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3/5

整理整頓の真の力

1時間の休憩が終わった。


法廷が再開される。


(こーんこーんこーん!静粛に!!!!!)

リングに、スーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が現れ、

リングの中央の椅子に座る。


会場はシーンとする。


突然、画面で見たリングの上側にスポットライトが当たる。


(では再開します)

とスーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が挨拶をした。


(きーん)

マイクのハウリング音が会場に響く。

「えっと、なんだっけ」

と裁判所長官は言った。


「整理整頓の仕方はチートかどうかだと思います」

と被告神Aは手を上げた。


「あぁそうか。ありがとう」

と裁判所長官は言った。


被告神Aは会釈をした。


弁護神は手を上げた。


裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「整理整頓ナビを与えられた者は、その能力を、人のために活用しました。

例えば、整理整頓の技術を使い、学力の低かった子供たちの学力を上げ、補助金が停止されかねなかった状況を打破し、貧困の連鎖を食い止めました」

と弁護神は言った。


(おー)

会場から歓声が聞こえた。


「なるほど、整理整頓の技術を教育にまで応用したと。

それはなかなか感心な心がけですね」

と裁判所長官は言った。


検察神は手を上げる。

裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「それこそが問題なのです」

と検察神は言った。


(それこそが問題。どういうことだ)

会場がざわついた。


「創意工夫が問題だと。それは文化への反逆である」

と弁護神は机をたたく。


「検察神、言ってみなさい」

と裁判所長官は言った。


「一般的に整理整頓というのは、モノを片付け、便利にするための行為です。

それを拡大解釈し、教育に活用し、その国の要職にまで昇りつめるとは、通常ありえません。

なにかきっと小細工があるはずです」

と検察神は言った。


「ふむふむ。なるほど。たしかに整理整頓で、国の要職にまで昇りつめるとは考えにくい。

被告神A。なにか小細工をしたのですか?」

と裁判所長官は尋ねた。


「哀れだったので、ナビを与えたまで」

と被告神Aは言った。


「なにか特殊な加護を付与したに違いない」

と検察神は指をさした。


「長官殿。検察神の見解は憶測に過ぎません」

と弁護神は言った。


「検察神。発言を控えなさい。しかし何故整理整頓で、国の要職まで昇りつめることができたのでしょう。そうだ。掃除人に聞きましょう」

と裁判所長官は言った。


突然控室がモニターに映し出される。

控室にいた50人の掃除人は、みな動揺している。


「君たちの中に、何故整理整頓で、国の要職まで昇りつめることができたか説明できる者はいるかね。良い答えが出たら、掃除人全員に、おにぎりを一つずつあげよう」

と裁判所長官は言った。


(うぉー。おにぎりだ!!!!)

控室は沸く。


掃除人たちは相談をはじめた。

10分ほど経ち、

師匠が説明をすることで落ち着いた。


「私がお答えします」

と師匠は言った。

裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「整理整頓とは、一般的にモノを片付ける能力の事を指します。

しかし整理整頓は、それだけではないのです」

と師匠は言った。


「どういうことだ。言ってみろ」

と検察神は言った。

裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「話を断片的に聞いておりますと、戦時中だった。国を立て直した。学力を上げた。戦争に勝った。そのなかで結果を出されていたようです。これは間違いないですか?」

と師匠は尋ねた。


「君の言う通りだ。続けたまえ」

と裁判所長官は言った。


「戦時中、国の混乱期、学力の低下。これらに共通するポイントがあります。

それはシステムの混乱です」

と師匠は言った。


(システムの混乱……、どういうことだ)

会場がざわつく。

裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「例えば、部屋がぐしゃぐしゃになっていたとします。日々スムーズに生活ができるでしょうか?できませんよね。しかし整理整頓がされていれば、どうでしょう。スムーズに生活できるのではないでしょうか?」

と師匠は言った。


会場がシーンとしている。


「長官殿、話が抽象的すぎます」

と検察神は訴えた。


「具体例をあげられるなら、あげなさい」

と裁判所長官は言った。


「では学力でいきます。これは想像ですが、知識の整理整頓を行ったものと想像します」

と師匠は言った。


会場がシーンとしている。

皆が師匠の発言を待っているかのようだった。


控室では、小さくおにぎりコールが起こっていた。


師匠のこめかみに、汗が光っていた。

緊張しているのだろうか。

ムリもない。

掃除人50人のおにぎりがかかっているのだから。


裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「学校教育において、知識とは連鎖的に身につくもの。いわばハシゴのようなものです。一段一段確実に昇っていかないといけない。

例えば、九九が理解できていない子に、いきなり分数を教えても理解できません」

と師匠は言った。


裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


師匠はフルーツ牛乳を飲んだ。

(じゅるじゅるじゅる。じゅー)

フルーツ牛乳が空になる最後の断末魔の悲鳴が聞こえた。


遠くからフルーツ牛乳がリレー形式で、

師匠のもとに届けられる。

なんという結束だ。

これが掃除人の。

いやおにぎりの力なのか。


師匠はフルーツ牛乳にストローを差し、

一気に吸った。


「しかし、皆がハシゴを昇れるとは限りません。途中の一段でボーっとしていたとか、体調が悪かった。説明が理解できなかった。そんな理由で途中から昇れなくなるのです」

と師匠は言った。


「それで、なぜ整理整頓が効果的なんだ」

と検察神は言った。


会場はシーンとしている。

時計の針の音がやけに大きく聞こえる。


裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。


「整理整頓をすることで、その昇れなくなった段を特定することができるのです」

と師匠は言った。


師匠のこの一言で、

会場は再びざわめいた。



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