を向けたジークは、無作為に選ばれた相方の心配を始めた。


「大丈夫よ。あの子強いもの。怒られたり無視されたりしてメソメソすることはあっても本気で落ち込むことはないわ」


 神獣ニーナは、ヒカリのように成長過程ではなく完成された獣。


 罵倒で心が荒むことも、暴走することも、落ち込むこともない。


「ならば良いが……」


「ええ。あったとしてもぜ~んぶ構ってもらうための演技。見ず知らずの人間から何を言われても平気だと思うわよ。気にするとしたら心を許した相手からの強打ね」


「それは急いで事情を説明しておく必要があるのではないか!?」


「必要ないわ。どうせ今頃フィーネかユキが気付いて教えてるから」


 と、肩をすくめて話を締めたアリシア。


 勝手知ったるオルブライト家だ。



「それにしてもアリシアは弟想いの良いお姉ちゃんだね~」


 ここぞとばかりに弄りの矛先をジークからアリシアに変えたテッサは、イヤらしい笑みを浮かべながら絡みついた。


「うむ。いくら賢いと言っても10年そこそこしか生きていない人の子。あのメンバー相手では最下位になるのは目に見えていた」


 フィーネはもちろん公爵とクレアも町や商会を代表する頭脳戦のプロ。


 年齢だけならフィーネと変わらないヘルガと、彼女の暴走を止められるヒカリのコンビも優勝候補だ。


 こう見えてジークも数百年の時を生きる王族。当然頭もよく回る。


 それに加えてルークは、カードゲーム・トーク・指令の行動・ツッコミ・解説まですべて1人で行わなければならない。


 到底勝ち目はなかった。


「ただの遊びならともかく、自分のお金を賭けた試合で負けたらそりゃあ叩かれるよね~。応援してた人達怒るよね~。

 正々堂々戦って敗北した若者と、激戦のように見せてカンニングしていたオジサン。

 どっちが悪か言うまでもないよね~」


「う、うるさいわね! そんなんじゃないわよ!」


 アリシアはツンツンしながらブラコンを否定。


 しかし誰がどう見ても図星を突かれて慌てているだけである。


 彼等は不正などしていない。ジーク&ニーナコンビはルールに従って戦い、先にルークが撃沈しただけ。


 すべては最初から仕組まれていたことだった。


 彼等の作戦はこうだ。


 1.ルークが負けた直後にジークがわざとミスをする。


 2.それに対してアリシアが『ギクゥッ!』と白々しいリアクションを取る。


 3.暇を持て余したルークならばおそらく気付くだろうが、万が一指摘されなかった時のためにテッサがカンニングペーパーを用意する。


 4.それがクロの起こした風に飛ばされてカメラに貼りつき、全員に気付かれる。


 5.怒りの矛先はすべてジークに向き、ルークはよく頑張ったと賞賛される。


 これ等はすべてアリシア=オルブライト嬢の提案だ。


「この作戦って弟君が最下位になることが前提でしょ。でも本心では優勝すると信じてたからアリシアはジークさんに全力を出すように頼んだんだよね? どうせ優勝したら『ほら! 私の弟すごい!』って自慢するつもりだったんでしょ?」


「そんなわけないでしょ。たしかに1人ってハンデがあったけど実力で負けたのは事実よ!

 普段から私とかニーナとか自分より知識のない連中を相手にして賢いと勘違いしてるのよ! 対等な者同士で争えばこうなるの! 上には上が居るのよ!」


「って教えられるから結果はどうでも良かったと」


 当然図星である。


 まぁそれが現実になることはなかったわけだが……。


「……言葉が通じない相手には力でってのが常識よね?」


「お、やる? 一発おっぱじめちゃう?」


 暇を持て余したスーパーアルディア人と、行き場のない怒りの発散先を求める魔法少女の利害が一致した瞬間である。



「グルゥ……」

(ジークさん、結界とか……張れませんよね。ボクがやりますね)


 苦労人が活動を再開した瞬間でもある。



「フハハッ! まだまだ未熟だが輝くものを感じるのである!」


(まぁ実際輝いてますしね)


 ツンデレラと金色に輝く戦士の戦いが終わるまでまだしばらく掛かる。


 ジークが彼女達と共に居る理由について語るとしよう。




 それはアリシア・クロ・テッサの3人が黒海を渡り、魔界へ足を踏み入れた直後のこと――。


「ところで他の3人はどうしたの? 一緒じゃないの?」


「他って……ルーク達?」


「違う違う。弟君やニーナさんはそういうのじゃないって“気”でわかるよ。あたしが言ってるのは男女3人の冒険者のこと。高め合う存在として再会を誓ってたじゃん」


「ああ、アッシュ達ね。私もあれから会ってないわよ」


「そっかー。成長楽しみにしてたのになー」


「へっへっへ……オメェ良い武器持ってんじゃねーか」


 雑談をしながら船乗り達から教えてもらった町へ向かっていた3人の前に、テンプレートな不良魔族が現れた。


「先手必勝ぉぉっ!」


「「「えええええっ!?」」」

 

 が、アリシアの魔法剣でこれを一蹴。


「空からの強襲とかwww」


『『『シャゲエエエエエ!?』』』


 同タイミングで現れたワイバーン達もテッサの舞空術&気弾で撃破。


「魔界も大したことないわね」


「漁師さん達がこの先の町には鬱憤を晴らせる場所があるって言ってたから期待しよ!」


「グル!?」

(ニュアンス違いません!?)


 クロが記憶しているのは、『本当なら港町に行くところだけど、何か事件があったらしく今は入港出来ない。アンタ達なら解決できるかもな』である。


 テッサの一言で落胆から有頂天へと激変したアリシアは、先を急ぎ――。



「それならワシが良い所へ案内してやるぞい」



 船旅を入れると魔獣、魔獣、不良、魔獣と続き、次に現れたのは老人。


「……やるね」


「誰よ、アンタ?」


 ただしこの老人。テッサやアリシアに勘付かれることなく近づける実力者だった。


 感知能力に長けているクロは最初から気付いていたが、戦闘に夢中になっていた少女達は木陰に隠れていたこの老人の気配を感じ取れなかったらしい。


「ワシはこの先の町で暮らす魔族ですじゃ。お2人の実力を見込んで頼みたい事がある」


(ああ、なるほど。2人の凶暴性を伝えるための戦闘かと思いきや、目撃者が実力を認めるパターンですか……)


 冷静に事態の把握に努めるクロを他所に、老人は2人の手を取って頼みごとを続ける。


「詳しい話は邪神の眠る町【ヘイムダール】に着いてからするとしよう。腕自慢も集まっているので楽しめると思うぞ」


「「ほほぉ……」」


(う、うわー、トラブルの予感しかしないぃぃ!)


 こうして、当初の予定通り3人は港町へと向かことになったのだった。


 まぁ予定通りなのは場所だけだが……。

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