202.すっごい強い技!
1日目はくだらない感じで終わった。2日目がどうなるかは見物だ。1人3戦でまだまだ会場は4つで見せ場はないけど、モブタくんには順調に勝ってもらいたい。
僕が彼の試合を見ながら操るだけの作業になるけど。
「勝者、ガレオスのマリア!」
マリアはマリアで順調に勝ち進んでいるみたいだ。前より腕を上げているのか剣に乗ってる気合が凄まじかった。
「続いてはガレオスのルイド対、セオルゴスのモブタ」
ルイド……噂を聞くに1戦目は一撃で終わらせたみたいだ。相当気が立っているのか、焦っているのかはわからないが、ガレオスは今のところ2位。1位には届く距離にいる。
「あのレインの腑抜けを倒した相手……。できれば私の手でやつに活を入れてやりたかったところだが、同じ学園じゃないことで手加減する必要もなくなったのは大きい」
どうやら僕は彼にボコボコにされる予定だったらしい。だがごめんよルイドくん。多分ここは彼が勝つテンプレなんだろうけど、僕にはモブタくんを勝たせる義務がある。通してもらうよ。
「動きは最小限に一撃で仕留めさせてもらう!」
豪脚、最小限とはなんだろうとでも言うような速度だ。もちろん一般ピーポーなモブタくんには彼の姿は捕らえられていない。何も気づいてない様子で棒立ちだ。
「なに!?」
ルイドくんの攻撃による衝撃波。モブタくんの身体では受け止めきれないから魔力で強化させてもらったよ。
高速の車が壁にぶつかったみたいな衝撃がルイドくんを今頃襲っているはずだ。
「ふっ……その程度か。ガレオスの貴族。俺は今最高に調子がいい。その程度の攻撃、認識するまでもない」
ガチで認識できなかった上にちょっと焦ってるのやめろ。
「まさか私の攻撃を読んでいたということか? ありえん、先程の視線は私を誘うためかっ……」
「ふふふ、俺の前には跡形も残らん。喰らえ! ──超強い剣」
クソダサい技名を叫んで攻撃するのも止めてくれ。完全に小学生の厨二病じゃねーか。
だがこれもリクエストに応えて強めの攻撃を出してあげよう。
「くっ……ただ振り下ろしただけの剣でこんなにもっ……」
闘技場を割くような強い一撃だ。斬撃が彼を更に遠くへ押しやる。モブタくんも満足のようだ。
「どうだ俺の超強い剣は」
それやめてね。
「まさか私と張り合える学生がセオルゴスにもいたとは……。通りでやつが負けるわけだ」
「俺は優勝を取りに行くぜ。今まで実力を隠してたのは……まあ、お前たちを出し抜くためだ。やはり最強の俺にはあの聖人も手が出ないだろう」
君は決勝で無様に負ける予定だから聖人には勝てないかも。あ、1人だけ当たるのか。いやーエフィレに勝ったら凄いと思うけどね。
「なに? セリア様にも同じ事が言えるのか?」
「実力ってもんは必要なときに出すものさ。聖人なんてもの、俺の力の前にはないにも等しい」
人選ミスったかなあ。こんな痛いやつを選んだ覚えはないぞ。なんか心がズキズキしてくるし。
「一線超えたようだなセオルゴスの学生。私たちの聖人はお前のような学生に負ける方ではないのだ!」
剣がかち合う。相変わらずモブタくんは反応できてないが僕が防御して見せる。身体が勝手に動く事を彼が違和感だと覚えてないのはいいことだ。
「これも防がれた!? まさか本当に最強の実力者なのかっ」
「凡人がいくら考えようとも、俺は最強なのさ」
なんとも言えないセリフを残してフィニッシュにするようだ。リクエストに答えて隙だらけの彼の腹に掌底を叩き込んで場外へ吹き飛ばす。
ガレオスには悪いけど今はモブタくんの無双劇に付き合ってくれ。
「がぁぁあ……!?」
「な……ガレオスのルイドは場外。勝者、セオルゴスのモブタ!」
以外な結末にルイドファンたちは唖然としていて、周りにいた貴族たちも驚いているようだ。
まあ普通ならルイドが勝ってるもんね。真正面から何度も何度も打ち合っていると負ける確率は上がってたし場外勝利が一番いいかな。
その後の戦闘には何の見栄えもないちょっと強めの人達と戦って2日目に幕を下ろした。
────
「どうしたんですか? 早く立ってください」
呆れた表情で生徒を見下ろすのはセリアだ。ザバルタの貴族を見下ろし、まるでおもちゃのように扱う。
「ガレオスの聖人……体調不良だと聞いてたが、経験のある者でもこんなに差があるんだな」
「面白くもない言葉を並べないでください。早く立ち上がってほしいんです。それができないなら粘り強か立ち上がるのは止めて、降参してください」
「降参したら姫に怒られるもので。あんたの体力を極限まで削れとの命令だ。ごほっ、ごほっ……」
「そうですか。レフェリーの注意がないのでそのまま剣を振り下ろしますが……いいですね?」
貴族はセリアを睨みつけるが身体が動かない。いや、既に脚が折れており立ち上がれないのだ。
「っ……。レイン、また邪魔するの?」
セリアは振り返って誰かと話す。
「まだ彼には戦う意志がある。そうやって甘くすると取り返しのつかないことになる。脅威は全部排除しなきゃだよ?」
振り下ろす剣が空中で止まる。
「レイン! いい加減にして、私を束縛するのはいいけど、今はレインと自分の身を守るためにやってるんだよ。わかるでしょ」
「誰と話してるんだ。まさか体調不良ってのはこの事を言ってるのか? 随分とおかしいことになってるな」
セリアは誰かと言い合いをしているようだ。
「好きにすればって? どうしてそんな風に私と距離を置いちゃうの。分かってよ。レインのためなんだから。いかないで……まって!」
消え入るような声で手を伸ばす。その先には誰もいない。
その隙に回復魔法を全力で回していた彼はようやく立ち上がれるまでに回復した。
「変な行動に救われたぜ。これでもう少しだけ体力を削ることができるな──」
立ち上がった彼を見てセリアは物凄い眼力とプレッシャーを与える。
「あなたのせいでレインが怒ってしまいました。立ち上がるのなら言ってください。そのまま脳天まで割ってあげたのに……」
「死ぬまで俺は負けたくないんでな。1人の聖人相手にここまで粘って、体力まで削れてたら実質俺の勝ちだぜ。もう少しだけ聖人様には付き合ってもらおうかな!」
「ああ、そうですか」
「えっ──」
彼の力強く握った剣は程よい大きさに砕ける。体中が遅れてミシミシと崩れる音がする。
見えなかった。彼女の剣を見る前に何十発の太刀を一瞬で受けたのだ。彼は前面から血を吹き出しながら力なく吹き飛んでいった。
ゴミのように場外に吹き飛んだ彼は粉々で動く気配もない。慌てた医療チームが急いで駆け寄るが、状態が酷いようだ。
そんな他人の様子も気にすることなく彼女は振り返り、
「レイン!」
そう叫びながら何かを追いかけるように走り去っていってしまった。
「あの下郎が! 引き際を間違えるなとあれほど言ったはずだ」
アエリナは慌てた様子で彼の様子を見る。彼女は彼の様子を見て少しだけ怖気づいてしまう。
「よ、ようやく本気になったのか。だがなぜ今。本気のぶつかり合いを楽しみにしておったが、あれはまるで殺意の塊」
あれが実剣であれば間違いなく彼は骨すらもミンチの地獄絵図。
「何があのセリアを焚き付ける……」
「セリア様があの時立ち去る瞬間にレインと叫んでおりました」
「何が関係ある?」
「私にも理解できないのですが、そのレインという人物がセリア様の狂気の原因だとすれば、彼を脅しの道具に使うのはどうでしょうか?」
「何を考えておる。余に卑怯な手は似合わん。それにあの癇癪度合いだ。奪ったところで更に厄介な相手になるであろうな。セリアは余の全てを持って攻略してみせる。余計なことはするでない」
鋭い目つき。
彼女もセリアと同じ聖人という立場。簡単に突破される人ではないというわけだ。
「前回は破ったが、今回がどうなるかはわからん。詠唱を使ってしまうがやむなしだ。単騎決着で行く」
アエリナはそう言うと重症の彼の元へ飛んでいった。




