表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生勇者の三軒隣んちの俺  作者: @aozora


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/10

第8話 転生勇者、魔法を使う

“フン、バスンッ、フン、バスンッ”

ボビー師匠の所に弟子入りして早一月、今までかなりの苦戦を強いられていた宿敵との戦いも二撃から三撃で仕留められる様になり、余裕を持って熟す事が出来る様になって来ていた。


「よし、今日はこれ位でいいだろう」

宿敵スライムとの戦いは修行を始めてからも定期的に行っていた。兄弟子ジミー君やエミリーちゃんと連れ立って来る時もあれば、こうして一人で赴く時も。倒したライバルたちの亡骸は水辺の隅にまとめておくと、ケビンお兄ちゃんが片付けてくれるのもありがたい。


ケビンお兄ちゃんは僕やエミリーが頑張っているのを応援してくれていて、こうしてスライムと戦っていると時々干し芋の差し入れをしてくれたりするとてもやさしいお兄ちゃんだ。最近は畑仕事や大人たちと一緒に何やら相談事をしていたりと、八歳にして村の一員として貢献している凄い人なのだ。

俺はそんなケビンお兄ちゃんの役に少しでも立てればと、ライバルたちの亡骸を一箇所に集めてから今日の課題に取り掛かる。


剣術の研鑽の方向性は見えた。だが俺は勇者、冒険の旅が剣術一本で渡り合っていけるほど甘い世界じゃないと言う事は分かっている。ならばどうする? 俺は自身に意識を向け「<鑑定>」と唱える。


名前 ジェイク

年齢 六歳

種族 普人族

職業 なし

スキル

鑑定 詠唱短縮 剣術 収納 

魔法適性

火 土 風 光


俺のもう一つの武器、そう、魔法である。先ずは基本魔法であるボール系の魔法から試してみよう。標的はもちろん我が宿敵スライム


「<ファイヤーボール>!」

右手を突き出し宿敵に向かって魔法を打ち放つ。魔法名を唱えた事で掌の前に直径十センチほどの火の玉が形成され、バッティングセンターの低速コーナー位の球速で目標に向かい射出。着弾するや”ボンッ”と言う破裂音と共に弾け飛んだ。

肝心のスライムはといえば。


「一撃だと!?」

最近は難なく倒す事が出来る様になったとは言え、討伐に二撃から三撃は掛かる攻撃がたったの一発とは。流石は魔法、その攻撃性能は伊達じゃない。


「<アースボール>、<ウインドボール>、<ライトボール>」

俺は次々と魔法を放ちその攻撃性能を確かめるも、どれも一撃で宿敵を葬り去って行く。これは俺の魔法が強いのか、はたまたスライムが弱いのか。俺が今後の魔法修行について頭を悩ませている時であった。


“ザバ~ッ“

水面が急に盛り上がったと思うとこれまで見た事もないような巨大なスライムが姿を現した。


「ビッグスライムだと!?」

ビッグスライム、それはスライムの上位種。通常のスライムよりも俊敏さ生命力共に高く、何と言ってもその防御性能は通常種の八倍、そんな強敵がなぜこんな村の水辺に!?俺は驚きと戦慄に額から一筋の汗を流す。


焦るな俺、逆に考えろ、これはチャンスだ。新たなる武器を身に付けた俺にとってもはや通常のスライムでは話にならない。そんな俺に天が与えてくれた新たなる壁、それがビッグスライム。

俺は再び手を伸ばし目標をビッグスライムに定め高らかに宣言する。


「新たなるライバルよ、お前に恨みは無いが俺の成長の糧になれ。<ファイヤーボール>!」

打ち出された炎、必殺の火球は真っ直ぐ強敵に向かい、その命を“ベシッ”


「・・・・は?」

俺は今目の前で起こった光景が信じられず再び魔法名を唱える。


「<ファイヤーボール>!」

唸りを上げる火球、その殺意は真っ直ぐビッグスライムに向かい彼の者の命を“カキーン”

振り抜かれたスライムの触腕。天高く舞い上がった火の玉は、そのまま空気中に溶け霧散して行った。


「<ファイヤーボール>、<ファイヤーボール>、<アースボール>、<ウインドボール>、<ライトボール>!」

“カキン、パコン、パカン、スパン、スッパーン”

打ち出す各種ボール魔法、その悉くがビッグスライムによって打ち返されて行く。

膝を突きガックリと項垂れる俺。身体はふら付き意識が覚束ない。これは魔力枯渇!?


世界が現実となった今、HPバーもMPバーも無い。数値化された各種パラメーターも無ければターン制の攻撃サイクルも無い。

これは紛れもない現実、戦闘は些細な油断でどんな結果になるのか分からない。

目の前にいるのは紛れもない強敵であるモンスター。俺たちは命のやり取りをしていたのだ、ならば俺が狩られる立場になる事も?


途端背筋を走る悪寒、俺は何時から勘違いしていた?俺は勇者だから死なない?最強の男になるんだ?モンスターには絶対負けない?

否、否、否。戦闘は、戦いは、強い者が勝つ。純粋に混じり気の無い命のやり取り。そして今この場にいる強者はビッグスライム、俺は死ぬのか?こんな序盤で?


折角の転生、最強を夢見た、だが浮かれていた。トーマスお父さん、マリアお母さん、親不孝な息子でごめん。でも最後はちゃんと前のめりで戦って散るから。


「うおおおおおおおおおおお!!」

俺はふら付く視界と薄れ行く意識をグッと堪え、愛剣(練習用木刀)を振り上げ理不尽ビッグスライムに立ち向かうのだった。



――――――――――


“コネコネコネコネ”

木桶に畑の土を入れ、手から生活魔法の<ウォーター>で水を出して只管(ひたすら)()ねる。

この生活魔法、正確にはそう言った属性魔法がある訳ではないのだが、魔法属性を持たない平民でも誰でも使える便利魔法の事を指して通称“生活魔法”と呼んでいる。ポイントはこの“誰でも使える”と言う点。授けの儀を受ける前の職業を持たない十二歳未満の子供にでも使えちゃうのだ。


この世界の人間は大なり小なり魔力と言うものを持っている。それを使って便利に生活できちゃうという画期的な技術、生活魔法様々である。

ただしそこは誰にでも使える便利魔法、その威力はお察しで、種火を付ける<プチファイアー>に始まりコップ一杯の飲み水を得る<ウォーター>、小さな明かりを得る<プチライト>、軽い擦り傷や不調を癒す<プチヒール>など。


便利ではあるが代わりは幾らでも利くモノだったり、威力の弱いものだったりと。その為生活魔法を所謂“魔法”と分けて考えるのが一般的な認識となっている。


俗に言う魔法とは攻撃魔法だったり防御魔法だったり回復魔法や補助魔法と呼ばれるもの。そのどれもが魔法適性を必要とする属性魔法だったりする。

一般的な“魔法職”と呼ばれる人たちはこれら属性魔法を研究修練し、様々な分野で活躍している人たちの事を指す。そして生活魔法は広く知れ渡っているにも関わらず、あまり研究などされない“庶民の特技”となっているのだ。


「よし、こんなもんでいいかな?」

俺はしっかり捏ねられた粘土状の土を木枠に流し込み上から棒で突いてよく空気抜きをする。そしてある程度表面が均等になったところである魔法名を告げる。

「<クリエートブロック>」


土属性の生活魔法は意外に少ない。深さ二十センチほどの穴をあける<プチピット>、十センチほどの隆起を作る<プチウォール>、土塊を固く固める<ブロック>。そのどれもが使い道を考えてしまうようなものだが、土の道に水捌け用の窪みを作ったり(わだち)の修復をしたりとそれなりに役に立つ魔法である。


先ほど使った<クリエートブロック>は“土属性魔法の初級魔法”である。本来であれば土属性を持たない俺には行使出来ない筈の魔法である。その工程は魔力により地面の土を集め形成し固めるというもの。それを神と大地に祈りを捧げ魔法名を告げる事で実現してしまうのだから属性魔法とは凄いものである。


では何でこの俺ケビン君が出来ちゃうのか。(わたくし)考えました、“最後の固める所だけ魔法でやればよくね?”と。

レンガに至るまでの工程を人力で行いほぼ日干し煉瓦の干す所までやってしまえば後は固めるだけ。これって大きさが大きいだけで生活魔法の<ブロック>で行けるよね?

更に魔力の通りと土粒子の結束を良くする為に生活魔法<ウォーター>で生み出した“魔力水”を使用。よく捏ね合わせて型に流し込みました。

最後に型の中で良く馴染ませて魔法名を発動、見事石のように固いレンガを作り上げる事に成功したと言う訳です。


「よし、大分作り置きも出来たしワームプールの作製に取り掛かりますかね」

この一月の成果、大量に積み上げられたレンガを見上げ満足げに頷く俺氏。そんなに大量のレンガを作ってどうするのかと言えばワーム養殖用のレンガプールを作ろうとしていたんですね~。


ビックワームの品質改良に成功したのは良いものの、木桶での飼育では大量に飼う事が出来ない。すなわち冬場の保存食には間に合わないという問題が発生、ここは一つ将来を見据え飼育施設の建設をですね~。

いくら上質のモノが出来上がったからと言って海のモノとも山のモノともつかないビッグワームの為に男衆の力を借りるのもね~。

現在はまだ研究段階、今ほど時間が有り余るほどにある八歳児で良かったと思う時はありませんでした。


で、頑張っちゃったと言う訳です。横三メートル、縦四メートル、深さ一メートルの大穴を木べらを使って掘り上げまして。

えっ?八歳児がそんな事出来るのかって?フフフ、先ほども言ったじゃないですか、この世界の人間は皆大なり小なり“魔力”を持っているって。

読んでてよかった少年漫画、イメージの力は偉大だな~。私にだってあったんですよ、“魔力?異世界転生?ひゃっほい!”って時期が。まだ赤ん坊だったから日がな一日ず~っと瞑想と魔力探しをですね~。結局魔核的なモノは見つからなかったんですけど、身体全体に魔力的なモノがあるってのはなんとなくわかりましてね、やってみたんですよ、“魔力纏い”。

スルッと出来ちゃったときは逆にビビったわ。


大きくなってお庭に出れるようになった二歳の頃は拾った木の棒でよく穴掘ってたっけな~。木の棒全体を身体の一部ってイメージすると割と容易に出来ちゃうんですよね。この技が畑作りや穴掘りに大変役に立ちましてですね、えぇ。

我が家に割り当てられて放置してあった土地を父親から借り受けて、今の様に畑作りなんかしちゃってる訳ですよ。

この辺娯楽なんかないし子供もいないからな~。親父殿も温かく見守ってくれてるって感じです。(何をやってるのかはよく分かってない感じですが)


“カチャ、ペタペタ、カチャ、ペタペタ”

自家製レンガを敷き詰めて間に粘土状に捏ねた土を塗っていきます。ここでポイントなのが何カ所か水抜き用に砂を詰めておく事。完全にプールにしたら雨が降った時にワームが溺れて死んじゃいますからね。

で、ある程度敷き詰めたら両手を突いて生活魔法の<ブロック>。これでレンガがしっかり接続されるって言うね。この技は家造りや橋造りなんかの時に使われるやり方です。(村長情報)

本当に生活に密着した魔法、凄い便利。


ある程度出来上がった段階で本日の作業終了、最近日課になった水辺のスライム回収に出発です。

ジェイク君、村外れの元冒険者のお爺さんの所に入門して以来頑張る頑張る。お陰様で(わたくし)は定期的にスライム素材が手に入り大助かりなんですが。思わずジェイク君たちに干し芋の差し入れをしちゃうくらい感謝しております。

頑張れ若人、お兄ちゃんは応援しているよ。(物欲)


あ、いたいた。ジェイク君今日も頑張って“ボンッ”・・・って魔法!?

「<アースボール>、<ウインドボール>、<ライトボール>」


えっ、さっき<ファイヤーボール>撃ってたよね?<アースボール>、<ウインドボール>、<ライトボール>って、ジェイク君もしかして四属性持ち!?転生者半端ね~。

そりゃそんなステータスを鑑定で見ちゃったら“世界最強に、俺はなる!(キメッ)”ってなるわ。つーか鑑定持ちって段階で有頂天になるわ。

そう言えばジミーが言ってたっけ、「ジェイク君、ボビー師匠に最強の勇者になるって宣言したんだって」って。


そっか~、転生者で勇者様(おそらく<真性>)か~。うん、一生治らないかもしれない。彼は本物(<真性>の極み)だもんね。頑張れ“転生勇者様”。

それにしても行き成り魔法って凄いな、あれって職業を授かって魔法を習ってから初めて出来るモノなんじゃなかったっけ?

これって平民に余計な武力を持たせない為の政策だったり?俺が為政者なら絶対そうするし、子供の内から魔法を使うのは危険とか上手な理由を付けていい人顔をしながら貴族は家庭教師に習ってるって感じ?

貴族なら鑑定持ちに見てもらうなんて余裕だろうし、そうじゃなくとも魔法の勉強を通じてスキルが生える可能性もあるしね。(元冒険者のお爺さん情報)

魔法適性が増えるかどうかは分からないけど貴族なら少なくとも一つは持っていそう、そう言う才能持ち同士の婚姻が主だろうし。


「<ファイヤーボール>、<ファイヤーボール>、<アースボール>、<ウインドボール>、<ライトボール>!」

って行き成り魔法連発してどうしたジェイク君。


“カキン、パコン、パカン、スパン、スッパーン”

あ、デカスライムに打ち返されてるじゃん、ジェイク君フラフラじゃん。そりゃ初めての魔法行使であれだけ連発したらそうなるわな。

魔力枯渇、ようはガス欠。ジェイク君、君はよく頑張った、骨は拾ってあげよう。


「うおおおおおおおおおおお!!」

フラフラになりながらも木刀構えて突進って、流石勇者様<真性>、(おとこ)だね~。


“ボヨ~ン“

ふっ飛ばされちゃった、ジェイク君、気を失っちゃったかな?お疲れ勇者様(笑)、今はよくお休み。


「おいっす大福、久しぶり~。なんか遊んで貰っちゃったみたいじゃん」

“ポヨンポヨンポヨン♪”


「楽しかったんかい、そりゃよかった。それじゃ、ジェイク君が遊んで貰ったお礼にいつもの魔力水を上げよう。口を開きな」


俺がそう言うとパカッと窪みを作るデカスライム。俺はその窪みに掌を向けて<ウォーター>と唱えるのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ