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実力ある異世界人を目指して〜憧れの悪役は実力隠してやりたい放題  作者: グレープファンタジーの朝井
7章 阻止任務

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190/210

190.うん……頑張れ

 ──大型試験前夜。


 試験のための会場設営は各学園から数十人駆り出されているようだ。本試験会場はザバルタ学園で行われることになっており、他の学園は見慣れない学園に少しわくわくしている様子だった。


「流石はザバルタ学園。ガレオスよりも設備が綺麗な気がするね……」


 レインはそう漏らしつつも会場設営のために働いている。


 学園によって優越はないが、一番成績の良い生徒たちが集まっている学園であるため、その意思が学園全体に表れているようだ。


「ものを大切にする……ザバルタ学園ではどうやらそれがちゃんと出来ているみたいですね」


 バルトはニコニコと愛想を振りまきながら作業している。他の学園の先生からかなり好かれているようでバルトには柔らかい。


「ガレオスはあれが聖人なら厳しいか……」


 セリアのことを頭に浮かべながら会場設営を手伝う。


「セリア様は学園のみんなに慕われているじゃないですか」


 なんであれで慕われるのだろうと思いつつもレインは静かに頷いた。


 そこへ近づく一人の生徒の姿が。凛とした表情から何か怒られるのではないかと構えるバルトであったが、離れた位置で止まり2人を見下ろした。


「ウォーチス学園のバルトですね。私はザバルタ学園のムートと申します」


「え、いや……初対面じゃないんですけど……」


 気まずい空気が流れるとムートは何事もなかったかのようについてくるように指示をする。


「僕はまだ仕事が残っていますよ?」


「……そちらの方は?」


 見て分かる通り2人とも作業中だが、ムートはお構い無しのようだ。


「ガレオス学園のレインくんです。彼も僕と作業してるので人手が欲しいのなら別の場所からお願いしたいです」


「用があるのはあなたたちなのです。付いてきてください」


 無表情かつ、視線がどこを向いているのかわからない。ムートは何を考えているのだろうと、バルトは考える。


「ここを敵地だと理解しているからこそ警戒しているんです。理由を教えてくれないのなら僕たちはついていけないですね」


 その言葉を聞くとムートは少し驚いた表情を見せ、直ぐに真顔になる。


「試験官らが呼んでいます。明日に向けての装置の稼働実験かと思われます。この機を逃せば試験に不利になるかと……」


「なんでそれを早く言わないんですか!」


 バルトは慌ててレインの手を引いて装置のあるであろう試験会場の奥へと駆けていった。


「うわあっ、なんかさっきの人ついてきてるよ……」


 レインが後ろを振り返り素早く走るムートの姿を捉えた。無表情からは読み取れない謎の雰囲気に、彼は狩りを錯覚させられた。


「あの人はいつもそうなんです。自分の意志で行動してるのかしてないのかわからない人で……。僕たちを追いかけてるのはちゃんと目的の場所に着けるか監視してるんだと思います」


「忍びかよ……」


 試験会場に淡い魔力の粒が浮かび上がる。


「そう言えばレインくんは今回の試験で使う装置のことを御存知ですか?」


「いや僕は特に知らないかな?」


「知ってて損はないと思いますよ。魔力であらゆる立体を作れるすぐれものなんですから。仕組みを理解できれば今回の試験を簡単に攻略できるかもしれないんです」


「試験内容に地形生成の事書かれていたし、魔力で人も再現できるって話だよね?」


「今回の試験での前菜はまさにそれらを倒すのが目的です。敵の生成パターンはランダムですが、能力や加護と言った力もランダムに組み合わさるので、稀に聖騎士団団長クラスの強さを持つ敵も現れますよ」


 装置に秘められた力は凄まじい。しかし装置はあくまでも力の再現であり、生成した敵がその加護や能力を使っているわけではないという。


「面白い装置だね。試験前に工作しておいて、弱い敵を作ることも可能なのな?」


「それは難しいと思いますよ。たたでさえ……あ、ちょうど見えてきましたよ」


 バルトの言葉を続けるかのようにものすごい数の警備が配置されており、奥には試験官らが装置をいじっているようだった。


 ここから見える装置は水晶のような大きな球体に、煌めく紫色の光を放っていた。中は透き通っていないのか何が入っているのかは不明だ。


「安全に到着したようですね」


 ムートが2人を追い越して前に進む。


「ムートさん。僕たちはここで何をすればいいんですか?」


「生体認証です。学生証がありますよね? それを試験官らに渡してきてください。試験的に動作させます。もしここで渡さなければ試験時に装置がうまく作動しない可能性があるので」


 4学園の生徒に反応するように


「だからなんで大事なことを先に言わないんですか!」


 バルトたちは学生証を試験官に提示したあと、しばらく装置を観察していた。


「理論上は神でも生み出せる装置です。しかし、それは対戦相手が神と同格の強さでないと呼び出せないと言うことです」


「だから理論上可能というわけですね」


「この敷地のみでしか自由には動けないので万が一暴走したとしても被害は少ないというのが強みですね」


「なるほど……」


 レインはなにかに使えるかも、という表情で装置を見つめる。だが学生証に登録されている情報を頼りにしているようで制御を外すことはできなさそうだ。


「これで対等な試験ができるという仕組みです。どれだけその人に自信がなくても程よい相手を召喚してくれるのがこの装置のいいところだと聞いています。ですよね、ムートさん」


「……稀に周囲の魔力に影響されて想定外の動きを見せることがあります。その時はまあ……運がなかったということですね」


 なにか含みのある発言だったが彼女は直ぐに訂正する。


「ご安心を。不正しようとしてもあの装置は試験中ステージ中央に設置されるので観客席からの魔力の影響は受けません。装置から近い試験者の影響を受けてくれますよ。それにそのための学生証なんですから」


 装置が起動した。紫色だった装置は青白く光り始め、魔力で動物を生成した。


「うむ、4匹……成功だな」


 そんな声が装置の向こうから聞こえてくる。


「どうやら装置は安全に稼働しているみたいです。用は済んだので元の場所に戻ってもらっても結構ですよ」


 と、彼女は用が済んだとわかるとさっさと出ていくように指示をした。


「用済みらしいですね僕たち」


「まあ早く会場設営終わらせて帰りたいけどね」


 数歩、歩いたところでムートはバルトを呼び止める。


「バルト、試験では彼女は動きますか?」


 彼女とはエフィレのことだろう。


「お答えはしませんよ。ただ、今回の試験、どの学園がトップに入ってもおかしくないような戦いができそうです」


 その言葉を聞いたムートは薄っすらと笑う。


「そうですか。それならこちらもアタマには本気でやるようにお伝えしておきます」


 すると彼女は霧のように姿を消した。


「僕には何がなんだかわかんなかったよ」


「それでいいんですよ。みんな我先にと高い位につきたいんです。自分のペースが人生の中で最も重要だということはエフィレに何度も教わりましたから」


 レインはセリアを思い浮かべて苦笑いをする。


「確かに……」


「さて、ザバルタ学園には宣戦布告のようなものをしてしまいましたけど、ガレオス学園も本気でぶつかってきてくださいね」


「いや、僕はそんなに強くないから期待に添えるかはわかんないよ?」


 バルトは首を横に振る。


「違うんです。今までのウォーチスじゃないことをみんなに知らしめるのです」


「気合入ってるね。僕なんて不安でしょうがないのに」


「きっと大丈夫ですよ。ガレオスにはセリア様がついているじゃないですか」


 あー、セリアね。という反応でレインは適当に返事をした。


「今までのような手加減はしないでくださいよ? 僕たちはやれるんだってところ見せてあげますから」


「うん……がんばれ」


 彼は作った笑顔で不器用に笑った。

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