閑話 水洗トイレ(裏)
下ネタコメディ回です。
苦手な方は読まなくても全く問題ありません。
こんな話を書きたいからR-15タグをつけたバカです。
それでも楽しんでいただけたら幸いです。
実は水洗トイレを作ろうと思った切っ掛けはもう1つあった。
それは母さんが友人の懐妊祝いで出掛けた時の事だ。
前々から聞きたい話があった俺は、これ幸い、とフィーネに疑問をぶつけてみる事にした。
「フィーネ、ちょっと教えてもらいたいんだけど・・・・」
「はい? なんでしょう?」
「この世界の生き物ってどうやって増えるんだ?」
もしかしたらアルディアでは地球と違う生殖行為かもしれないので、それ関係の話が自然に出せるこの機会に知っておきたかったのだ。
もしも子供からこの質問をされたら、大抵の大人は「コウノトリが~」とか「キャベツ畑で~」みたいな誤魔化し方をするだろう。
しかし俺はこの世界なら4歳だが中身は60歳近いオッサン。そういう遠回しな表現は必要ない。
「・・・・ルーク様にはまだ早いと思います。10歳になれば親から教わるのが一般的ですので」
だと言うのに、珍しく俺からの頼みを断ろうとするフィーネ。どうやら説明するのも嫌なようだ。
だがこういう場合はもう少し押して様子を見るべきだろう。
本当に嫌ならどんな理由であろうと断り続けるし、その程度で俺と彼女の絆が揺らぐことは無い。ちょっと乙女な部分を見せただけかもしれないしな。
ってわけでレッツ説得。
「いや、俺にその言い分は通用しないぞ。フィーネだって事情知ってるんだからわかるだろ?」
「それは・・・・そうですが・・・・」
「俺はこの世界の事をもっと知りたいんだ。それ用の魔術があるのか、懐妊してからどのくらいで生まれるのか、種族によって何か特徴があるのか、ハーフやクオーターの場合、などなど聞きたいはいくらでもあるぞ」
これだけ言ってもまだ少し迷った様子のフィーネ。
「・・・・・・・・たしかにそうですね。
ルーク様が覚えておられる物とは違う可能性もありますし、教育係として正しい知識を身につけていただきましょう」
でも最終的には俺の話に共感したのか色々と話してくれた。
そして俺は、それ等の内容・期間共に地球とほぼ同じだということを知った。
哺乳類は有性生殖。他種族でも人型に近いほど有性生殖で、鳥類や飛行する魔獣はほぼ卵生。他にも無性生殖で増えるスライム。子孫の概念を持たない者も居るらしい。
そうなると気になってくるのはユキみたいな特殊個体だ。
「精霊は自由に変化させることが可能ですね。それ以外にも『肉体』という概念が薄い、もしくは無い種族はある程度自由になるそうですよ」
「要するに聞いてみないとわかんないって事か・・・・」
「それですね。それが一番かと」
ちなみに人によっては長期間食事や排泄をしないことも可能らしく、その辺はある程度は魔力で調整出来るんだとか。
「そう言えばユキもそんなこと言ってたな。
で、結局それは魔力で補給&分解するって考えればいいの?」
「うふふ」
それまで饒舌だったフィーネは、そこに関してはひたすら笑うだけで絶対に教えてくれなかった。
恥ずかしがる年でも無いだろうに・・・・。
さて、大分話が逸れてしまったけど今回はトイレ製作がメインなのを忘れてはいけない。
俺が何故生殖行為について聞いたのかと言うと、ウォシュレットに『とある機能』を付けるか迷ったからだ。
「フィーネの話を聞く限り、ビデ機能は必要になるか・・・・」
「ビデ?」
言葉で説明するより実物を見せた方が早いと思ったので、俺は何も言わずにトイレ作りを急いだ。
まぁたぶん説明すれば伝わるんだろうけど、どうせなら驚かせたいしな。
それから数週間後。
ようやく完成した試作のウォシュレットには洗浄マークが付いており、その隣にはビデマークがある。
「後は微調整するだけだけど・・・・こればっかりは俺じゃ絶対に無理だからな」
これはあくまでも試作品。実際に当てて調節する必要があった。
問題は誰に相談して調整してもらうか、である。
生みの親で最も親しい母さん。
生まれた時から何故か傍に居るアリシア姉・・・は小さすぎるので却下。君にはまだ早い。
食料で釣ればなんとでもなるエル。
俺を主として慕い、何でも言うことを聞いてくれるフィーネ。
いつものんびりユキ。
・・・・最後のは特に理由にはならないか? まぁ良い。
さて、誰にしようかな。
「やっぱり母さんか」
俺を生んでいるという経験は大きい。
ビデ使用目的の1つに『産後の衛生管理のため』とあるので、その辺の事で苦労したであろう母さんはきっと喜んでくれると思う。
何なら懐妊祝いをした友人にプレゼントしてあげたい。
そのためにも母さんは協力してくれるはずだ。
というわけでご対面。
「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど・・・・母さんしか頼めないんだ」
「どうしたの? 改まって何かしら?」
俺はなるべく普段通りの平静を装いつつウォシュレットの便利さを語り、最後にビデを完成させるための説得に入った。
「母さんは俺達を生んだ時にもっと清潔にしたいと思ったことはない?」
「ええ、ずっと思っていたし気も使っていたわよ。赤ん坊も妊婦も病気にやりやすいから」
やはりそうだったらしい。
そしてそれは俺にとって追い風となる。
「これが完成すればもっと大事な場所も清潔に出来るんだ」
「っ!? こ、これで・・・・に水を・・・が流れるの?」
図面と試作品の意味を理解した母さんは恥ずかしさから俯き、傍に居る俺にすら聞こえないほど小さな声でボソボソ何かを呟き始めた。
と思ったら数秒で顔を上げ、何かを決意した目でこちらを睨みつける。
「・・・・わ、わかったわ! 私で良ければ協力しましょう!!
これが出来れば病気も減るのよね?」
「もちろん」
こうして俺は母さんという協力者を得ることに成功した。
実は俺も相当心臓バクバクだったんだぞ。
母親に性に関する事を相談するのは凄まじい度胸が必要だったけど、ウォシュレットのために頑張ったよ。すごい頑張ったんだよ。もう何も怖くない。
しかし母さん1人では意味がない。複数人のデータが必要なのだ。
「料理で釣ってエルに頼もう」
最近、塩と砂糖という新しい調味料が手に入って有頂天なエルだ。
俺が料理を教えた事で「新作に挑戦しても良いんだ」と歓喜の涙を流したエルだ。
時々調理場で涎を垂らしているエルだ。
きっと大丈夫。
「エル、美味しい料理できそう?」
「あっ、ルーク様! いや~、難しいですね~。ラスクのような簡単に出来る料理すら思いつきません!」
彼女は予想通り、調理場でエヘエヘ笑いながら新たな料理を生み出そうと頭を悩ませていた。
あれだ。犬がテンション高い時に舌出して「ハッハッハッ」って体温調節する感じ。
エルも犬人族だし、嬉しさの表現としてそうしたい事もあるんだろう。
このセリフからして塩と砂糖を使いこなすのに苦戦中らしい。好都合だ。
俺はそんな彼女に救いの手を差し伸べた。
「実は餡子っていう砂糖と塩を使った料理があるんだけど」
「なんですかそれ!? りょ、両方を使う? 味の方向性が全く別ですよ!?」
よし! 食い付いた!
あとはシッカリと針を飲み込ませて、糸が切れないように慎重に釣り上げるだけ。
「教えたいんだけど、魔道具開発が忙しくて・・・・(チラッ)」
俺は、さも疲れてますって感じで肩を揉み解し、
「協力者が必要な実験なんだ・・・・(チラッチラッ)」
と言いながら、頼れる人を探すように周囲を見渡し、
「あー! 忙しくて餡子について教える事が出来ないー!」
最後に、仰々しく両手で頭を抱えてその場にしゃがみ込んだ。
「私で良ければ何なりと!!」
「そうか! ありがとう!!」
・・・・掛かった。計画通り。
ただ事が事だけに直前で断られるとアレなので、この場でビデについて説明しておく。
「・・・・・・って感じで調整してほしいんだ」
「こ、これをですか・・・・いえっ、やりましょう! その代わり餡子の件、お願いしますよ」
『恥じらい』と『新作料理』を天秤にかけたエルは、一時の恥より一生の料理を選んだ。
闇取引完了。
じゃなかった。
エルの説得に成功。
「フィーネなら受け入れてくれるはずだ」
赤ん坊の頃から俺の世話をしてくれているんだ。
何度も一緒に風呂入ってるし、人生経験豊富なエルフだし、そもそもビデについて聞きたがってたし、きっと大丈夫。
ってわけで実物をご用意しましたよ。
「またフィーネにお願いしたいことがある・・・・。前回の続きなんだけど、さ」
「全てお話しましたよ? 知識は完璧なはずですが?」
俺の相談に、頭の上にハテナを浮かべるフィーネ。
話をスムーズに進めるためにした前置きがかえって邪魔になってしまった。
(ここで「いや、実体験がまだだー!」とか言ったら怒られるかな? 受け入れられるのかな?
・・・・試してみたいけど色々怖いから止めておこう)
なんとなく大人の階段をエスカレーターの如く、自動的に上っていきそうな気がする。
さっさと本題に入ろう。
「今回は軽蔑されるかもしれないけど必要な事なんだ。これが前に言ってたビデなんだけどさ」
俺は母さん達にしたのと同じ説明した。
「そ、そそ、それは・・・つ、つまり、私の・・・ア、ア、アレを調べると?」
おや? いつも冷静で年上の魅力あふれるフィーネさんが珍しく動揺していらっしゃる。
「いや見せなくて良いんだ。当ててみて調節してもらえたら」
「そ、それでしたらなんとか・・・・はい、ご協力いたします」
フィーネもOKと。
母さんよりは即決だったけど、忠誠心の塊である『あの』フィーネが若干とはいえ迷うとは・・・・よっぽどな事みたいだ。エルフは貞操観念強いとか?
「精霊もついてるの? ユキに質問してみよう!」
なんかコーナーになってるけど気にしない。
結果は風呂に入ってる時に確認できたので聞く必要もなかった。
まぁ折角の機会なのでビデについて相談する前に別の質問をしてみようか。
「ユキって子供産めるの?」
神話では精霊や神の子供が邪神になって世界を滅ぼすなんて話いくらでもある。
ユキのような力を持った者が人類の敵になった時の事を考えると寒気がするので、可不可を確かめる意味でも気になって聞いてみた。
「さ~? 産めるような~、産めないような~?」
その問いかけにユキは左右に首を傾げ始めた。
・・・・延々傾げ続ける。
・・・・・・・・ひたすら傾げ続ける。
キリがないので俺が折れた。
そんなこと今はどっちでも良いのだ。
「一応ユキにも協力してもらいたんだけど、このビデ」
「いいですよ~。こうすれば当たりますね~」
「いや何も言ってないんだけど、ねぇえええぇぇぇっ!?」
2人きりの室内でいきなり下半身を露出させたユキ。
それだけでも驚きなのに、さらに彼女は水道と繋がっていないウォシュレットに自ら水魔術を使って敏感な部分に水を当て始めたのだ。
ちなみに下着はドロワーズみたいなカボチャパンツではなく、ブルマに近い物が主流。パンティまでいかないのは技術が無いからか、素材が手に入らないからかは知らない。
下半身を出したことでその真っ白なパンツを目撃してしまった俺は思わず悲鳴を上げて目を逸らした。
「ちょっ!? 見せなくていいから! 調整してくれるだけでいいから!!」
「でも開発者が調整したほうがいいじゃないですか~。お風呂も一緒に入りますし、今更ですよ~」
「たしかにそうだけど! 入浴と部屋って雰囲気とかシチュエーションが違うっていうか!
協力してくれるのはありがたいけど少しは恥じらい持とうよ!」
俺の魂の叫びを無視してビデを起動するユキ。
やめて! 今後の関係が凄い気まずくなるから!!
「セルフ調整難しいんですけど~」
と言われ、結局俺が調整する羽目になった。
いっそ開き直って試作便器に座ってもらい、水が当たるだけではなく洗い流せる威力になるように調整したよ! しましたよ!!
「まぁ私には関係ないんですけどね~。この機能使わないですし~」
「じゃあなんで最初に言わなかった!!」
心が荒む出来事だった。
こうしてオルブライト家の全女性(幼女を除く)の協力によりビデが完成した。
「あれは良い物ね。手伝った甲斐があったわ」
「そうですね!」
もちろんビデは大活躍! ・・・・らしい。
俺がその活躍シーンを目撃する事は一生無いだろうけど、関係者全員からお礼を言われたし、こんな会話をちょくちょく耳にするからな。
「私もルークさんに見せた甲斐がありますね~」
おまっ!?
リビングでなんて話してんだ、ってツッコミを入れたい衝動に駆られている俺に向ってユキが爆弾を投げつけた。
「「「・・・・」」」
沈黙する一同。
「ルーク、話があります」
「違うんだよ! 俺は悪くない!」
そして人差し指をクイクイっとして俺を膝元に呼びつける母さん。
「フィーネさんも同じように協力すると思ったんですけど、見せなかったんですか~?」
さらに『お前の忠誠心ってそんなもん?』と煽るような口調でフィーネに話しかけるユキ。
「いえ違うんです! あの時は動揺していてですね!」
「まぁまぁ。結果としては私が一番貢献したということですよ~。フィーネさんじゃなくて私がルークさんの役に立ってしまいましたね~」
「ルーク様! 今から! 今から私の全身を隈なく調べてください!!」
「ルーク、何を調べたのか正直に言いなさい。怒らないから、さあ早く。さあ! 母さんに話しなさい!!」
「エリーナさん、ルークさんは私の・・・・を・・・・して・・・・」
「「ルーク(様)!!!」」
ユキ、もう止めて! ルークさんの精神はもう限界よ!!
その後、俺がどんな目にあったのかは話したくない・・・・・・・・。
ただ1つ言えることは、我が家のトイレには女性限定でときどき活躍するビデの誇らしげな姿があった。
これは未来永劫語られることのない物語。
ユキ以外の全関係者が心に深い傷を負った悲しい物語。
これぐらいならR-15かな~ってラインで書きました。
え? まだいける?
ギリギリに挑戦してR-18になったら怖いのでこの辺で勘弁してください。




