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新米探偵助手は読者の推理が頼りです!  作者: マフィン


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19/25

犯人はあなただ!岩倉さん!その1

 私の目の前には、容疑者四名が横一列で並び、こちらをみていた。それぞれ想い想いの表情でこちらを眺めている。私は、彼らが果たして何を考えているのかは、考えないことにした。


 せっかくの決断に揺らぎがあってはいけない。


 「探偵さん、我々を全員呼び出したということは、犯人が分かったということですか?」


 緊張のせいで私が沈黙を作り出している中、岩倉が本題に切り込んでくれた。


 皆私に羨望のまなざしを送っている。


 「ええ、ですので、ここからは私のこの事件の見解をお話ししたいとお思います」


 「お願いします」


 岩倉がそういうと、ほかの三人も軽く会釈をしながら、私の話に耳を傾けた。こんな空気の中で、今から話す内容に切り込むのは少々気が引けるが、私は思い切って話を始めた。


 「さて、まずそもそも私は一つ間違えていることがあったんです」


 「間違えていることですか?」


 岩倉が復唱した。


 「ええ。私は・・・もしかしたらここにいらっしゃる皆さんもそうかもしれませんが、青柳さんは毒化したパナケイアを飲まされて被害に遭われたと思っていました」


 私はそう言いながら次の質問をどちらにしようか悩んだ。だが、ここはひとまず揺さぶりをかけていく必要がありそうだ。


 「ですが岩倉さん」


 「はい・・・」


 岩倉は少し不思議そうな表情をしている。


 「クルゲン酸が製造過程において糖と混ざると、猛毒になるとのことでしたが、それを摂取した人間はどのくらいで死に至るのでしょうか?」


 「摂取してから数分で、死に至ってしまいます」


 岩倉は何のためらいもなく答えた。


 「それがどうかなさったのですか?」


 私はどう説明しようか悩んだ。


 「実は、私はどうしてもこの猛毒という表現が気になっていたんです。そこで皆さんをこちらへお呼びする前に、勝手ながら御社のデータベースにアクセスさせていただきました」


 こういうことは淡々と素早く言い切ってしまうことが良いと、さっき探偵に教わった。正直ちゃんと日本語を発せられていたか定かではない。


 いや、でも一層のこと発せられていない方がいいかもしれない。


 「ちょっとどういうことですか?」


 声を発したのは高瀬だった。だが、私は彼がそんなことを言うのは意外だった。どちらにせよその発言を誰がしたとしても、私は無視をして話をし続けなければならない。


 「それによると、開発中のマウス実験では、猛毒パナケイアを摂取したマウスは、わずか10秒後に死に至りました。これは人間に換算すればおよそ一分から二分ほど。しかし、そんな猛毒を摂取したであろう青柳さんは事件の発生からすでに三十分以上も経過しているにも関わらず、体調不良を訴えたものの、まだご存命でいらっしゃいます」


 私の説明を聞いて、岩倉の表情が固まっていた。何か思うことがあるのだろうか?私はさらに推理ショーを続けた。


 「そこで私は一つの仮説にたどり着きました」


 私のこの一言で、彼はさらに私の話に耳を傾けたのが分かった。私は、ゆっくりとまるで大きな槍で思いっきり確信をつくつもりで、力を込めながら言い放った。


 「そもそも、青柳さんは、猛毒になったパナケイアを飲んでいないのではないか?いやなんなら、パナケイアそのものすら飲んでいないのではないかと」


 私も逆の立場なら気がふれたと思うであろう。だが、私はそう結論づけたのだ。


 「いやいや、確かにあの時青柳さんはパナケイアを飲んでいたじゃないですか?」


 岩倉もやはり私が推理のし過ぎで錯乱していると思っていることが、口調と表情で明らかだった。


 「そうおっしゃるのであれば岩倉さん。まだ残っているそこのパナケイアを飲んでみていただけませんか?」


 岩倉の顔から血の気が引くのを感じた。


 「は?ちょっと待ってください。もしあなたの推理が外れていたらどうするんですか?」


 「あなたは猛毒を摂取して死に至るでしょう」


 「軽く言うねぇ」


 岩倉が小さくつぶやく。


 やはり人は死が直面すると、本能が勝手に自己防衛の行動をとらせるのかもしれない。なにせ彼は事前に確認をしていたメンバーの一人のはずなのにこの様だ。自分を信じ切ることができなくなっている。


 「まぁ仮に私の推理が外れていたとしても、現に摂取してしまった青柳さんはご存命でいらっしゃるので・・・」


 「分かった、分かった、飲みますよ!」


 岩倉はそういうと、目をつぶりながら勢いに身を任せて、グラスに残っているパナケイアを飲み干した。


 その瞬間岩倉の表情にゆがみが見えた。それこそ、あの時、私が青柳に対して抱いたあの表情のゆがみと同じである。


 「あれ?」


 ほかの三人も心配そうに岩倉を見守っている。会場は緊張の静けさが張り詰めていた。


 「麦茶?」


 その沈黙を破ったのはなんとも間の抜けた一言だった。


 「麦茶ってどういうことですか?」


 高瀬も岩倉の一言に混乱している様子だった。だが、私はそれよりも自分の推理があっていたという嬉しさを押し殺すので精いっぱいだった。

お読みいただきありがとうございます。ぜひ評価、ブックマーク、感想をしていただけるとかなり励みになります。

よろしくお願いします。


第1話→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/1

岩倉その2→https://ncode.syosetu.com/n1110mi/23

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