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実力ある異世界人を目指して〜憧れの悪役は実力隠してやりたい放題  作者: グレープファンタジーの朝井
7章 阻止任務

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206/210

206.うっかりちゃっかり

 残りの対戦回数が3回になった。準々決勝とかいうやつだ。もはやこれだけで上位8位。モブタくんは実にいい仕事をしてくれた。


 向かってくる貴族選手たちをダサい技名たちで一刀両断……は流石にやりすぎているので場外とかがほとんど。


 モブタくんが完全に力に目覚めていると勘違いしているのでこちらもやりたい放題。しかしながら次なる相手がどうも最悪の相手のようだ。今まで通りにはいかない。


「続いてはいよいよ準々決勝! ここからは勝ち上がった猛者たち8名による最上位争いとなります! ここまで食らいついている一般生徒がどこまで行くのか、会場も大いに盛り上がっていま〜す」


 一般生徒は2人のみ。モブタとマリアのみ。しかしマリアは実質貴族のようなものなのでノーカンだ。君こそ本物の一般ピーポーなのだよ、モブタくん。


「そして次なる戦いは魔法では敵無しとも言われるあの聖人エフィレ対、数々の強敵を派手な一撃で仕留め続けているモブタくんとなっておりま〜す。彼は一般生徒でありながらも8位となっていますが、ここで聖人エフィレと当たってしまうとは運がない!」


 もちろん勝つ気ではいる。一番懸念しているのは操っているのが僕だとバレること。魔法が得意な人にはバレるかもしれない。そういうリスクがあるからモブタくんの魔力以上の火力は控えておきたい。


 が、相手も相手だからそんな余裕ないかも。魔力で人を操るのにようやく慣れた感じだし、無理に出力あげると身体があらぬ方向に曲がって……。


「結局彼は上がってこなかった。(わたし)の思い違いだった?」


「何を言ってるのかさっぱりだが。最強となった俺の前に聖人はどう立ち向かうのか気になるぜ!」


 試合開始の合図がなった。ステージは荒廃した噴水広場のようだ。


「立ち回り方……。あなたのような雑魚に立ち回り方なんてないよ」


 エフィレの背後が光ったかと思えば無数の光の矢がモブタを何度も貫いた。魔力での防御は高いはずだがそれを弾かなかったとなればエフィレの攻撃は魔力の密度が僕の防御力より高いことになる。


 ぶっちゃけ今の攻撃を躱す反応速度は彼にはない。すなわち圧倒的な実力不足。今の一撃でモブタくんは気絶だろう。しかしこんなところでやられてもらっては困る。


「いきなり痛いな」


 僕のサポート全開で君には決勝に行ってもらう。


「気絶したかと思ったけど……その傷じゃ回復魔法をかけないと動けないでしょ。でも先手は打ってるから」


 回復阻害。闇の魔法も扱えるようだ。しかしこっちは魔法の種に恵まれなかった一般生徒。対策ぐらいはしている。


「封じてるのは光属性の魔法のみ。なら俺には無属性の回復手段がある」


 現代魔法と実践魔法じゃ構造そのものが違う。封じられたのは実践魔法の光属性。唯一回復手段を持つ属性の種ではあるものの、無属性の現代魔法でも回復する手段があることを彼女は知らないだろう。


「──増肉(カルティベーション)


 もともとこの現代魔法は作物を少しだけはやく育たせる魔法だが、高度な魔力制御により生物の細胞を活発にさせ、血肉を増やせるようになった。


 いわゆる改造魔法。


「私の知らない魔法。内側から再生するような魔法は見たことがない。興味あるっ……」


 ノールックで特級相当の混合魔法を連発する魔力回路の方が僕は気になる。


 炎・特級魔法(バルゼプトム)水・特級魔法(エラゼプトム)光・特級魔法(ラト・ゼプトム)を合わせて放ってくる。暴力の何者でもない容赦ない一撃一撃。近くにいるだけで炭になるほどの高温。光がモブタくんの皮膚を焦がしていく。


 高温となった高圧噴射の熱湯は触れれば再生しづらくなる。増肉の弱点に気がつくとは流石じゃないか。


「手加減は要らなそうだから古代魔法も使いたい……」


 古代魔法の術式……。最悪な戦いになりそうだが、どうやらモブタくんが僕に操られているのは気づいていないようだ。


「──共鳴する魔力の波動(ラ・セントネーゼ)


「古代魔法……」


 使ってきた。


 周囲の彼女の魔法の痕跡から嫌な気配が漂う。


 水が付着している地面から魔力球。燃えている地面からは不安定な魔力球が浮かび上がる。


「──バリア」


 単純な現代魔法では防げないことは確定だが……。どうやらエフィレは決着が着いたと確信しているようだ。


「これでおしまいだね」


 魔力球が共鳴するように波状に魔力を炸裂させる。うまく魔力が扱えない。加えてその衝撃で不安定な魔力球が崩れて大爆発する。


 操り糸が何本か持っていかれるほどの高火力。


 全力で防衛はしたがモブタくんの身体が消滅してないとは言い切れない。


「死んじゃったかな……もったいない。もう少し強かったら禁忌魔法も見せてあげれたのに……」


 操り糸は動く……。ならば!


「……」


 僕の位置からはエフィレを捉えている。何本か操り糸が持っていかれて視界の共有はできない。しかし本体は会場にいる。僕の目で直接見るのだ。


「っ……!?」


 黒い煙からモブタくんを抜け出させて彼女の腹目掛けて刃を振るう。明らかにエフィレが動揺しているのがわかる。


「……なんでっ」


 煙から飛び出したモブタくんは左腕が飛んでいって片目もあけられない酷い状態だ。身体も紫色に燃えていて今にでもセフル火葬できるほどの温度だ。


「……ぅ」


 エフィレは動揺しながらも防ぎきった。判断能力は野生の魔物並みに早い。だが相当焦っていたのかシールドの構造が甘い!


「うそ……」


 エフィレから漏れた言葉。


 モブタくんの刃は彼女の腹を裂いて、通り抜ける。かっこいいモブタくんの居合切りみたいになったけど彼の身体も限界だ。


 だが、まともにダメージを追ったことがないエフィレ相手にダメージを負わせたことは快挙だろう。僕も見たことがない。


『嘘だろあのエフィレがダメージを……!』


『あんな一般生徒生徒が初のダメージだなんて!』


 どうやら隣りにいる貴族らしき生徒でも知らないとなると、彼女は学園生活の中では一度もダメージを負ったことがなかったんだろうな。


 しかしまだ傷が浅い。あんなの光属性を扱えるエフィレとっちゃかすり傷。


「わ、私が……傷──」


 だが彼女が身体を再生することはない。衝撃的すぎて忘れているのだろうか。


 しかしこのチャンスを逃すことはできない。モブタくんの最後の力を振り絞って場外に吹き飛ばすのだ。


「これでトドメだ!」


「っ……! 来ないで!」


 物凄い魔力の気配。一応この会場には強力過ぎる結界が張られている。多分大丈夫なはず。


「──高圧縮魔力核砲(ニーアル・ファルガム)


「いやまずいやんけ!」


 エフィレはここら一帯を吹き飛ばすつもりで自滅級の奥義を放ってくる。こいつダメージをトリガーに本気になりすぎだろ!


 古代魔法最強格のとりあえず何でも消し飛ばせる魔法をここで放つらしい。相手の生死を気にしなくなったようだ。


「ぐうっ……」


 エフィレが放った魔法は会場を真っ白に染めるほどの輝きを放ち、凄まじい衝撃的と爆音を放つ。


 エフィレ前方をまっさらな大地に変えるほどの凄まじい威力だ。食らったら消滅だけどモブタくんは地中深くに埋め込んだから多分大丈夫だ。


 問題は周囲の結界が耐えられず一瞬にして破壊されたこと。魔法の攻撃範囲にいた生徒は消滅しただろう。残念に……。


「あ……」


 あれはゼプトとカトラ? どうやら魔法の軌道を2人で頑張って逸らしているみたいだ。闘技場の上へと軌道を変えている。


 お陰で逃げれなかった生徒がなんとか助かってる。2人には後でご褒美をあげないと。


「さてさて……」


 追い詰められたエフィレが詠唱級の魔法を放ったけど、まだまだ魔力に余裕がありそうだ。2度目は流石に打たせるのはまずいから、こっちも手加減無しの攻撃だけど許してね。


「──功勁甲手(コウケイコウシュ)


 隙だらけのエフィレ。だがシールドは相変わらず張るのが早い。全開よりも強力だが僕もそれなりに強力な技を使ってるからないに等しい。


 シールドを薄氷のように割り、彼女の腹部に技を放つ。エフィレの身体はステージを声で場外に吹き飛ぶ。速度が速度なのでまたダメージを与えたけど、もう場外。彼女が魔法を使う意味なんて……。


「っ──!?」


 僕本体の頬を何かが掠めた。ギリギリで避けたが完全に殺意マシマシの攻撃がエフィレから飛んできた。


 悪あがきにしては僕を正確に殺そうとしてたな。


 砂埃が明けると、エフィレは瓦礫に埋もれて血だらけだった。しかしその目は確実に僕の方を見ていた。どうやらバレたみたいだ。知らんぷりしとこ。


「な、なんとモブタ選手、聖人エフィレを破り準決勝に進出! これは快挙です! しかし満身創痍! 次の戦いで影響がでないといいんですが……」


 一般生徒がエフィレを破った事実は変わらない。彼は明日から有名人だろうね。

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