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1/5

一柱目

「神は外界に干渉しすぎてはいけない」

それが神の国のルールだった。

そして、その掟を破ったものは、神といえども裁かれる。

これは、外界に干渉しすぎた神々が裁かれる――その裁判記録である。


前世で私は、世界一有名な掃除屋だった。


書いた本は全世界的なヒットとなり、

お掃除御殿と言われる立派な家を手に入れ、

パートナーもでき、幸せの絶頂だった。


しかし散歩中、パンをくわえて全力疾走するおっさんに突撃された。

私は川に落ち、岩に頭を打ち――亡くなった。


そして、私は目覚める。

「あぁようやく来た。掃除人が足りてないんだ。頼む、やってくれ」

そう言われた。


その場所とは、神の国の裁判所だった。


まぁ良い。掃除ができるなら。

私はそう思った。


裁判所の入り口には、

108体の福助人形が鎮座していた。

左右に54体ずつ。

中央を歩くと、福助人形の視線とあうようにできていた。


シュールだが、少し異様な圧迫感があった。


裁判所では、私のほかに49名の掃除人が働いていた。

いずれも前世では、掃除の世界で名を残した者たちらしい。

私はそこで先に亡くなった師匠とも再会した。


話を聞くと、前任者がこの仕事に嫌気がさし、逃亡したらしい。

この裁判所では1年に一度は誰かが発狂するそうだ。

先々不安である。


……

(こーんこーんこーん)

突然大きな音がした。


「そろそろ始まるぞ」

と師匠は言った。


「何がですか?」

と私は尋ねた。


「あぁ初めてだったな。法廷だ。見に行こう」

と師匠は言った。


「仕事中なのに、見に行っていいのですか?」

と私は尋ねた。


「この国ではな。神々どうしの裁判が、一番の娯楽なんだ。だからその間は、使用人である人間達も、全員休憩をもらえる。さぁ行くぞ」

と師匠は言った。


私は師匠についていった。

私たちは、使用人たち用の控室に入る。

そこには大きなモニターが設置され、

もうすでに多くの使用人たちで埋め尽くされていた。


モニターには法廷が映し出される。

えっ、これが法廷。

私はあぜんとした。


「あれ、プロレスリングじゃないですか?」

と私は尋ねた。


「そうだ。ここでは法廷は赤コーナーと青コーナーにわかれて戦うんだ」

と師匠は言った。


神々がプロレスリングで、法廷闘争をする。

発想が斜め上すぎて、ついていけていない。


(キーン)

とつぜんマイクのハウリング音がした。


(これより第108法廷~外界干渉罪の裁判を行う)

アナウンスが入る。


(うぉー!!!!!!)

控室では使用人たちが熱狂している。

隣の師匠の顔も興奮に満ちている。

こんな師匠の顔を私は初めて見た。


(赤コーナー!神国検察神代表タイホヤネーン!!!!!)

法廷の熱気が一段とあがる。


赤コーナーにスーツ姿の人物が現れた。

顔は大仏のマスクのようなものがかぶせられている。


(うぉー!タイホヤネーン。今日も切れ味いい。断罪見せてくれ)

使用人たちが叫ぶ。


(青コーナー!神国弁護神代表マモルーデ!!!!!)

ごんごんごんごん。

足元を踏み鳴らす音が聞こえる。


青コーナーにスーツ姿の人物が現れた。

こちらも顔は大仏のマスクのようなものがかぶせられている。


(マモルーデ!今日もキレキレの弁護見せてくれ)

使用人たちが手を叩く。


「すごい熱気ですね。しかし……。なぜ大仏の顔をしてるのですか」

と私は尋ねた。


「あぁあれはな。去年は福助だったんだが、今年は大仏の顔なんだ」

と師匠は答えた。


ちょっと想像していた答えと違う。まぁいい。いずれ知ることもあるだろう。


(こーんこーんこーん!静粛に!!!!!では被告神A)

リングにスーツ姿に大仏のマスクをかぶった人物が現れ、

リングの中央の椅子に座る。


会場はシーンとする。


突然、画面で見たリングの上側にスポットライトが当たる。


(今回の裁判は、私裁判所長官のサイバーンカーンが取りしきらせていただく)

とスーツ姿に大仏のマスクをかぶった人物が挨拶をした。


どうも、

裁判では皆この恰好でやるらしい。

なんだろう。

プライバシーへの配慮なのだろうか。

そうか被告神Aという名前も、

本来なら人物名を入れるはず。

やはりプライバシーなんだろう。

私はそう理解した。


……


「では訴えを聞きましょう」

と裁判所長官は尋ねた。


検察神は手を上げる。

裁判所長官はうなづき、手をさしだす。


検察神は会釈をした。

「罪状は外界干渉罪。転生者に不要なナビシステムを与えた罪です」

と検察神は言った。


「異議あり」

と弁護神は手を上げた。


「却下します。被告神Aに尋ねます。転生者に不要なナビシステムを与えたのは事実ですか?」

と裁判所長官は尋ねた。


「不要かどうかは判断がつきませんが、ナビシステムを与えたのは事実です」

と被告神Aはうなだれた。


会場がざわつく。

(こりゃすぐに勝負がつくな)

そんな声が聞こえた。

隣を見ると、師匠が目を輝かせている。


「検察神。具体的にはどのようなシステムを与えたのですか?」

と裁判所長官は尋ねた。


「整理整頓の仕方を教えてくれるという精霊を与えました」

と検察神は答えた。


会場がざわつく。

(整理整頓の仕方がチート?)

そんな声が聞こえた。

師匠は腕を組んで考えている。


「長官殿、整理整頓の仕方はチートではありません」

と弁護神は叫んだ。


「弁護神。許可のない発言は控えるように」

と裁判所長官はぐっと睨みつける。


「検察神。君たちは、整理整頓の技術を教えるナビシステムをチートだというのかね」

と裁判所長官は尋ねた。


「長官殿。この転生者は、もと汚部屋の住人でした。つまり整理整頓などできない者。その者にナビシステムを与え、補助するのは外界干渉ではないでしょうか」

と検察神は言った。


「弁護神、君はどう思うかね」

と裁判所長官は尋ねた。


「整理整頓は、どの時代にもある技術です。いうなれば、本でも読めば身につくもの。それをチートだと主張するのは道理に反します」

と弁護神は答えた。


「被告神Aに問う。このケース。外界干渉に値するとは思わなかったのかね」

と裁判所長官は尋ねた。


「この者は、汚部屋の住人でして、ゴミが片付けられず、最終的に圧死しました。

転生後の世界でも同じことを繰り返されては、困ると思いました」

と被告神Aは言った。


「そうだね。我々は魂の成長をうながす立場だからね」

と裁判所長官は顎をさわった。


「長官殿。その転生者は、その技術を使い、王国の軍事の兵站の責任者につきました。そして戦争にも勝利したのです。これは明らかな外界干渉です」

と検察神は言った。


「異議あり。検察神は発言の許可を得ておりません」

と弁護神は指をさした。


もし「続きを読んでみたい」と思っていただけたら、

ブックマークしていただけるととても励みになります。


本作はすべて完結済みで、安心して最後まで読めます。


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