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123.傍迷惑な弟子

「大将軍は何をしにここへ?」

「何だ、やっぱり覚えてないんだな」

「久々に完全に寝入ってるお嬢を抱っこできたから、役得だったけどな」


 双子は私が1歳からの付き合いです。

ヨチヨチ歩きで捕獲しました。

以来、彼らはずっと私を子守しているので、どこか感慨深い様子なのも仕方ありませんね。


 そうして私の記憶がない間に起きた出来事を聞き、すぐさま大僧正の元へ行こうと先に知らせを送ります。

了の返事を貰ってから部屋を出ました。


「ガウニャ〜ゴ」

 __シューシューシュー。


 暫し歩けば、背に小蛇ちゃんを乗せた子猫ちゃんがすり寄ってきます。

今まで何処に行っていたのでしょう?

2体は仲良くなったのか、騎乗する方もさせる方も馴染んでますね。


「共に行きますか?」


 そう問えば、当然とばかりについて来ます。


「どうされた、貴妃。

体調はもうよろしいのか?」


 快く客間に招き入れた大僧正の首元には、編み直した組紐で作った首飾り。

服の下に隠れた部分は、紫紺と濃桃が混ざり合った珍しい色の杉石です。


 石に宿る魔力は、()(わたくし)の魔力を補填してあります。

私が夜の散歩から戻った翌日に差し上げました。


 当初は凍てつく空気を纏っていた大僧正ですが、それを見せ、石に私の魔力を馴染ませた途端、態度が氷解し、感極まったように泣かれてしまいました。


 どうやらこの吉香(ジシャン)寺の法印大僧正を継ぐ者には、初代から脈々と伝えられた話があったそうで、ひとしきり泣かれた後に教えてくれました。


「ええ、もう熱も下がりました。

明日にはここを立とうと思います。

それで1つお願いがあるのです」

「拙僧でかなえられるのならば、如何様にも」


 人払いして私達だけ、いえ、子猫ちゃんと小蛇ちゃんはいますが、お願いしてみれば、1つ返事で快く頷く大僧正。


「内容くらい聞いてからにすべきでは?」


 今後お爺ちゃん詐欺とか起きたらと、卓に座って顔を突き合わせる大僧正を心配してしまいます。

いくらなんでも、態度が変わり過ぎではないでしょうか。


「良いのです。

拙僧達歴代の法印大僧正は、初代が母と慕い、この寺のどこかに眠るだろう、天斌嵐仙ティエンビンランシェン高祖が生涯愛した吉野(ジイェ)様が再び現れるのをお待ちする為に在ったのです。

願わくば、高祖とその御体を守っているだろう霊獣が吉野(ジイェ)様の手で葬られるようにと祈っておりました」


 そう言うと私の膝に乗った子猫ちゃんの背から、私の右肩に移動した小蛇ちゃんを視て目を細めます。


 __シューシューシュー。


 大僧正は子猫ちゃんが視えていませんが、小蛇ちゃんははっきりと視えているそうです。

小蛇ちゃんも何やら嬉しそうですね。


 噴気音は本来威嚇の際に出るものですが、最近はそれで対話を試みているように感じます。

小蛇ちゃんもまた妖の類のようですし、まあそんな事もあるのでしょう。


「その心が受け継げないならば、この地位に就く事は先代に許されなかったでしょう。

拙僧の代でそれが叶った事こそが、何より嬉しいのです。

それに貴妃にはこのように貴重な遺産を形見分けとして頂きました。

拙僧にはそれだけで、貴妃の願いを力の限り叶える理由になりますからな」


 そう、当初はその石を受け取る事を拒否されたのですが、形見分けだと言うと受け取ってもらえました。


 初代法印大僧正の遺した手記を見て、彼が何者であったのかはすぐに察しました。


 前世で爺として娼館を切り盛りし始めた頃に拾った元孤児です。

その後、陛下を含めて幾人かに身バレしそうになったので、トンズラしたのですが、その際に軌道に乗って繁盛していた娼館はその子に押しつけました。


 ついて行くと散々駄々をこねられたのですが、まだ若いとはいえ、彼ももういい大人でしたからね。

ちょっと気の毒に思いつつ、放って旅に出たのです。

一応定期連絡はしていたのですが。


 それから10年程は、立ち上げていた商会を大きくしたりと、商人人生を堪能した後、事故によって生を終えたのです。


 私からすれば、前世とはいえ縁あって色々と生きる術を教えた愛弟子の、傍迷惑なお願いとやらを代々聞き続けた奇特な末裔とも呼べる方です。


 陛下が弟子を何故寺の僧侶に据えようとしたのかわかりません。


 しかし弟子も当初は半ば強制ではあっても、あの子なら逃げられた。

なのに逃げず、最後はかなり前のめりに寺の僧侶となる話を了承した上に、遺言で後の世代を縛ったのですから、高祖共々傍迷惑ですよ。

いつもご覧いただきありがとうございます。

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さてさて、本章もあと1話で終わりです。

ここまで毎日更新できたのも、皆様のお陰です。

本当にありがとうございますm(_ _)m

次章ではまたいくらか展開を動かしていこうと考えていますが、少し構想を練りたいのでお時間下さい。


下の2つはこれからも毎日更新していくので、お待ちいただく間、よろしければご覧下さい。


【秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話】

https://ncode.syosetu.com/n7383ha/


【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す〜だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】

https://ncode.syosetu.com/n0481hq/

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