整理整頓の真の力
1時間の休憩が終わった。
法廷が再開される。
(こーんこーんこーん!静粛に!!!!!)
リングに、スーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が現れ、
リングの中央の椅子に座る。
会場はシーンとする。
突然、画面で見たリングの上側にスポットライトが当たる。
(では再開します)
とスーツ姿で大仏のマスクをかぶった人物が挨拶をした。
(きーん)
マイクのハウリング音が会場に響く。
「えっと、なんだっけ」
と裁判所長官は言った。
「整理整頓の仕方はチートかどうかだと思います」
と被告神Aは手を上げた。
「あぁそうか。ありがとう」
と裁判所長官は言った。
被告神Aは会釈をした。
弁護神は手を上げた。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「整理整頓ナビを与えられた者は、その能力を、人のために活用しました。
例えば、整理整頓の技術を使い、学力の低かった子供たちの学力を上げ、補助金が停止されかねなかった状況を打破し、貧困の連鎖を食い止めました」
と弁護神は言った。
(おー)
会場から歓声が聞こえた。
「なるほど、整理整頓の技術を教育にまで応用したと。
それはなかなか感心な心がけですね」
と裁判所長官は言った。
検察神は手を上げる。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「それこそが問題なのです」
と検察神は言った。
(それこそが問題。どういうことだ)
会場がざわついた。
「創意工夫が問題だと。それは文化への反逆である」
と弁護神は机をたたく。
「検察神、言ってみなさい」
と裁判所長官は言った。
「一般的に整理整頓というのは、モノを片付け、便利にするための行為です。
それを拡大解釈し、教育に活用し、その国の要職にまで昇りつめるとは、通常ありえません。
なにかきっと小細工があるはずです」
と検察神は言った。
「ふむふむ。なるほど。たしかに整理整頓で、国の要職にまで昇りつめるとは考えにくい。
被告神A。なにか小細工をしたのですか?」
と裁判所長官は尋ねた。
「哀れだったので、ナビを与えたまで」
と被告神Aは言った。
「なにか特殊な加護を付与したに違いない」
と検察神は指をさした。
「長官殿。検察神の見解は憶測に過ぎません」
と弁護神は言った。
「検察神。発言を控えなさい。しかし何故整理整頓で、国の要職まで昇りつめることができたのでしょう。そうだ。掃除人に聞きましょう」
と裁判所長官は言った。
突然控室がモニターに映し出される。
控室にいた50人の掃除人は、みな動揺している。
「君たちの中に、何故整理整頓で、国の要職まで昇りつめることができたか説明できる者はいるかね。良い答えが出たら、掃除人全員に、おにぎりを一つずつあげよう」
と裁判所長官は言った。
(うぉー。おにぎりだ!!!!)
控室は沸く。
掃除人たちは相談をはじめた。
10分ほど経ち、
師匠が説明をすることで落ち着いた。
「私がお答えします」
と師匠は言った。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「整理整頓とは、一般的にモノを片付ける能力の事を指します。
しかし整理整頓は、それだけではないのです」
と師匠は言った。
「どういうことだ。言ってみろ」
と検察神は言った。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「話を断片的に聞いておりますと、戦時中だった。国を立て直した。学力を上げた。戦争に勝った。そのなかで結果を出されていたようです。これは間違いないですか?」
と師匠は尋ねた。
「君の言う通りだ。続けたまえ」
と裁判所長官は言った。
「戦時中、国の混乱期、学力の低下。これらに共通するポイントがあります。
それはシステムの混乱です」
と師匠は言った。
(システムの混乱……、どういうことだ)
会場がざわつく。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「例えば、部屋がぐしゃぐしゃになっていたとします。日々スムーズに生活ができるでしょうか?できませんよね。しかし整理整頓がされていれば、どうでしょう。スムーズに生活できるのではないでしょうか?」
と師匠は言った。
会場がシーンとしている。
「長官殿、話が抽象的すぎます」
と検察神は訴えた。
「具体例をあげられるなら、あげなさい」
と裁判所長官は言った。
「では学力でいきます。これは想像ですが、知識の整理整頓を行ったものと想像します」
と師匠は言った。
会場がシーンとしている。
皆が師匠の発言を待っているかのようだった。
控室では、小さくおにぎりコールが起こっていた。
師匠のこめかみに、汗が光っていた。
緊張しているのだろうか。
ムリもない。
掃除人50人のおにぎりがかかっているのだから。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「学校教育において、知識とは連鎖的に身につくもの。いわばハシゴのようなものです。一段一段確実に昇っていかないといけない。
例えば、九九が理解できていない子に、いきなり分数を教えても理解できません」
と師匠は言った。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
師匠はフルーツ牛乳を飲んだ。
(じゅるじゅるじゅる。じゅー)
フルーツ牛乳が空になる最後の断末魔の悲鳴が聞こえた。
遠くからフルーツ牛乳がリレー形式で、
師匠のもとに届けられる。
なんという結束だ。
これが掃除人の。
いやおにぎりの力なのか。
師匠はフルーツ牛乳にストローを差し、
一気に吸った。
「しかし、皆がハシゴを昇れるとは限りません。途中の一段でボーっとしていたとか、体調が悪かった。説明が理解できなかった。そんな理由で途中から昇れなくなるのです」
と師匠は言った。
「それで、なぜ整理整頓が効果的なんだ」
と検察神は言った。
会場はシーンとしている。
時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
裁判所長官は手を差し出し、発言をうながす。
「整理整頓をすることで、その昇れなくなった段を特定することができるのです」
と師匠は言った。
師匠のこの一言で、
会場は再びざわめいた。




