122.魔力の循環不全
「……体が……軽い?」
ここ数日で1番の心地良い朝を迎え、目を開けてから、それに気づいて首を捻ってしまいます。
「滴雫様、おはようございます」
体を起こして自らの体に流れる魔力の流れを感じていれば、小雪が気配を察したのか入ってきました。
「おはよう。
昨日の夜、何かしましたか?」
「いえ、私も鬼達も何も……」
「お嬢!
起きたか!」
「昨日は面白かったな!」
「「左鬼」」
「何だよ、どうせ話すんだからいいだろ」
どうやら昨夜、何かあったようです。
何くわぬ顔でやり過ごそうとした小雪と右鬼が左鬼を諌めれば、彼は些か不満そうな顔をしてしまいました。
「そうですよ。
昨日までと違って体が軽すぎる時点で、何かあったのだとわかってしまったのです。
どのみち誤魔化せません。
昨夜の記憶が殆どないのですが、私はまた徘徊してしまいましたか?
しかしそれなら何故、私の体はこのようにスッキリしているのでしょう?」
自分で思っていた以上に、何かを考えている時があります。
体がまだ子供だからかもしれません。
高熱で意識が朦朧としている時は、無意識にそれを解消しようと徘徊してしまうようです。
それを止められてしまうと、徘徊が長引いて体を弱らせてしまいます。
なので基本的に私の気が済むか、気絶するかしてしまうまで、近くで見守るようになりました。
子守りさせる者達には申し訳なく思いますが。
そしてそんな時は、そもそもが興味本位に何かに手を出し、魔力を使い過ぎている場合が多い。
元々この体は魔力の循環が上手くいかず、10にも満たない幼少の頃は、しょっちゅう高熱を出しておりました。
あの頃は両親が私の体に魔力を流し、調整してくれていたものです。
前世の私もそのような体質でした。
ただしあの生では、私自身が自力で体内の魔力を感じ取り、前世の知識を使って要を得ないながらも、自力で循環させていたのですが。
前世の気功を扱うご贔屓さんには当時心から感謝したものです。
気を巡らす云々の手ほどきが、世界が変わって功を奏しましたから。
魔力の循環不全はとても苦しいです。
それでも魔力が極端に多いなら、無意識に循環の滞りを無理矢理解消させるらしく、命を落とすまではいきません。
当時の私のような魔力の少ない平民、特に魔力の扱いをよく知らない子供は、そうとは知らないまま、病だと思われているうちに衰弱して亡くなります。
そしていくらかは遺伝もあるのでしょう。
そうした魔力の循環不全が、姪や甥に現れたのです。
私は外から自身の魔力を流し、足りない魔力を補いつつ、それを呼び水のようにしながら循環させる方法を見出し、あの子達に施しました。
何年もやっていれば、体は少しずつ循環を学習し、20歳くらいには体も覚えきるようになります。
それに自己調整もできるようになります。
もちろん手ほどきしたのは私。
此度の私のように体内の魔力を不足させない限り、誰かの手を借りなくても生活に支障をきたさなくなります。
ただ、あまりこの方法は知られていません。
誰でも施せる方法はなく、そもそもが他人の魔力に自らの魔力を反発されないよう纏わせるのも難しいのです。
親子ならまだ幾らか魔力の親和力があるので、魔法を常から常用する者なら、施せる可能性は高くなります。
それでも魔力操作がある程度できる事が必須。
しかし全くの他人ともなると、そうした事を常からしている私のように、その道に長けた者でないとできません。
それに私の死後、後に三国統一となる戦争が起こり、その方法は完全に廃れました。
「ああ。
いつも通り成り行きを見守ってたら、大将軍が出てきたんだ」
「あいつ強いのな!
一戦交えてみたかった!」
右に続き、左の鬼は興奮しています。
この双子達は元凄腕暗殺者だけあって、かなり強いです。
そして強い者と剣を、技を交えるのが好きという、些か困ったちゃん。
特に左の方がその大将軍に対峙していたのか、未だに幾らか興奮しているようですね。
もちろん右の鬼もその光景を思い出しているのでしょう。
どこか楽しげで、そんな2人を小雪は冷めた目で、黙して見つめています。
小雪は私の徘徊中、この部屋で待機していたのかもしれません。
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さてさて、本章もあと2話で終わりです。
ここまで毎日更新できたのも、皆様のお陰です。
本当にありがとうございますm(_ _)m
次章ではまたいくらか展開を動かしていこうと考えていますが、少し構想を練りたいのでお時間下さい。
下の2つはこれからも毎日更新していくので、お待ちいただく間、よろしければご覧下さい。
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