そして
アナがいなくなってからどれぐらいの月日がながれたでしょうか。
それでも、ユッカのすがたは少年のままです。そして、かわらず『おとしものあずかり屋』にはだいじなものをおとした人がやってきます。
あれからヴァロもいなくなりましたが、ピアはまだいます。そして、あたらしくちいさな子犬のマッティがなかまにくわわっていました。大きかったヴァロとちがってマッティはいつもくるくる走りまわっています。
お店の赤いドアがあいて、お客さまがはいってきました。マッティがわんわんと出むかえます。
やってきたのは、ひとりのおばあさんでした。
「いらっしゃいませ」
ユッカはえがおでお客さまをむかえ、そしてたずねました。
「おさがしのものはなんですか?」
おばあさんはこたえました。
「だいじなひとを……」
そこでユッカはまじまじとおばあさんのかおをみて、そして何かに気づいたようにハッとしました。
おばあさんはそんなようすのユッカにかまわず話しだします。
「両親はもうとっくに天に召されたし、弟と、あと妹も結婚して、こどもも生まれて、そのこどもも結婚していまはまごもいるわ。もうわたしにあちらにおもいのこすことはないの」
「……きみの、かぞくは?」
「わたしは結婚しなかったの。でもおいやめいにかこまれてさびしくはなかったわ。でも、でもね、やっぱりどうしても、なくしたくないものがあったの」
おばあさんはぽろりとなみだをこぼしました。
ユッカはたまらず、おばあさんの手をにぎりました。
すると、おばあさんはみるみるわかがえって、ひとりの少女のすがたになりました。
「ユッカ、またわたしをこの店においてくれる?」
ユッカはじぶんもなきそうになるのをこらえて、えがおを作っていいました。
「もちろんだよ。おかえり、アナ」
もしも、あなたがだいじなだいじなものを、どこかにおとしたりなくしたりしてしまったときは、目をつぶってそのだいじなもののことをぎゅうっと強く心に思ってください。そうして、目をあけたら、この道をまっすぐ歩いてふたつめの角を曲がります。すると赤い屋根と赤いドアのお店があるので、そこで、そのだいじなもののことを聞いてみてください。
きっと、そのお店であずかってくれているでしょう。
おしまい