■ 扉の向こうの魔獣人
その世界では15歳になると、ある儀式を受ける義務が存在する。それは生涯の伴侶となる生きものの選別と融合だ。
対象者が教会に設置されている異空間へと続く「扉」の前に立つと、おごそかな音とともに扉が開き、運命の相手が現れる。それは動物だったり植物だったりの生きものだ。
そして対象者は扉から出て来た生きものと、その場で融合しなければならない。拒否は許されなかった。そしてどんな生物と融合したかによって、その者の将来は大きく変わる。
融合者は「変身」する事により、その生きものの能力を発揮できるからだ。とくにレア生物の「魔獣」と融合できた者は、エリートと称される。
儀式に臨む少年ノルルトは期待に胸を膨らませていた。いま置かれている不遇な暮らしから抜け出す絶好の機会だからである。だが扉の向こうから現れたのは「豚」であった。しかも赤いブチのある醜い豚だ。
最悪である。豚は環境への適応能力が高い事だけが唯一の取り得であり、そのため過酷な環境での労働に駆り出される事が多い。当然、侮蔑の対象となる。
ノルルトが絶望の淵にあったその時、突然、教会が暴徒に襲われる。彼らは強制的な融合に反対する過激派で、儀式を妨害する事もしばしばであった。
ノルルトが暴徒に襲われそうになった時、生命の危機を感じた彼は初めての変身をするが、それは無能に近い豚人間の姿に過ぎなかった。しかし暴徒に嘲笑され、命を奪われそうになった時、豚人間は深紅のモンスターに二段変身する。
実はノルルトが融合した豚は豚ではなく、伝説の魔獣「デンシレル」であったのだ。彼によって瞬く間に暴徒は鎮圧されるが、混乱の中という事もあり、手柄は全てその場にいた猛獣との融合者のものとなる。物陰から一部始終を見ていたシスターは、何故か真実を語らなかった。
絶望と希望を同時に得た気弱な少年ノルルトと謎多き美少女シスターの、世界を救う波乱に満ちた旅が今始まる(かも知れない)。




