海防騎士団
「レナ!いるか!」
建物の外からレナを呼ぶ声が聞こえてきた。呼ばれる前に振り返るとは、獣耳というのは耳がいいのか、それともレナの何かを察する能力が高いのだろうか。レナはそのまま部屋を出ていき、ドアの向こう側にあるドアを上げる音が聞こえた。
しばらくすると、レナは先ほどの声の主を連れてきた。
「太平にゃん。レナの姉妹でレイにゃんなのにゃ。」
その姿は着ているもの以外はレナと全く同じ、二人の顔を見ただけではどちらがどちらだかわからない容姿をしていた。
「レナの姉のレイだ。この国の海防騎士団の団長をしている。」
「(語尾・・・。)」
突っ込むべきところがあるような気がしたが、どっちが正しいのかそれともどっちも正しいのかわからないのでグッと出かけた言葉を飲み込む。
「こいつが、砂浜にいた男か。」
「そうなのにゃ。日本っていう国の波止場から来た太平にゃんなのにゃ。一応海事組合の方に海難届を出しておくのにゃ。」
すでにこの時点で突っ込みたいところの二つ目出てきた。俺は「波止場」ではなく「波戸場」なのだ。どうやら俺の名字を港の波止場と勘違いしたようだが・・・。訂正するのも面倒なので放っておこう。
「レイにゃんのいる海防騎士団は港の警備や海賊の取り締まりをしているのにゃ。」
海難の件については海事組合が面倒を見てくれるということだが、海防騎士団は一体どういう関係があるのだろう。俺はレイのほうを見る。すると、レイも俺に穴が開くほど見てくるのだ。
「・・・。」
「まあ、最近このあたりに海賊は出ていないし問題はないだろう。この件は海事組合のほうに任せる。」
どうやら俺ははぐれ海賊の可能性も考慮されていたようだが、そこまで野蛮なナリはしていないしそんな凶悪なツラもしていない。一般的、模範的なただの日本人だ。
「わかったのにゃ。太平にゃんの面倒はこっちでどうにかするのにゃ。」
レナの言葉を聞いて、俺は大きく息を吐いた。自分の置かれた状況に不安しかなかったが、何とか保証された身分になったことに安堵したのだ。
・・・・・
俺は今、灯台から少し離れた岩場で釣りをしている。右を見れば砂浜の先にいつもの灯台が見える。
「太平。釣れたか?」
「全然だな。」
声をかけてきたのはオーシャ、俺を見つけてくれた男の子だ。そして振り返ると、もう二人、女の子と男の子がこちらにやってきた。
「つれないの?」
「太平下手くそなのか。」
二人も俺を見つけてくれた子供たちでソルトとシップだ。この三人はいつも砂浜で遊んでいるのだ。砂山を作ったり、水切りをやったり、貝殻を集めたりして遊んでいる。そして、この世界のことはほとんどこの子たちから教えてもらっている。違う島から来たから・・・。といえば、どんなことでも不審がられずに聞き出すことができるのだ。その後、三人と別れた俺はボウズのまま灯台に向かった。