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普通の妹がお兄ちゃんを改造してみた。  作者: 釧路太郎
魔法使い編

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第八十四話 マッサージのあと

 うまなちゃんとイザーちゃんが動けない理由。

 それはとても単純なことで、気を付けていれば絶対に起こるはずのないミスだった。


「ねえ、これ動かせないんだけど。どうして動かせないの?」


 怒りと悲しみが同時に出てきたような声でうまなちゃんは叫んでいたが、私もお兄ちゃんもうまなちゃんを助けることが出来なかった。

 私たちには神様の物を動かすという事が出来ないのだ。


「助けたいとは思うんだけど、私もお兄ちゃんもそれを動かすことは出来ないんだよ」

「え、ちょっと、動かすことが出来ないってどういうこと?」

「うまなちゃんを包んでるソレって、神の世界の物なんだと思う。だから、私もお兄ちゃんも動かすことが出来ないんだよ。ごめんね」

「ごめんねって言われても困るんだけど。ねえ、どうにかならないの?」

「私たちじゃ本当に無理なんだよ。助けたくても助けられないからね」

「じゃあ、さっきの人を呼んできてよ。私とうまなちゃんにマッサージしてくれた人なら動かせるよね?」


 うまなちゃんはこちらを向けないので私がどんな顔をしているのかわからないと思うんだけど、本当に申し訳ないという気持ちを込めて声を作って話を続けた。

 顔が見えていないんだから大丈夫だとは思うけど、思わず笑ってしまわないように細心の注意を払って気を付ける事にした。


「それも出来ないんだ。お兄ちゃんが全員殺しちゃったから」

「ちょっと待って。殺したってどういうこと。全然意味がわからないんだけど。ねえ、何がどうなっているの?」

「ちょっとした行き違いがあってね。事故みたいなもんだと思ってくれたらいいんじゃないかな。でも、お兄ちゃんも悪気があったわけじゃないって言うのはわかってほしいな」

「いや、全然わかんないんだけど。そもそも、ちょっとした行き違いで全員殺すとか物騒すぎるでしょ。ちょっとした行き違いって、いったい何があったの?」

「詳しいことはお兄ちゃんが話してくれると思うから、ちょっとだけ待っててね」


 本当はお兄ちゃんは誰も殺してなんてないし、さっき出ていった白衣の人も呼べばすぐに来てくれると思う。うまなちゃんとイザーちゃんの事をピッタリとつつんでいるアレも頼めばすぐにとってくれると思うんだけど、そうしないようにと私がお願いしているのだ。神がこの世界に永遠に戻ってくることが出来ないようにするのと、私の簡単なお願いを聞いてもらうのを選んだだけなのだ。

 白衣の人達がどちらを選んだのかなんて一目瞭然だと思うが、そんな事を知るはずもないうまなちゃんはありったけの力を振り絞って抗おうとしている。もちろん、うまなちゃん程度の力では神の力を覆すことなど出来ないので無駄な抵抗なのだが、そんな風に力を使っている姿を見るのは中々に愉快であった。


 お兄ちゃんは黙って私の話を聞いてくれていたし、私の気持ちを読んでこれからどうすればいいのか考えて行動してくれるようだ。

 こんな時だけ私の気持ちをしっかりと理解してくれるのはどうかと思う。普段の私の思いにも気付いてくれたっていいんじゃないかなと思うけど、気付いているからこそ気付かないふりをしているという可能性も少なからずあったりするんだろうね。

 賢くて優秀なお兄ちゃんは私の作った雑な設定にもしっかりと乗ってくれるという安心感はある。

 でも、私がずっと思っている事には絶対に応えてくれないという。


「最初は気持ちよくマッサージをしてくれていたんだ。それはうまなちゃんもわかってると思うんだけど、途中から俺の足を強くグリグリとおし始めてきたんだよ。本当に最初のうちは強く押されるのも気持ちいいもんだと感じていたけれど、途中から足をもぎ取ろうとしているんじゃないかと思うくらいに強く棒で押し始めてきたんだ。その時に俺は思ったんだよ。こいつらは、俺にマッサージをしに来たんじゃなくて、俺に苦痛を与えるためにやってきたんだとね」

「足ツボなんて私はやられてないよ。まー君だけ特別にしてもらえたの?」

「多分そうなんだと思う。男女別に特別なマッサージがあるって言ってたし、ゆまに聞いてみたら俺がやっていないヘッドスパを受けてたんだってね」

「あ、それは私もやってもらったよ。その辺までは記憶があるんだけど、あまりにも気持ち良くて寝ちゃってたみたい」

「そうなんだよ。そこが問題だと俺は思ったんだ。俺一人だけ足ツボを押されて痛みに耐えているというのに、横を見たら気持ちよさそうにしているゆまの姿が目に入ったんだ。今になって考えるとそれは間違いだったと気付けたんだけど、その時はそれが正しいと思ってしまった。こいつらは、ゆまたちには気持ちよくリラックスさせているのに、俺の事は殺そうとしている悪魔だと。神に仕えていると言いつつも、その心は悪魔に魂を売ってしまったんだとね。だから、俺はこいつらを全員殺してしまったんだ」


 お兄ちゃんの話に言葉を失ったのはうまなちゃんだけではなく私もだった。

 即興でこんなことを思いつくのも凄いと思うけど、全く疑うそぶりを見せないうまなちゃんもどうかと思う。


「気持ちはわかるけど、全員殺すってのは良くないと思うな。確かに、足ツボは相手を殺したくなることもあると思うけど、やっぱり全員殺すのは良くなかったと思うな。私たちを助ける人がいなくなったからっていうのではなく、単純に全員殺すってのはやりすぎだと思うよ」

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