表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
実力ある異世界人を目指して〜憧れの悪役は実力隠してやりたい放題  作者: グレープファンタジーの朝井
7章 阻止任務

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/210

207.マリア

『おい嘘だろ……』


 そんな声を漏らすのはセオルゴスの生徒たち。


 準決勝で聖人同士が最上位争いをすると見られていた本試験。なんと一般生徒であるマリアがルーアンを破り、準決勝に進出してしまった。


 彼女たちの戦いは拮抗状態が続いており、お互いに全力を出せない泥沼な状態から異変は起きた。


 事の発端は十分前に遡る。


「ぁぁぁぁぁぁあああ!」


 お互い必死のぶつかり合いだ。筋力は僅かにマリアが上の状態。しかし技法や魔力はルーアンが勝る。


 ほぼ互角の戦いにルーアンは焦りと苛立ちを覚えていた。


「一般生徒って聞いて安心した私がバカだった……」


 ガレオスにこんな生徒がいたなんて。そしてこの脳裏にちらつく負けという文字。聖人である者が守るべき民に負けてどうする。


「こんな現実から目を逸らしたくなる」


 こちらが恐れば恐れるほど相手が大きく見える。


「力の差はあるのに押し込めない……。やっぱり経験豊富な聖人は厄介ですね」


「わたしもまさかここで苦戦するとは思ってなかったよー。その見た目と雰囲気からセリアちゃんの血族かと思ったけど……ちがう?」


「それはわかりませんね。私は私だけですから!」


 一瞬だけマリアの力が増した。拮抗していた状態も僅かにマリアが優勢となる。ルーアンは前回の戦いで既に多くの魔力を消費している。ここからあと2回勝負することになれば温存はしておきたい。


「魔法を使う余裕なんてない。アエリナちゃんが勝てば遠距離魔法は必須。セリアちゃんが勝てば身体強化や防御魔法の使用は避けられない」


 しかしマリア相手にも身体強化魔法が必須となるレベルだ。更に彼女が強化してきた時、ルーアンはセリアと同じような対策を用意しなければならない。


 マリアもマリアで全体最大身体強化(フルスロットル)の使用はなるべく避けたい。次の戦いには余力を残しておきたいのだ。


「彼女には悪いけど、わたしは私のやり方で勝たなきゃね」


 ルーアンは賭けに出るようだ。


「──聖人の加護」


 ルーアンに光が集まるとたちまちに彼女の魔力は回復する。


「さっきまで疲弊しきってたのに、なにが……。まさか加護の影響!?」


 ほぼ全快と言えるほどの魔力を回復させたルーアン。彼女は出し惜しみをせず、先程の省エネな戦い方を守りつつも、必要な戦略にはより多くの魔力を割くようになった。


「──身体強化、衝撃吸収、魔力解放!」


 これまでの不利な状況を上書きするようなバフの量だ。マリアは剣を合わせるまもなく押し負けると悟っただろう。


「いきなり魔力が回復するなんてあり得ない……」


 弾き飛ばされたマリアにルーアンの魔法が追い打ちをかける。


 喰らいつくようなヘビのように蠢く魔法だ。魔力を大量に消費して自動追尾する厄介な魔法。


「くっ……」


 避けるとさらなる追い打ちに繋がると考えた彼女は足を止め、魔法を跳ね返していく。


「──水撃砲(スイゲキホウ)


 当たってもダメージは無いが、剣の軌道が簡単に逸らされる。


「やばっ……」


 生まれた隙に魔法が直撃。


 マリアは力なくステージの地面に飛ばされた。


「うくっ……立ち上がれない……」


 追い詰められた聖人が奥の手を出してくるとは思っていたものの、まさか魔力を全回復させるとは思わなかったのだ。


「まさか魔力をストックできる加護? いや、それなら総量から魔力の限界が見えるはず。他の人から魔力を借りたとしか思えない……」


 ルーアンがとどめの魔法を用意しているの見える。あれを喰らえば場外か気絶は確実。負けたくない彼女は最後の力を振り絞り、剣を杖代わりにして立ち上がる。


「う……魔力はほとんど残ってない……」


 小規模のシールドしか展開できない。


「だったら地形を活かして逃げ切ってやる」


 マリアが目についたいい隠れ場所はオリジンが浮かばせている台座の後ろ。彼女はそこまで走ってやり過ごす。


「台座の下に隠れた……?」


 ルーアンは用意していた魔法を解除し、即座に貫通魔法へと変える。


「貫通魔法に切り替えてたから時間は稼げたけど……勝機はない」


 魔力も底をつき、あと1分動けるかもわからない。逆転の目があるとすれば……。


「あ……」


 マリアが上を見上げると、彼女は大胆な発想が思い浮かんだ。


「オリジン……」


 ちらりと自身の剣を見て、ルーアンの様子を確認した。


「試験官になんて言われるかわかんないけど、ステージのものにあるものは利用していいって話だからね!」


 台座から飛び出し、マリアはオリジン目掛けて剣を突き刺した。


 弾かれるとも思ったが、意外にも球体に剣がめり込む。それどころかガリっと氷を砕くような感覚があった。


 オリジンはマリアが突き刺したところを起点にビビが入る。


「っ……!?」


 まるでオリジンは生きているかのようにエネルギーを血のように放出する。溢れた破片はオリジンからは離れようとせず、その場に留まる。


 しかしそれも時間の問題だった。オリジンは球体を膨張させ、むせ返るような濃ゆい魔力の衝撃波を短い間隔で放出させていた。


「魔法が……!」


 ルーアンの魔力が乱れる。


 陰からマリアが飛び出しルーアンに急接近する。


「……!? し、シールド……」


 魔力が乱れていてうまく展開できない。


「どうして!? しまっ……」


 直ぐ目の前まで迫っていたマリアに反応できずに、彼女は崩れやすい姿勢のまま剣を受け止めてしまう。


「がぁぁぁぁぁああああ!」


 魔力なしのマリア自身の力。絶対に勝つという火事場の馬鹿力でルーアンを剣ごと吹き飛ばす。


 空に大きく投げ出された彼女はオリジンの衝撃波でさらに加速し、ステージを軽く越え、場外へ。


 ステージに着地できれば試験続行だったが、乱れた魔力では飛行もエネルギーの向きを変えることもできない。


 ルーアンは無力なまま場外へ着弾した。


 会場が静まり返るのと同時にオリジンも自身を制御し始めたのか沈黙した。


『おい嘘だろ……』


『ルーアン様が負けた……?』


 セオルゴスの生徒たちは吹き飛ばされたルーアンの方へ視線を向ける。冗談だと信じたかったが、砂埃が明けるとそこには場外に足を着けたルーアンの姿があった。


 飛ばされた本人ですらありえないという顔をしている。オリジンを利用したマリアへは無効試合だと叫ぶ生徒もいた。 


「おやおやおや〜! なんとマリア選手、聖人ルーアンをオリジンを利用して打ち破った〜! これは試験のルール上認められているので、騒いでいる皆さんはきちんとルールブックを読みましょう!」


 ファリファはまるで想定していたかのように振る舞う。試験官たちも少し驚いている様子だがとめる気配がない。


「聖人に対抗するためにオリジンを利用した。けど、ステージにあるものは利用可能……。試験官は何をもってオリジンをステージの上に配置したの?」


 マリアは単純な疑問を浮かべるがその真相はその場ではわからない。


『キュアァァァァァァァァ……』


 オリジンからは奇妙な音が聞こえる。


「これでよかったの……?」


 勝ちは勝ち。しかしマリアは完全な自身の力で勝ったとは到底思えなかっただろう。


 これで聖人は2人脱落。次の試合までは2時間ある。準決勝に向けて直ぐに切り替えることしかマリアにはできなかった。


 しかし勝ちは勝ち。ルーアンはマリアに負けたのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ