第二十二話 わからない時は他の人に助けてもらおう
お兄ちゃんは完璧に二人を見分けていた。
着ぐるみを着て登場したときは即答こそ出来なかったものの、五分ほど悩んで完璧に見極めていた。
本当に気持ち悪いくらい正確に二人を見分けていたのだ。
「どうしてそこまで正確に見分けることが出来てるの?」
「それを答えてしまったら対策をとられてしまうと思うんで言えないかな」
「対策は十分に立てていたつもりなんだけど、それでもまだ足りていないってことなのかな?」
「でも、私たちがあなたに見分けられても見分けられなくても何の問題も無いんだけど。ここまで正確に当てられちゃってるってことを考えると、ただただ気持ち悪いなって感想しかないんだよね。申し訳ないけど、ここまで充てられるのって気持ち悪いなとしか思えないんだよ」
「悪いけど、私も兄貴にこんな特技があるってのは知らなかったよ。でも、その特技って凄く気持ち悪いものだなって思う。だって、私が見てもわからないくらいの差を兄貴は感じ取っているってことだと思うし、こんなにきれいなお姉さんたちの事をそこまで真剣に見ているってのは本当に気持ち悪いなって思っちゃうよ。でも、こんなにきれいなお姉さんたちだからこそ真剣に見ていたいって気持ちは少しだけ理解出来るんだけど、それを考えても兄貴のやっていることは本当に気持ち悪いよ。見分けている理由を隠しているところも、凄く気持ち悪いって感じちゃう」
私は当然お兄ちゃんの事を気持ち悪いって思っているし、うまなちゃんとイザーちゃんもお兄ちゃんの事を気持ち悪いって思っているだろう。
それは仕方のない事であるし、見分けている理由を言わないお兄ちゃんが悪いんだから仕方ないことだとも思う。
だからこそ、お兄ちゃんが何を基準に見分けているのか教えてもらいたい。
それは、三人が共通して考えていることだと思う。
うまなちゃんとイザーちゃんからはズバッと切り出すことが出来ないと思うし、ここは可愛い妹である私が責任をとってお兄ちゃんから聞き出すしかない。私のお願いなら聞いてくれると思うし、聞いてもらえるようにお願いするだけだ。
「兄貴が何を基準にうまなちゃんとイザーちゃんの事を見分けているのか教えてもらっていいかな?」
「それを言ったらドン引きされちゃうと思うから言いたくないんだけど」
「大丈夫。今でも十分にドン引きしているから。ちょっとやそっとの事で今よりもドン引きすることはないと思うよ。さあ、恥ずかしがってないで、思い切って言ってみてよ」
「そうよ。私もイザーちゃんも見分けてるポイントを知りたいだけなんだから。二人はそっくりだって自認があったんだけど、そうじゃなかったって理由を知りたいだけなんだよ」
「私もうまなちゃんも今よりももっともっとそっくりになりたいって思ってるからね。その願いをかなえるためにも、どこを見て見分けているのか教えてもらいたいな」
「今ならまだ気持ち悪いだけの兄貴で済むと思うよ。時間が経てばたつほど気持ち悪さは増していくと思うし、内緒にしておきたいって言うんだったらまさ先輩に兄貴が何を隠しているか聞くだけだからね。もちろん、まさ先輩が他の人にどんな聞き方をするのかは関与なんてしないけど」
「ちょっと待ってもらっていいかな。まさ先輩を使うのってズルくないかな?」
「別にズルくはないと思うよ。兄貴とまさ先輩が友達なのとは別に私もまさ先輩とは友達だからね。悩み事があって友達に相談する乗って変な事じゃないと思うんだけど」
お兄ちゃんはそこまで世間体を気にするタイプではないと思うけど、まさ先輩が持っている人脈をフルに使って自分の事を探られるのは嫌だろう。まさ先輩自身には悪意がないものの、まさ先輩の手伝いをする人たちから向けられる悪意には耐えることが出来ないと思う。私もお兄ちゃんもまさ先輩とお友達ではあるけど、他のお友達から私たち二人はあまりよく思われていないという事は自覚しているのだ。
まさ先輩が私とお兄ちゃんの頼みをどんな事よりも優先してくれることは皆知っているけど、その理由が何なのかは誰も知らないし知ることもない。私はまさ先輩のとんでもない弱みを握っているだけなんだけど、たぶんお兄ちゃんもその事を知っているとまさ先輩は思っているに違いない。そうでなければ、まさ先輩とお兄ちゃんが仲良くしている理由もないのだ。
だからと言って、まさ先輩が私よりもお兄ちゃんの頼みを優先するという事はなく、あくまでも私の頼みを優先して聞いてくれる。あくまでも、弱みをしっかりと握っている私の事を一番に考えてくれているという事なのだ。
何も知らない周りの人達からは私は嫌われているのかもしれないけど、私に対して直接何か危害を加えようものならまさ先輩からどんな反応をされるのかわからないだろうし、そんなことも想像なんてしたくないだろう。だから、表立って私をどうにかしようとするような人はいないのだ。
なので、まさ先輩から何かを頼まれたという免罪符をもって私たち二人の事を徹底的に調べ上げ、悪意を持って報告する可能性を捨てきることが出来ない。
そんな事をする人なんていないかもしれないが、悪い意味で勇気を出す人がいないとも限らないのだ。
まさ先輩がお友達を頼ってお兄ちゃんの事を調べる事になると、私だけが知っているお兄ちゃんのあの秘密やあんな秘密も白日の下にさらされてしまうだろう。
そうなった時、お兄ちゃんはこの世から消えてしまいたいと思うのかもしれないな。




